見出し画像

【心得16】医療は心マをするように

昨日の記事では医療は手術のように、と話したが
今日は、医療は心マをするようにである。

心マというのは心臓マッサージのことで、胸骨圧迫ともいう。
心臓マッサージ・胸骨圧迫が行われるのは、患者さんの心臓が動かなくなっている時で、外部から胸部に大きな圧力を加えることによって強制的に心臓から全身に血液を送り出すことを目指すわけです。

ではなぜ僕は、医療は心臓マッサージ・胸骨圧迫をするようにというのでしょうか。
その答えは以下の通りです。

  • 正しいやり方(場所・力・速度)で行わないと意味がない。

  • 1人で続けるのは難しい。

  • 治療効果が現れるのは心臓が止まってすぐ。時間が経てば効果は半減。

  • 効果が出るか分からない中、祈るような気持ちで治療を続けるしかない。

  • 治療的な効果だけではなく、大きなダメージが患者に加わる。

このように、僕は胸骨圧迫にこそ医療の真髄が詰まっている、と思うのです。
では一つ一つ、説明していきたいと思います。

正しいやり方(速度・力)で行わないと意味がない。

胸骨圧迫は、患者さんの胸骨の真ん中を5cm程度沈むくらい1分間に100回のリズムで行います。
つまり、正しい場所を正しい深さで正しいリズムで圧迫することをしなければいけないわけです。

これは他の医療の場面でも同じです。
医療行為は正しいやり方で行わなければ効果が出ないのです。

1人で続けるのは難しい。

胸骨圧迫を行なったことがある人はわかると思いますが、
胸骨圧迫をおこないのは非常に疲れます

どんなに力がある人でも、1人で続けることはできないのです。
胸骨圧迫を行う他にも、タイムキーパーも必要ですし、アドレナリンの投与を行う人も必要です。

どんなに優秀な医師がいても、1人では患者さんのために必要な医療は行えないのです。そのことを理解していなければいけません。
患者さんに必要なのはチームなのです。

治療効果が現れるのは心臓が止まってすぐ。時間が経てば効果は半減。


胸骨圧迫は心停止から
3分以内に始めることができれば、75%の患者さんを救命できますが、
5分以上経過してしまうと、25%の患者さんしか救命できない、
ということが知られています。

治療はできる限り早く始める方が効果が良いのです。
時間が経てば経つほど効果は出なくなります。

一方で、心臓が止まっていないときに胸骨圧迫をしてはいけません。
治療を早く始めた方がいいと言っても、早すぎる治療は不要なのです。

効果が出るか分からない中、祈るような気持ちで治療を続けるしかない。

先ほど、心停止から3分以内に胸骨圧迫を行うことで75%の患者さんを救える、ということをお話ししました。

ただ、あなたが患者さんが倒れてから3分以内に胸骨圧迫を始めたとしても、

あなたが心臓マッサージをしている患者さんが、
・救える75%の患者さんに入るのか、
・救えない25%の患者さんに入ってしまうのか、
分かりません。

それでも、あなたは『この人の心臓は動き出す』そう信じて胸骨圧迫を行うするしかないのです。

これは他の医療場面でも同じです。

『自分がやっている医療がその患者さんを救うしかない』、
僕たちは、そう信じて医療を行うしかないのです。

治療的な効果だけではなく、大きなダメージが患者に加わる。

胸骨圧迫は止まった心臓をもう一度動かすための医療行為です。
当然、患者さんの体にも大きな負担がかかります。

骨が折れたり、肺からの出血も起きるわけです。

どこまで治療を続けるか、いつか治療をやめるのか
それを考えないと、体にダメージだけが出続けるわけです。

治療のメリットだけでなく、デメリットを考える必要が医療者にはあるわけです。

まとめ

現代の医療はいろんな診療科、いろんな専門家があり、いろんな治療法があります。
ただ、その本質は患者さんの止まった心臓を動かす、心臓マッサージ・胸骨圧迫の中に含まれているように僕は思うわけです。


ではまた明日、

【前の記事はこちら】から
【次の記事はこちら】から


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここまで読んでくださってありがとうございました.

少しでも興味を持ってくださった方は
【スキ❤️】【フォロー☺️】をお願いいたします.

【感想】【気になったこと】【取り上げて欲しい内容】etc
【コメント】お待ちしています🍀

Twitter:=Dr.NK=


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?