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KILLERS/キラーズ

2014年公開の、二人の殺人鬼をテーマにしたインドネシアとの共同作品。
日活100周年記念企画の一つ。
監督は、モー・ブラザーズ。
主演は、北村一輝とオカ・アンタラ。

※ネタバレ満載。ストーリーと、独断と偏見の考察と、参考にならないレビュー。耳が悪いので、台詞は確証はありません。


2014年に公開された「KILLERS/キラーズ」。
日本とインドネシアの合作映画。「ザ・レイド2 GOKUDO」もこの流れ。
いや、グロいの駄目だから敬遠してたが、思い切って観たら、いやぁ、凄く良かった。
海外の人が、この作品は過小評価されていると言っていたが、激しく同感。
日本側の生粋の殺人鬼と、ジャカルタ側の危険因子を持ちながらも正気を保とうと揺らぐ、二人の殺人鬼の話なんだけど、日本側に覚醒させられた感があって、可哀想な気もする。
なんたって、日本側は「正真正銘」の殺人鬼だからね。



日本:野村修平さん

東京に住む野村修平さんは、緑豊かな無機質な家に住み、女性を誘い込んでは専用の部屋「処刑室」で白いマスクを被って殺人を繰り返している。
その様子を数台のカメラで撮影し、「専門」のサイトに動画を載せる。
(闇サイトは、需要があるんだろうなぁ、すぐにコメントが沢山上がってたし。何百万回も再生される)
容姿端麗、お金もあって高学歴(外資系の金融機関にいてアメリカにもいたが、リーマンショックで日本に帰ってきたらしい)のハイスペックなんで、そりゃコロコロ引っ掛かるだろう(笑)

冒頭の獲物は、森の中に逃げてしまったが難なく捕まってしまう。
「凄いな。まだ体力が余っているのか。…最初からやり直そうか? うん?」って台詞がなんか生々しい。

「処刑室」で獲物を撮影。

で、「これを使うのは初めてだ」と、ハンマーで頭を叩き割る野村さん。 無論、頭部には血が飛び散らない様にビニール袋を被せてある。いや、ここのハンマー叩き付ける様子が、物凄くリアルだったんだよね。 振り抜かない感じが。
ビニール取って、血塗れで息も絶え絶えな彼女がこと切れる様もしっかり撮影。

手持ちカメラでアップで撮影。
処理中の野村さん。
いい感じに編集中の野村さん。


死体は薬剤で処理。部屋の掃除も完璧。 野村さん、かなりの綺麗好き(オイ
撮った映像はいい感じに編集して、サイトにアップ。 それが野村さんのルーティン。

日々獲物探しとゴルフの練習に励む野村さん。

ある姉弟との出会い

ある夜獲物を探し求めて車で徘徊する野村さんの目に留まったのが、花屋の姉弟。

訳有り気の姉弟。
姉の姿が過る。


「ごめんね」と言いながら、弟を車道に突きだして殺害を試みる姉。 だが、車が寸でで止まったので事なきを得る。 泣いて弟を抱き締めて泣く姉。
その姉の行動は、野村さんには「殺人鬼仲間」に見えた様だった。「あれ?あの人もそうなの?」ってな感じかな?w

興味を持った野村さんはその花屋へ

白い薔薇を所望する野村さんと、花屋の店主久恵。


店の前に止まっていた車に小学生が傷を入れて、メタクソ怒鳴られている所へ野村さんが出て行き、傷を入れた小学生が「だって、このおじさん鬱陶しいんだもん」と言った後に車の持ち主に何事かを耳打ちしたらおじさんが大人しく引き下がった訳だが、後で花屋の姉、川原久恵に、何て言ったのか尋ねられて、「車のナンバーを憶えたぞ。だから探し出すの事は、難しい事じゃない。 その体バラバラにして、トランクに詰めてやろうか」と言ってやった、という野村さんの言葉に、久恵は単なる冗談として笑ってしまう。
多分、これがあって、野村さんは確信したんじゃなかろうか?久恵が仲間だって。

怒鳴り散らしている車のおじさんに、何やら耳打ちする野村さん。
何かを囁かれて、大人しく退散するおじさん。

あの脅し文句、野村さんにしたら冗談なんかじゃないと思う。やるよ、この人(笑)

久恵姉弟(特に姉)に執着したのは、野村さんが重度のシスコンであった事が大いに関係するんだろう。
シスコンというか、異常なまでの姉への執着。
これ、野村さんがキラーになった起因の1つだろう。

インドネシア:ジャーナリストのバユさん

一方、ジャカルタのバユさんはジャーナリストで、権力者のダルマと敵対してる。

権力者のダルマ。彼の右腕とダルマの妻、息子。

汚職やDVを暴きたいが、権力で潰されてまた身の危険にも晒されていた。 そんなバユさんはある日偶然にも例のサイトで野村さんの作品を見てしまう。 なにかザワザワするバユさん。(いや、あのサイト見たって事は色々お察しなのか?)

