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その1 新食研と町内会

 最期まで口から食べられない人は多くいます。高齢な方が誤嚥性肺炎で入院すると「禁飲食」(口から食べたり飲んだりしてはいけない)という指示が出ます。ただでさえ体力のない方がそのような指示を受けてしまうと食べる能力はさらに低下し、食べ物を口にしてもむせて食べられなくなることが頻発します。そして医者に「もう食べられません。食べてはいけません」と言われて胃ろう(胃に穴をあけて直接栄養を入れる)などを作って退院をしてきます。本人も家族も口から食べたい、食べさせたいと思っていてもそれは叶わずに亡くなります。

 そんな中、2009年7月「新宿食支援研究会(新食研)」を立ち上げました。モットーは「最期まで口から食べられる街、新宿」。胃ろうがあったとしても能力ある限り最期まで食べていただきたいと思う医療、介護専門職集団です。この10年間でメンバーも増え、20職種以上160名近い構成になっています。

 現在、このような活動は全国で行われていますが、その草分けとして、さらには全国のリーディングチームとしても注目を浴びるようになっています。

 しかし、一方で大きな欠点も持っていました。160名のメンバーで新宿区民は数名です。これは都会の特徴ですが、新宿の医療、介護は他地域から来てくださる方で支えられているのです。それぞれのメンバーは各職種のプロフェッショナルとして新宿と関わってはいますが、コミュニティとして関わっているわけではないのです。

 もう1つの側面があります。口から食べられなくなる方、食べてはいけないと言われている方には大きく2つのタイプがあります。1つは、脳卒中などの病気で食べられなくなる方、もう1つは廃用(はいよう)で食べられなくなる方です。廃用とは「動かしていないから動かなくなる」ということです。高齢になり、活動量が減り、食欲がなくなり、食べなくなって栄養状態が悪化してしまう方がいます。病気は医療職でしか対応できないかもしれませんが、廃用の予防はあくまでもコミュニティです。地域のサロン活動であったり、カフェであったり。

 そうなのです。地域食支援で一番重要なのが「廃用予防」なのです。私たち新食研は専門職チームですから、病気になった方のリハビリなどは得意としていますが、廃用予防の観点からはアプローチできていないのです。

 そこで考えたのが「タベマチ祭り」(タベマチ=最期まで口から食べられる街づくり)でした。2019年3月、百人町3丁目町会、4丁目連絡会と新食研が共催する形で開催しました。しかし、イベントはイベントであり、当日は盛り上がるものの、その後、大きな核融合が起こるというものでもありません。まだまだ新食研が地域コミュニティの中に入り、予防から早期発見、早期対応できるという流れにはなっていません。

 2020年3月、第2回のタベマチ祭りを準備してきました。今回の目標は「新食研」を地域住民に知ってもらうこと。何をしてくれる人なの?食支援って何?何を見つければいいの?そんなことを楽しいイベントの中で少し住民の方たちに知ってもらえればと企画していました。

…そしてコロナ騒動で中止になってしまいました。

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