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#52 みかづき(2019)-学習塾の存在価値に光を当てた稀有なドラマ

HP紹介文

学校教育が太陽だとしたら、塾はその光を十分吸収できない子どもたちを照らす月――。2017年本屋大賞第2位!昭和から平成に至る塾と日本社会の変遷を背景に、天才的講師とカリスマ的経営者の出会いが生んだある塾と家族の半世紀を描く。森絵都の同名原作を連続ドラマ化。日本人は戦後、何を得て、そして何を失ってきたのか。独りで見て心動かされ、家族そろって見て楽しめる物語。

教育者、特に塾講師に観て欲しい逸品

HP紹介文やはやや盛り過ぎかと(笑)。見どころは「何を得て、何を失ったか」というよりも、「名優が演じる塾の存在価値の変遷」という感じです。ちなみに、紹介文の天才的講師を演じたのが高橋一生さん、カリスマ的経営者を演じたのが永作博美さんです。

中央:高橋一生&永作博美

塾の存在価値と変遷

このドラマは主として下記の4つのパートで構成されています。

  1. 昭和40年代前半   学校の空き教室を使った寺子屋活動

  2. 昭和40年代後半   家庭の一室を使った少人数指導

  3. 昭和50年代以降   小規模塾の統合と拠点校開発

  4. 昭和後半~平成初期 拠点校を中心とした分校の地域拡大

  5. 平成以降      個別指導塾の拡大

塾が誕生した背景には、学校教育に馴染めなかった児童・生徒を救いたいという教育者の想いがありました。そんな想いから生まれた塾が、教育ビジネスの荒波に飲み込まれ、生存競争を生き抜く中で、本来の使命感が失われいく過程や、その矛盾に苛立つ関係者の想いが丁寧に描かれています。

高橋一生✖永作博美✖大政絢

高橋一生さんは、塾の拡大を望まず、あらゆる児童・生徒のニーズに合わせて、毎回異なるプリント教材を用意する、ホンモノの個別指導を貫く講師を演じます。一方、夫との確執に苦しみながらも、塾の拡大路線に執念を燃やす妻を永作博美さんが演じます。さらに、ふたりから独立し、ビジネスライクな個別指導塾を立ち上げる自由奔放な娘を大政絢さんが演じます。ドラマの前半では、学校教育を補完するための純粋な教育愛が、後半では、家族3人による教育観に関する確執がドラマの核となり、昭和から平成に至る塾の興亡のすべてが示唆されています。

学校は太陽、塾は月

最後の見どころは、主人公・大島吾郎(高橋一生)が孫世代のために書き残した手紙(みかづき)を読み、教育ボランティアに励む孫・一郎(工藤阿須加)の姿です。「教育は誰のためのものなのか?」という問いを踏まえ、学校・塾それぞれの役割を問い直す、すばらしいドラマでした。

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