【第7回:ネーム制作<蒼太れいじ>】シナリオ・ネーム掲載

蒼太嶺二

昨年12月から進行していた今回の漫画プロジェクトもついに大詰め!今回の完成した原作企画の中から選ばれた1作が、晴れて漫画化されることになります。 動画を視聴された皆さんも、選考に参加できるので、「この企画、キャラクターの漫画を読みたい!」と思うものに投票してください。 漫画化の権利を手にする挑戦者は誰?投票はコチラから!

『大江戸あまぞん堂』

登場人物
勢吉(6)(16)   あまぞん堂手代
利一(50)      未来から来たCEO、本名タイラー・リーチ

◆あまぞん堂
治兵衛(10) (20)  主人
番頭(45)      番頭
手代A
手代B
手代C
小僧A
小僧B
小僧C

◆河内屋
河長(24) (34)   河内屋主人
勢吉の父(44)
勢吉の母(29)

◆お客・その他
奥方A(30)     武家の奥方
千代(7)      奥方Aの娘
おっかさん(32)   長屋住人
梅(14)       おっかさんの娘
奥方B
奥方C
奥方D
大工

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河内屋・中(夜)
勢吉「おとっつぁん!おっかさん!」

 火災で燃える日本家屋の中。中央に倒れる勢吉の父(44)・母(29)。
 その側で泣き叫ぶ少年期の勢吉(6)。そこに助けに来た少年期の治兵衛(10)。
治兵衛「勢坊!急いで逃げないと!」
勢吉「えーん、えーん」

 焼けた梁が治兵衛の顔に落ちて来る。
治兵衛「うわぁー!」

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◯江戸全景(夜)
 火災で騒然とする江戸市中。遠くに江戸城天守閣が燃えている。半鐘が鳴り、人々が逃げ惑う。
 T「明暦3年(1657年)江戸」
町人「逃げろ、逃げろ」
町人「大川に向かえ」
N「江戸の町を焼き尽くす大火が発生、死者10万人の大惨事となった」

◯河内屋・中(夜)
  火災で燃える日本家屋の中。倒れる治兵衛、右目を負傷している。側で気遣う勢吉。
勢吉「治さん!治さん!」
治兵衛「勢坊…、おケガないですか?」

勢吉「おいらは平気、治さんこそ」
治兵衛「こんなのへっちゃらだ」

  勢吉をおぶる治兵衛。
治兵衛「さっ、急ぎましょう」
勢吉「兄さんは?」

◯河内屋・中(夜)
  勢吉をおぶる治兵衛。
 (回想)大八車数台で反物を運ぶ奉公人たち。これを指図する河長(24)。
治兵衛「若旦那は商品を運ぶのに手いっぱいで…、あたしに勢坊を託されました」
勢吉「ウソだ!」
勢吉M「兄さんはおとっつぁん、おっかさんより商品が大事なんだ…」

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◯あまぞん堂・外(朝)
  あまぞん堂外観。
T「大江戸あまぞん堂」
T「10年後」

◯あまぞん堂・座敷(朝)
  仏壇。鐘を鳴らす手。

  店員が全員集合し正座。治兵衛(20)と番頭(45)がこれに向かい合い正座。
番頭「先代の供養も終わり、いよいよ治吉…いや、治兵衛さまが新たな当主となられた。では旦那様、一こと」

◯あまぞん堂・座敷(朝)

 治兵衛、手にした巻いてある掛軸を小僧に渡す。

治兵衛「すまんが、これを」

小僧「へえ」
 小僧、床の間に掛軸を吊るす。掛軸『客利一』の脇に正座する治兵衛。

治兵衛「『客の利こそ一なり』、お客様の利益なくして店の利益はありません」

治兵衛「あまぞん堂の繫盛のために、大いにお客様を喜ばせてください」
 急に立ち上がる勢吉(16)。驚く周囲。

勢吉「よし!」

手代A「(驚いて)なんだ」


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◯あまぞん堂・玄関土間(朝)
 生気に満ち溢れた勢吉が直立。周囲には正座して座る店員たち。治兵衛と番頭がこれに向かい合い正座。
勢吉「あっしが旦那様を江戸で一番の商人にしてやるぜ」
治兵衛「頼もしいな、勢吉」
番頭「ふん!」
番頭M「ぺーぺーの手代がよく言うぜ」

  玄関から河長(34)が入って来る。これを見つける勢吉。
河長「じゃまするぜ」
勢吉「兄さん」

 玄関の土間でお辞儀する治兵衛と番頭。
番頭「これはこれは、河内屋の旦那様」

◯あまぞん堂・玄関土間(朝)
 わざとらしくお辞儀する河長、恐縮する治兵衛。
河長「二代目治兵衛ご襲名、おめでとうございます」
治兵衛「ありがとうございます」

 河長と治兵衛、対峙している。
河長「ちょっとした祝儀を持ってきたんだが運んでもいいか?」
治兵衛「もちろんでございます」
河長M「へへ」

◯あまぞん堂・外(朝)
 ずらりと並ぶ大八車に山盛りの反物が積んである。治兵衛が指示を出し、大勢の丁稚たちが反物を店内に運んでいく。治兵衛と番頭と勢吉が、不安気に見ている。
河長「よし、運べ!運べ!」
治兵衛「こ、こんなに頂くのは…」

