出る杭は打たれるー嫉妬と虐めの構造が大学でも秀でた教員を潰してしまう Part2

 よく「ドクター」=「医者」だと思われていますが、医師は必ずしも博士とは限りません。歯科技工士の方も歯科を開業できますし、内科医でも医学博士でなくとも、開業医の息子で国家試験さえ通過すれば、誰でも医師にはなれます。博士号のない医師は珍しくないってご存知でしたか?

 先日、かかりつけ医の開業医の大先生が、大学で勤務医をしていた息子さんに後継者として頼んだら、「実は医学の博士号を取りたかったんだ。」と言われて、困ってしまって、と私に仰ってました。

 前回のS先生のように、研究にも教育にも、熱意があり、華麗な経歴の先生に、周囲の目が冷ややかなのは、そういった秀でた人材を高く評価し、皆でお祝いをする前に嫉妬する輩の方が多いから、なのでは?「出る杭は打たれる」ー今、中学受験を前に慣用句として生徒様に教えながら、これが今の教育界をだめにしているのではないか、と思うのです。

 これまで書いてきた、公立小・中学校の人材不足が問題となって久しいですが、こういった嫉妬の構造が、その遠因にはなっているのではないでしょうか? 優秀な教員も、妬まれて、居心地が悪くなったら、居なくなってしまいますよね。毎年、年賀状をS先生に書いていた息子。毎年、年賀状をくれるS先生。たった今息子が検索したら、私立T大学の教授で立派にご活躍。

 ところが、社会科学系、文系では、大学人でも博士号のない所謂「実務家教授」は沢山います。私は社会学なので、当時東大でも文系では博士号を持つ教授は少なく、拙著(1992)を書いた当時の筑波大助教授、石見利勝先生(後の前姫路市長)の紹介で、理系の東工大の社会理工学研究科での学位取得を選択したのです。憧れの社会学者、今田高俊先生の指導教官になって貰いたくて!

 その嫉妬は、小中学校だけでなく、大学も同じ。「博士号」学位のない教授に大学院生が指導を仰ぎたいと思わないのは、学術論文を書いたことがない方々だと判っているからです。それなのに、人気のある博士号を持つ学者の研究室の教授は妬まれるのです。そんなに嫉妬するなら、自分も頑張って国際的な学術雑誌に査読付論文を沢山書いて、「論文博士」になる道もあるのに、博士号を持つ教授に対して、学内での嫉妬や虐めは、半端ではありません。博士課程の院生はフルタイムの社会人なので、指導は深夜から明け方まで、寝られない位なのに!

 こんな話を東大出身の女医にしたら「そんなことがあるんですか。東大だと、医学部ですし博士号が普通なので何も起こりませんけど」と。皆が出た杭なら、打たれないって話ですよね?「虐め」のメカニズム(2010)については、既に書きましたが、皆と同じであろうとする「付和雷同」の因子、が曲者なのです。

・石見利勝・田中美子(1992) 著『地域イメージとまちづくり』技報堂出版
・田中美子(2010) 著『いじめのメカニズムーイメージ・ダイナミクスモデルの適用』世界思想社

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