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古代都市の真実

始まりは、たった一欠けからであった。
楽園のものではない。
かの地は美しく、激しく、豊かなのだ。
果ての地のものではない。
かの地は暗黒で、静寂で、静謐なのだ。

冒険者達はその地を探すために旅立った。
研究者達はさらなる可能性を期待し追従した。
狂信者達は想いを秘め追従した。

地の底の底。光差すことのない深い場所に、その扉はあった。
異界へと続くその扉を開くため、冒険者達は深層岩を崩し、切り開き、加工し、大きな都市を作った。
長い時が過ぎ、ついに扉が開いた。
冒険者達と狂信者達は慎重に、そして大胆に扉をくぐる。
目の前に広がったのは、深い藍色にきらめく、鉱物とも生物ともつかないものだった。
そこで一人が気づく。
大きく、異形のモノ。目はなく、恐ろしげな唸りを上げるモノ。
「お前は誰だ」
その言葉にそのモノは顔を向ける。
そして冒険者達の体をその巨大な腕でなぎ払う。
数人がただの肉塊へと化し、悲鳴を上げた他の者もまた。
残った冒険者達は我先にと扉をくぐり、都市へと逃げ帰った。

狂信者達は異界をつぶさに調べ、一抱えもある石を各々抱え扉をくぐった。
都市に戻った狂信者達は、異形のモノの唸りと冒険者達や研究者達の悲鳴をよそに、石を各所に恭しく安置する。
そして狂信者達は自らをえぐり、石に己の魂を捧げた。
狂信者達の魂を吸ったその石は、異界の藍色を都市に呼び出し、生じさせ、侵食させた。
あの異形のモノをも。

楽園が地獄と化し、果ての地が終焉を迎えてから、さらに永い時間が過ぎた。
地の底の底は埋まり、その存在を知る者も、それを著す物も消え去った。

そして、永遠とも思える時を経て、とある者が都市を発見する。
その者は驚嘆の声を上げ。
声に藍色が呼応し。
藍色は異形のモノを生み出し。
異形のモノはその哀れな犠牲者を魂に変え。
石は魂を吸い周りを侵す。

都市はまた、永遠の静寂に包まれた。

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