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新しい痩せ薬「アライ」とは?

こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。
皆さんアンテナすごいですね!大正製薬さんが4月8日に発売する、日本初の「内臓脂肪減少薬」のAlli(アライ)についてどう思いますか?とのこと。


【アライは何が凄いのか】

このお薬、なにが珍しいかと言うと、薄毛対策用の発毛剤「リアップ」と同じ様に、医療用医薬品としての利用実績の無いままに市販薬として販売される、「ダイレクトOTC(Over The  Counterの略で薬局の棚越しに買える一般用医薬品や要指導医薬品の意味)」と言うタイプであること。
医薬品と同じレベルの臨床試験で結果を出した上で、市販薬として販売されるので、効果は科学的に確認されています!と言うことになります。

そのせいもあって、2008年に同社が導入契約を締結してから、2011‐2017年の約6年間で臨床データを収集。2019年にダイレクトOTC医薬品として厚労省に承認申請し、約4年間の承認審査が行われ、2023年に承認取得、2024年4月に発売予定となったと言う、16年も市販までにかかっています。
世界では「アライ」は100以上の臨床試験が実施されていましたが、大正製薬さんは、日本人を対象とした国内での臨床試験を6試験実施され、エビデンスを確立したと自信を持たれている様です。

【アライの作用機序とは】

では内臓脂肪を減らす効果とは、一体どの様な機序で起こるのでしょうか?
アライの有効成分であるオルリスタットは、1997年8月にアルゼンチンで初めて120mgカプセルが医療用医薬品として承認され、その後、欧州や米国を中心に100ヵ国以上で承認されてきた実績を持ち、医療用医薬品の半分の60mgカプセルが、一般用医薬品として2007年2月に米国で初めて承認され、その後も欧州を中心に70ヵ国以上で承認されている、と言う実績がある物です。

食事に含まれる脂肪は、膵臓から分泌されるリパーゼ(脂肪分解酵素)によって分解、小腸から吸収され、リンパ管に入って静脈と合流し、全身を巡ります。オルリスタットは、リパーゼを阻害することで、食事由来脂肪の吸収を約25%抑制し、便中排泄させることが期待出来る、となっています。

そして60mg(1カプセル)を1日3回1年間内服し続けることで、内臓脂肪面積は平均21.52%、腹囲は平均4.82%の減少が確認されたと言うことです。
内服対象は、男性で腹囲85cm以上、女性で腹囲90cm以上となっていますが、1年間飲み続けることで、85cm→80cm、90→85cm、の様な腹囲の変化が期待できる、と言うことですね。

ただ、食事に含まれる脂肪の一部を便中に排泄させる作用機序からも想像出来る様に、副作用として脂肪性の下痢、放屁とともに脂肪便が漏れる、などが40.9%で起こったとのこと。
加えて、飲み始める3ヵ月前から食事や運動などの生活習慣改善に取り組み、初回購入前の1ヵ月間からは生活習慣の記録も求められると言うことです。そして飲んでいる間は、食事と運動の改善を継続することが求められます。

脂肪性下痢への対策としては、低脂肪食にすることが勧められています。ですから自然に低脂肪食を食べる様になり、1年続けることで腹囲が5cmほど減る効果があった、と言うことなんですね。

【そもそも内臓脂肪が溜まる原因とは?】

食事から吸収したエネルギーが消費するエネルギーより多いと、余分なエネルギーは中性脂肪として、皮下や内臓周囲に蓄えられます。特に注意が必要なのが糖質なんですね。過剰に摂取すると体脂肪として体に蓄えられてしまいます。そして糖質と脂質をダブルで摂ると、それが更に加速してしまいます。特に果糖を多く摂っていると、肝臓周囲に脂肪が溜まる脂肪肝になってしまいます。

ですから、まず体重を落とすために大切なのは、食事に含まれる糖質の割合を意識的に減らす必要があります。加えて蛋白質源(肉、魚、卵)、植物(野菜や果物など)をしっかり増やすことです。
日々の飲み物も加糖された清涼飲料水(エナジードリンクやコーヒ飲料、乳酸菌飲料、乳清飲料など)は完全に断った方が良いでしょう。
飲み物は無糖のお茶やコーヒー、水に変えることです。間食も甘い物では無く、茹で卵、スルメ、煮干し、無塩ミックスナッツ、などに切り替えましょう。

実はしっかり糖質を減らせていれば、脂質は意識的に制限しなくても体重に大きな影響はありません。極端に低糖質かつ高脂肪のケトン食で痩せている人達もいるのを見れば、お分かり頂けるでしょう。もちろん酸化してない良質な脂質にした方が良いですけどね。逆に言えば、アライを飲んでいても糖質をガッツリ食べたり飲んだりしていたら、あまり意味がありません。

歴史的にも1970年代に動物性脂肪が万病のもと、としてバターより植物油に水素添加したマーガリンが、ラードよりも植物油を加工したショートニングの方が健康的、とされ、更に牛乳なども低脂肪や無脂肪が健康的として大々的に普及が進みましたが、その後は皆さんご存知の通り、肥満や生活習慣病は右肩上がりでした。

本当に悪いのは脂質では無く、糖類やデンプン質の過剰摂取が原因だったのでは、と言うことで、近年では、脂質は悪者では無いと言う論調もありますが、食べすぎていれば糖質だろうが脂質だろうが、体に悪いです。ただ、高脂肪低糖質食は、腹持ちが良く血糖変動が少ないので、空腹感もマイルドなんですよね。脂質は細胞膜を構成する大事な成分ですので、脂質をしっかり摂った方が、肌が綺麗になったり、性的により魅力的になったり、と言うことも起こります。

糖質制限やケトン食が合わない人は無理にケトン食にする必要はありませんが、地中海食やカーニヴォ食などの別の食事法で、食べ過ぎない様に工夫する必要があります。

ここでもうひとつ大切なのが、「運動で体重は減らせない」と言う事実です。上記の様な食事に切り替えて早い人だと2週間、1ヶ月もすればなんとなく体調が変わってくることに気が付きます。
運動はある程度体重が落ちてからの方が、腰や膝などを傷めるリスクが減るので良いです。それまでは関節可動域が狭くならない様な体操程度の運動で十分です。上記の様な食事をしていれば、3ヶ月もすればかなり成果が出ているはずです。

【何を選ぶかはあなた次第です】

少々、大正製薬さんにケンカを売る様な内容になってしまいましたが、結局のところ、食習慣、特に糖質過多かつ食べ過ぎなところを、何らかの形で改善出来れば、1年も経てば内臓脂肪は減らせます。
食事管理されしっかりすれば、脂肪性の下痢に苦しんだり、物足りない低脂肪食でストレスフルにならなくても良いんです。

ただ、日本初の内臓脂肪減少薬、と言うことで試してみたい方はぜひチャレンジしてみて下さい。4月発売ではありますが、3ヶ月は食習慣の改善が必要なので6月頃からの利用開始になるでしょう。そこから1年間生活習慣を改善しながら飲み続けることになります。

公式情報では、18カプセル(6日分)で2530円、90カプセル(30日分)で8800円とのことです。効果を出したい人は90カプセルを買うのでしょうが、これで1年間続けると、単純計算で105600円かかります。これで腹囲が5cm程度減るのを期待する覚悟とやる気があるのであれば、3ヶ月や6ヶ月のヘルスコーチングを受ける方が、その後の人生に使える知識と経験が身につきますので、個人的にはオススメです。

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