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『プリズム』参加者レポート(16)

レポート作成者:岡本セキユ

楽しく、無理せず、自由にやろう……そんなワークショップが最近では珍しくないけれど、ここんなにストイックに自由さと向き合う機会はあまりなかった気がします。

冒頭、軽い自己紹介ののちファシリテーターの長谷川さんから今回のWSについてお話がありました。
テーマは「舞台と客席が同じ空気を共有する」こと。そのために、その場で起きたことは何でも取り入れて面白がろう。
私は演技する際に自分のしっくりくるリズムや音を頼りにするきらいがあり、もっとしなやかになりたいと思っていたので個人的にも前のめりになるテーマでした。

最初のワークは二人一組になっての漫才。打ち合わせもないまま初対面同士、架空のセンターマイクの前で雑談をします。
「笑わせなくていいし、嫌になったらやめてもいいですよ」とハードル低めに始まりましたが、いざ見てみるとどのコンビも予想以上にそれっぽく、本当になんでもない雑談なのにもっと見ていたいと思えたのが不思議でした。
自分の番になるとやっぱりとても緊張します。単に初対面の人と会話をするドキドキに加え、それを第三者に聞いてもらう意識も伴うのが新鮮でした。

長谷川さんが言及された中で面白かったのは漫才師の立ち方について。言われてみればたしかに、漫才師ってちょっと独特なはすに構えた立ち方のイメージがある。コンビで一対一の会話をしながら同時に観客にも語り掛ける漫才は、しっかり役を演じるコントとは違って、あくまでも客席と地続きの世界で行われているようです。長谷川さんが「役と客席のあいだ」と表現されていたのが印象的でした。

意識しながら他の方の漫才を見てみると、同じたわいのない雑談でもトーンによって体に違いがありそうです。
たとえば、最初のうちは探り合いながらある程度客席を向いていたコンビが、共通の趣味を見つけた途端テンションが上がって急にまっすぐ向き合った瞬間。よくわからないけどハッとしました。
どちらの時間も見ていて楽しかったのですが、特に向き合って喋り出してからは二人の世界を覗いているような、どちらかといえば普段演劇を見ている感覚に近い気がします。
演者のスタンスによって客席との距離感が揺らぐのを感じました。

次にメインのワークとして台本を演じてみます。
チームに分かれてまずは読み合わせ、その後すぐに台本を手放して上演してみるという流れです。
台詞は覚えていないのでバイブスで演じます。自分の演技プランを用意するのではなく、共演者と一緒にゼロから場の空気を作る感覚でした。

相手の様子や起きたことを何でも面白がろう。WSの初めに示されたコンセプトですが、実際にやってみると想像以上に難しい。本当に難しかったです。
今自分はどんな風に見えてるのかなとか、変な声出ちゃったなとか、もうけっこう時間たったかなとか、その場にいながらついつい自意識に夢中になることもあってもどかしい。
でも逆に、稀にみんなの回路がバチっと繋がったときには新鮮な驚きがあります。
実際の舞台の稽古でも同じような経験がないわけではないけれど、確固たる台本や演出がない分、自分の居方も面白がり方もぜんぶ自分次第なんだということをひしひしと感じます。このあたりから、「プリズム」というWSのタイトルがどんどん生々しく思えてきました。

今振り返ると、WSの最中は、そういえばずっと何かが起こっていた気がします。そんなに大きなことではなくてもたとえば、真剣な台詞を喋っているのに虫が飛んでて邪魔だなとか、意識するだけでいちいちスリリングでした。
楽しく、無理せず、自由に……と長谷川さんは何度も口にされていましたが、当初なんとなくイメージしていた自由さ(=ラフさ・気軽さ)とはちょっと違って、私にとってはむしろ自由になる難しさや楽しさに触れるWSだったと思います。

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終始和やかな雰囲気で本当に楽しい時間でした。また参加してみたいです。
ありがとうございました!

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