野村さんの投稿映像を吸い寄せられる様に観てしまうバユさん。

子ども想いの優しいパパであるバユさんであるが、その内に秘めた衝動がざわつき始める。
ある時タクシー強盗に遭い、バユさんは思わず強盗達を殺してしまう。それを携帯で撮影した彼は、何故か例のサイトにUPし、すかさず野村さんに見られメッセージを寄越される。

一仕事終えてホッと一息入れる野村さん。

まさに「見ぃ~つけたぁ」である(笑) 焦るバユさん。 野村さんに、無事友達認定される。
バユさんの奥さん(元?)は裕福な家の出で、義父達からあれやこれや嫌味を言われたり馬鹿にされたり(有能な次期義息を匂わせたり)していて、我慢の限界に達したバユさんは想像の中で一家全員を射殺する程、危うい衝動を自覚してしまう。
ビデオ通話で野村さんに焚きつけられたバユさんは、以前から遺恨のある権力者をやっちゃおうと、その右腕の男ロバートを狙う。屋敷の中に小さな子どもが監禁されボロボロになった姿を見てバユさんブチギレ。
その男を縛り付け痛めつけた後に火を付けて、その様子を録画して例のサイトにUP。

バユさんを仲間にすべくビデオ通話で、次のターゲットは?と焚きつける野村さん。

野村さんの執着

野村さんは花屋で久恵の自閉症気味の弟を養わなければならない苦労話を聞く。

「野村さんは、どういう方なんですか?」
「私の事は…、よく、分かりません」

姉さんが大好きだったと告白する天涯孤独な野村さんの「久恵さんに、なんか…癒されちゃって」という言葉に励ます久恵。テンション上がって先走った事を口にして、久恵にドン引きされる。

わくわくした様子で、弟を殺そうとした事を訊ねる野村さん。

次のターゲットは商売女。だが車で移動中姉の幻影を見て慌てた野村さんは、その女に怪我をさせてしまう。
怒ったその女のボスにぼこぼこにされてしまう野村さん。

散々な目に遭った野村さん。

風呂に入りながら、夢なのか回想なのか一家心中の男と会話する野村さん。
妻、娘、息子はとうに死んでいて、最後に残った男は「もう、みんな地獄の中にいるんだよ」と言い残して命を絶つ。

樹海の様な森を歩くと、一つのテントを発見。
「…もう、みんな地獄の中にいるんだ」

この男、花屋で怒鳴ってたおじさん(でんでん)なんだよね。でも、同じ人物とは思えないんで、野村さんの記憶とか心情とかの反映じゃないかな?とも思う。
野村さんは久恵の弟に、姉さん大好き同士の親近感を持つ。そして姉さんを守れるのはお前だけだと小学生の弟にスタンガンをプレゼント。

小学生の弟にスタンガンを渡し、いじめっ子に仕返ししてやれと唆す野村さん。

バユさんの危険因子

バユさんは、妻と子供を取られると悲観して、義父が推してる男を殴ってしまう。抑えきれない衝動に困惑したバユさんは、野村さんに連絡。バユさんの2番目の作品を観ていた野村さんは、「満足させてくれる相手を選べ」とアドバイス。バユさんは、ロバートから聞き出したダルマがいるというホテルに向かう。

「お前も感じただろう?あの高揚を」
色々とアドバイスをしてくれる野村さん。

野村さんのリベンジ

リベンジすべく、繁華街へ乗り込む野村さん。女を追っていると、ボスを発見。

夜の街へ繰り出す野村さん。
偶然女のボスも発見する。
クラブに入ってボスの男を探す野村さん。
ターゲット、ロックオン!

後を追って入ったクラブでボスを見付けると、トイレでメッタ刺し。

「俺を覚えているか?」
免許証と雰囲気が違い過ぎる野村さんに、ボスもビックリ。
ボスを仕留めて踏み付ける、鬼気迫るカッコいいシーン。音楽も良い。
トイレから戻って、今度はあの女ミドリを発見。

そして、女を見付けて拉致。
女を車のトランクに詰めていた時に、警察に職質を受けてしまう。返り血を洗い流し全身びしょ濡れの野村さんは怪しさ満点。

女を拉致。気絶させてトランクに詰める野村さん。
若い刑事にしつこく絡まれる野村さん。
刑事達がアレコレ話し合っている後ろで、這い出てきた女を急いでトランクに詰め直す野村さん。

しかし、ここでも殺人の神は野村さんに味方する。
ボスから奪い返していた免許証、若い刑事は食い下がったが、近くのクラブで殺人事件の通報があり難を逃れる野村さん。いや、それやったの、この人です!(笑)
この作品で一番好きなシーンだw 兎に角野村さんが非常にカッコイイ!通常モードの野村さんとは別人の域の狂気と冷徹な戦闘モードを、是非ご覧頂きたい!

