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運動習慣で食べ物の好みが変化する?

別のnoteにて、運動で食欲を抑えられる話をしました。 今回はその続きで食べ物の好みと運動の関係についてです。

運動することで食の好みが変化する

前回の内容のおさらいですが、運動習慣を持つことで食事の量がコントロールできるようになるとお話しました。 運動のメリットはそれだけでなく、好きな食べ物にまで影響を与えることがわかっています。 2018年に行われた研究では、食事の好みと身体活動量に負の関係があることがわかりました。具体的には、身体活動量が多い人ほどより低脂質な食事を好むことがわかったのです。 以下に運動量と食べた食事の量及び内容をグラフにして表示したものがあります。

運動量が増えるに伴い、食事量が減りかつ低脂質なものを好む傾向になっていくのがわかります。

興味深いことに、運動量が増えると全く運動していない状態よりも食事量が減っていきます。これは前回の記事の内容でも触れた通り、運動習慣により食欲が抑えられ、適切な量で満足していることを反映していると考えられます。 活動量が増えるほど消費カロリーが大きくなるため、食事量は自然と増えていきますが、それでも度を越した大きな上昇ではありません。

この結果はfMRIを用いた脳の画像研究でも裏付けされています。脳機能を可視化するfMRIを用いた研究では、60分間の高強度運動により,食物への欲求,視覚的注意,抑制制御に関連する脳領域において,食べ物を見た時のニューロン反応が低下することが示されました。

つまり、運動後に食べ物をみても、それを「食べたい」という欲求が運動前より抑えられた状況になるということです。 食物の好み、身体活動、および脂肪率の間の相互関係は、まだ完全には解明されておりません。考えられる簡単な説明は、運動する人が持つ健康でありたいという欲求が、より健康的な食事を選んでいる結果であるということです。 しかし、これだけでは実際に脳に起きているニューロンの変化が説明できないため、今後の追加研究が期待されます。


デブは甘え、は本当か?

今回のお話を前回の内容と統括してみます。 肥満体型にある方は運動不足や食事制限食事過多に陥る傾向が強くありますが、これは「怠惰な生活が肥満を生んだ」というようなシンプルな話ではありません。

肥満の体型の場合、生体内でのホルモン分泌を変えてしまい、より怠惰な性格に人を変えてしまうのです。結果として悪循環に陥っているのですが、必ずしも肥満の人=意志が弱いと簡単に一刀両断できる話ではありません。 デブは甘え、という強烈な批判は時折目にしますが、個人的にはこの言葉は配慮と思慮を欠いたセリフだと思っています。

肥満体型の人はそもそも体内でのホルモン分泌の関係上、食欲が強めに出やすい状態にあります。すなわちこの状態で同じように食物を我慢しようとしても、脳から送られる「食べろ」いう指令が普通の方よりも強いのです。結果、食べ過ぎてしまうのは、生命として自然なことです。 つまり肥満体型の方が食事制限をすることは、一般体型のそれよりもはるかに難易度が高いことになります。その事実に目を向けず、ただ一言で"甘え"という表現で一蹴してしまうのは、生物学的な知見の欠如を露呈しているだけに感じてしまいます。

その食欲は変えられる

確かに肥満体型の方は食欲ホルモンが亢進している状態なので食事制限は容易ではありません。しかし自分が食事が我慢できないから自分はダメなんだと自分を責めてしまっては責める必要はありません。その食欲というのは人としてとても根源的かつ強い欲望なので、それをコントロールしようと思うのは並大抵の意思では無理です。 食欲を強い意志で押さえ込もうとするのではなく、その食欲そのものを減らす方法を考えて見るほうが、建設的ではないかと思います。

食欲を減らす方法として、今からすぐにできることは、運動と咀嚼です。食事習慣を変え、運動習慣をつけることは、初めはとても辛いでしょう。しかし、その辛さは一生続きません。食欲は徐々に減退し、以前よりも食事をコントロールすることが苦ではなくなります。


食事制限をより楽にするために運動を

ダイエットにおいて運動がとても重要なのは、運動でカロリーを消費することだけでなく、食習慣にもポジティブな影響を与えるから。 ぜひ生活の中に運動を取り入れ、一生モノの食生活を手に入れてください。  

参考文献
Curr Obes Rep. 2020 The Impact of Physical Activity on Food Reward: Review and Conceptual Synthesis of Evidence from Observational, Acute, and Chronic Exercise Training Studies Neuroreport. 2013 Dec 4 William
D S Killgore et al. Physical exercise and brain responses to images of high-calorie food Physiol Behav. 2018 Beaulieu K et al. Homeostatic and non-homeostatic appetite control along the spectrum of physical activity levels: An updated perspective.

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