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エンドの真実

遥かな昔。
この世の果てに人が赴くことができ、かの地に草が生え花が咲き誇っていた時代。

その地に住まう人々は慎ましくも強く暮らし、自分達の地に生える植物を愛していた。
時折他の次元からやってくる違う種族の者を歓迎し、与え合い、交流していた。

空に日はなく、夜に星なく、月も知らない人々であったが、他をねたむことをせず自分達の持つ物に満足していた。

彼等は大きく、また器用であったため物を作り出す事が得意であった。
ある日誰かが言った。
「我らのため、繁栄のため、そしてこの世に存在するすべてのため、巨大な建造物を建てよう。この地に永遠に我らの存在を残そうではないか」
こうして彼らは長い時間をかけ、自分達のための中心の場を作り上げていくのだった。

途方もなく長い時間がたち、ついに完成の日を迎える。



そしてそれは、この世の果ての終焉の日でもあった。

いずこより現れたのか、なぜ現れたのか。
その終焉をもたらす竜は彼らの祭壇より唐突に現れ、そしてその地を滅ぼした。
草を焼き、花を枯らし、土を剥いだ。
滅びを運ぶ眼に焼かれ、彼らの魂は死に絶えた。
ただ空虚な体だけになり、虚ろになった世界と自らを満たしたいという欲求のみ。
かの竜は空を支配し、ただ怯える空虚をあざ笑う。

終焉の日から永い時が去った。
空虚は本能ですらない思念によりさまようになり、他の次元にうつろい現れる。
そしてかつての繁栄を夢に見、豊かな自然を取り戻そうと土草を朧な手に持つ。
空虚は楽園に助けを求めるように現れたが、すでにそこは業火によって焼かれ地獄と化していた。

人は言う。
「かの者達の目を見てはならぬ」と。
怯えているのだ。
恐れているのだ。
終焉をもたらす竜の眼の恐怖を覚えているのだ。

人は言う。
「かの者達は水が苦手である」と。
悲しいのだ。
苦しいのだ。
繁栄の象徴である水が思い起こさせるのだ。

今日もまた、竜に怯えながら空虚は運ぶ。
いつかこの終焉から解き放たれる事を願いながら。

人はかの地を終焉の地「エンド」と呼び、空虚をエンドに住まう者「エンダーマン」と呼んで恐れ哀れんだ。

願わくは、エンダーマンに安寧を。

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