バユさんの苦悩

ダルマがいるというホテルの部屋へ覆面を付けて強襲するバユさん。しかし、居たのはダルマの息子だけだった。息子には関係ないので見逃そうとするが、何かのケースに手を伸ばす様子に思わず発砲。
よく見るとそのケースは薬(喘息?)が入っていて、愕然とするバユさん。勘違いで殺さなくてもいい者を殺してしまった後悔に苛まれる。

この事で我に返ったであろうバユさんは、「何時もと違う、特別なものを見せてやる」という野村さんのビデオ通話に、「もうやりたくない」「止めてくれ」と懇願する。

スペシャルなものを見せてやると、斧を持ち出す野村さん。
「止めてくれ!」絶叫するバユさん。

久恵の最期

斧を手にする野村さんに戦慄するバユさん。必死に止めていると、丁度久恵が訪ねてくる。

ドアスコープから確認する野村さん。睫毛凄い。
仕方なくドアを開ける野村さん。
無機質な部屋。弟に何をしたんだと久恵に責められる。


野村さんの影響で弟が乱暴者になったと久恵にクレーム入れられ、何がいけないのかと言い放つ野村さん。
自分は弟と似た者同士。「姉は私だけのもの、母親はどうでも良かった、父親は大嫌いだった」…と。
久恵は弟を厄介者扱いして殺そうとした、酷いのはどっちだ?と。
久恵はただ生きるのが辛くて一緒に死ぬつもりだったと反論。弟が死んだら、私も死ぬと。
彼女を仲間認定していた野村さんは、「正直に言っていいんですよ?」と告白を促す。そして今までしてきた事(殺人)を語り合おうと誘うが「あなた、病気よ!」と久恵に再びドン引きされる。
そこへ拉致したねえちゃんの悲鳴が。引き攣る久恵に、野村さんが本当に(何をしているのか)判らないのか!?と詰め寄る。

「言ったでしょう?来ちゃ駄目だって…」


「姉と母は自殺なんです、私じゃありません。信じてくれますよね? …父親じゃないんです、あれはホームレスのおやじです…」独り言の様に呟く野村さんに恐怖する久恵。野村さんの狂気。

「…あれは、ホームレスのおやじです」

危機一髪で持っていたスタンガン(野村さんが弟にあげたヤツ)で野村さんを撃退。
オンラインで繋がったままのバユさんが「しっかりしろ」と励ましているねえちゃんを久恵が救出。対面するバユさんと久恵。逃げようとする二人の前に、覚醒して白覆面を被った野村さんが。
逃げ込んだ部屋で、野村さんの姉と思しきモノを発見してしまう。

姉の部屋には枯れてしまった白い花が。

抵抗空しく野村さんの手に掛かる二人。

ウインドウに映る野村さんが怖い。

血塗れの野村さんがバユさんにいう。「久恵はよく頑張ったよ。でも、最後に残るのは、お前と俺だけだ」
愕然とするバユさん。

「久恵は、よく頑張ったよ…」

野村さん、ジャカルタへ

「姉さん、全部終わらせてくるね」
姉の遺体に火を付けて、野村さんは決着の旅に出る。


仲間だと思っていた久恵もいなくなって、全ての決着をつける為に、野村さんはバユさんのいるジャカルタへ向かう。
バユさんはぶつかりながらも妻と娘と和解。久し振りに平穏な時間を過ごしていた。
所が娘は誘拐、妻は野村さんに惨殺され嘆き悲しむバユさん。

忍び寄る野村さんの影。
やっと逢えたな。

野村さんを追うバユさんは、車に魅かれ拉致される。それを追う野村さん。
廃ビルに娘を誘拐、バユさんを拉致したのは、ダルマだった。
娘を人質に、「何故、息子を殺した!」と手下(警官?)に痛め付けさせるダルマ。
止めをさそうとする所に、野村さん登場。
警官を打ち抜いてダルマをボコって、バユさんを救出。

まだ意識のあった警官に止めを刺すのに、敢えてレンガを選ぶ野村さん。
「全く、お前なにやってんだよ」
「…質問も判らぬまま、答えを探し求めていた。だが、もうどうでもいい。
応えは周りにある。常にあったんだ。全てが…ここに帰結する」

決着と伝染する狂気

バユさんを解放した野村さんは娘を人質に、ダルマに娘を、バユさんにダルマを殺せと命じる。
仕方なく娘を守る為に殺し合うバユさんに、娘は激しく拒否反応を示す。

「これで分かったろ。お前のあるべき姿が」


呆然とするバユさんに、俺が決着をつける…と娘を殺そうとする野村さん。
娘を守ろうと野村さんと対決するバユさん。バユさんは撃たれてしまうが野村さんを道連れに。

手錠で繋がれていてハッとする野村さん。
野村さんを道連れに、ビルから落ちるバユさん。
かなりの高さ落下する二人。下にはダルマ達が乗ってきた車が。


落下する二人。瀕死状態の野村さんを思わず撮影する現地少年。
息も絶え絶えに野村さんがいう。「カット…」

二人の殺人鬼

ジャカルタのバユさんは、狂気を内に秘めつつも、家族思いがあるが故に暴走し、また正気を取り戻した。
野村さんに因って一度は解放された狂気も、「大事な人への愛」の為に完全な殺人鬼になり切れなかったバユさん。
一方の野村さんは、「大事な人への愛」で完全にぶっ壊れた殺人鬼。精神の壊れた孤独な殺人鬼の野村さんは、いつでも仲間を求めていたんだろうな。だけど、仲間だと見初めた久恵もバユもそうじゃなかった。
ある意味可哀想な野村さん。
この人の異常な所は、殺人に走る起因や目的、背景を理解して貰いたい訳じゃないって事だ。
ただただ、殺人に関して話し合える仲間が欲しかっただけ。うん、こりゃ相当な人を見付けるしかないね。

野村さんはなんでこうなったのか?まぁ、姉への異常な愛は、その起因の一つである事は間違いないだろう。
姉の回想シーンや野村さんの台詞から推察すると、彼が中学生の頃に姉が亡くなり、両親も亡くなっている事から、姉が弟の異常性に気付いて自殺、両親はその事を知って自殺、または野村さんが手を掛けたんじゃなかろうか?
野村さんが女性を殺害し続けるのは、(恐らく拒絶した)姉への愛情の裏返しなのかもしれない。
想いを解かってくれない憤りとか。
決着を付ける事を決心させたきっかけを作ったのは、テントにいたホームレスのおじさんだもんなぁ。
何人殺害しても埋まらない心の穴に、気が付いたのかもしれないし。
良心が残っていて本物の殺人鬼になり切れなかったバユさんと、ぶっ壊れた生粋の殺人鬼の野村さんは、かなり対照的。

「キラーズ」とは

この作品を通しての自分の感想は、先ず殺人は「ダメ、絶対!」って事と、ぶっ飛んで壊れている人間もいる、若しくは、そういう危ない因子を隠し持っている人間が、少なからず存在するって事。
それと、美しい殺人鬼・野村さん(北村一輝)を愛でる作品なのだ(笑)という事だ。
当初、野村の役は20歳くらいの設定だったそうだ。
野村役の北村一輝氏は、当時恐らく40代前半。監督のモー・ブラザーズは歳が離れ過ぎていて場合によっては考え直すつもりだったらしい。
が、先ず彼の容姿が気に入って、演技に定評のある彼の演じる野村は予想以上の出来で、結果ぴったりの役だったと。他のスタッフも大絶賛。
いやぁ、あの野村の役は、北村さんにしか出来ないと思うよ。いや、彼以外には考えられない(笑)
怖い時の、氷の様に冷たい三白眼。狂気をはらんだ無表情。シャイで物静かで、それでいてカリスマ性と色気を纏った「狩り」モード。子どもの様にテンション上がる壊れた表情、獲物と談笑中に一瞬真顔になる恐さ。
これを演じられる20代がいるだろうか?いや、いない(反語)。
「彼は予定より歳が上だったが、格好良かった」
そう言っていたモー・ブラザーズのティモ監督は、特に北村さんを気に入っていた様だ。

本編にはないシーン。美しい。


だよね~、美しいもんね~。再度言うが、リベンジに行く野村さんが、超カッコイイのだ。
バユ役のオカさんもハンサムだな~。可愛い系のハンサム。
この二人が「ザ・レイド2」で一緒に並んでるとは、なんて美味しい(笑)
題材が題材だけに流血やむごい死に方もある訳だが、そこまでグロイ表現はないので、是非観て欲しい作品だ。
そう言えば、見たかったシーンが無かったんだが、コレ海外版と仕様が違うのだろうか?
レイド2は、過激表現がカットされてない国外版があるそうなんで、キラーズもそうなの?それともカットされたシーンなのかな?日本版のセル版には無かった。う~ん、BDには特典とかに入っているのだろうか?
いや、あんな美しいシーン、滅茶苦茶観たかったのに!

尚、パンフとかも持ってないし、これノベライズ版とかあるのかな?登場人物や台詞等の詳細が判らないので、あくまで個人的な考察と感想である。読み違ってたらソマソ。



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