 偉そうな河長。益々不安気な治兵衛。
河長「頂く?バカ言うなよ」
治兵衛「え?」

 偉そうな河長。驚く治兵衛。困る番頭。怒る勢吉。
河長「運搬の手間と費用が祝儀だぜ。原価だけで譲ってやるよ」
治兵衛「え!」
番頭「そんな…」
勢吉「汚えぞ!不良在庫を押し付けただけじゃねえか!」

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◯あまぞん堂・外(朝)
 河長、不敵に微笑む。
河長「不良在庫とは人聞きが悪い。どれもいい品だぜ」
 長兵衛、空になった大八車を曳く丁稚たちと共に立ち去る。困る治兵衛と番頭。怒る勢吉。
長兵衛「せいぜい気ばりな、二代目さん!」

◯あまぞん堂・座敷から玄関土間(朝)
 座敷には、山盛りに積まれた反物、これに埋もれて困惑する手代ABC。土間には、驚く勢吉、困る治兵衛と番頭。
手代A「どうすんだ、この反物」
手代B「足の踏み場がねえ」
手代C「なんとかしろ」
番頭「旦那様、返品しましょう」
治兵衛「それはできん。河内屋さんはウチの
遠縁。しかもあちらが本家」

◯あまぞん堂・玄関土間(朝)
 治兵衛と番頭が思案。その横で聞いている勢吉。
番頭「しかし…、半月後には京からの仕入品が届きます。このままだと置き場がありません」
治兵衛「そうなのか、うーん…。しかし、祝儀で頂いたものを返すのは……」

 勢吉、雰囲気を切り替える。
勢吉「考えたって仕方ねーです。とにかく、売って売って売りまくりましょう!」

 治兵衛、気持ちを切り替えて。
治兵衛「そうだな、よし!みんな、お得意様を中心に、売りに回ってくれ!」

◯あまぞん堂・外(朝)
 勢吉と手代ABC、風呂敷包みを背負って駆けだす。遠くに頭巾を被った利一(50)、これを見る。
一同「いってまいります!」

 『あまぞん堂』の看板を見る利一、目が光る。

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◯武家屋敷風の家・門の中と外
  門内に奥方B、門外に手代A。遠くに利一の姿。
N「当時の呉服商は訪問販売が当たり前」
奥方B「どなた?」
手代A「あまぞん堂です」

◯高家の屋敷・縁側から庭
 縁側に座る奥方C、布地の手触りを確かめる。手代B、その脇で布地の説明。利一、庭木の影から覗いている。
奥方C「あら、柔らかい」
手代B「絹のような柔らかさが伊勢木綿の特徴でして」
N「丁寧な商品説明で購入に導く」

◯高家の屋敷・座敷から庭
 座敷に座る奥方Dと手代Cが値段交渉中。利一、庭木の影から覗いている。
N「価格は交渉の末決定し、現金決済ではなく掛売(ツケ払い)であった」
奥方D「お高いんだろ?」
手代C「お安くしておきますよ」

◯千代の家・庭から縁側庭で羽根つきをする勢吉。
T「一方勢吉は…」
勢吉「おら!」
 庭で羽根つきをする千代(7)。
千代「えい!」
 縁側に座る奥方A(30)。
奥方A「しっかり!」
 勢吉と千代、庭で羽根つき。縁側に座る奥方A、これを見ている。利一、外壁から顔を出し覗いている。(一部しか見えないがハシゴを使っている)
勢吉「やー!」
千代「きゃー!」
勢吉「よし!」
奥方A「フフフ、お千代の負けね」
 不貞腐れて見せる千代。
千代「もー、大人気ないわね」
 勢吉が千代をからかう。千代、照れる。奥方A、これを微笑ましく見ている。
勢吉「あれあれ?お千代ちゃん、怒った顔もカワイイねー」
千代M「ポッ」
 縁側に座る奥方A、脇に立つ勢吉。
勢吉「じゃあ、奥様。あっしの勝ちなんで、約束通り…」
奥方A「いいですよ、五反頂きましょう」
 縁側で奥方Aと千代が布地を広げどれにするか選んでいる。外壁から覗いている利一が外で声を掛けられる。
奥方A「お千代、どれがいい?」
千代「えーと、えーと」
大工の声「おい」

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◯千代の家・外の側道
 道の左側が建設中の家屋、右側が武家屋敷の外壁。大工が利一に襲い掛かる。利一、ハシゴから落ちる。
大工「ウチのはしご、勝手に使ったな!」
利一「うわー!」
 道で大工が利一を襲う。利一、一方的にやられる。
大工「この野郎!盗人め!」
利一「違う、違う。ちょっと借りただけ!」

◯千代の家・縁側から庭
 外壁の外に大工と利一の声。縁側に座る奥方Aとその膝に座る千代、嬉しそうに微笑む。勢吉、庭を横切り門へ。
大工「こうしてやる」
利一「イテー。やめてー」
奥方A「楽しかった?」
千代「うん」
勢吉「お千代ちゃん、また遊ぼうね」

◯千代の家・外の側道
 道に倒れる利一を見つけた勢吉。
勢吉「おい!どうした?何ごと?」
利一「はしごを借りてこのお屋敷を覗いてたら殴られた」
 道に倒れる利一の様子を伺う勢吉。
勢吉「そうじゃなくて、その頭巾。何ごと?」
利一「あ、そっち」
 起き上がろうとする利一。心配する勢吉。
利一「これはちょっと色々あって、イテテ」
勢吉「痛むのか?動けねえのか?」
利一「はい」
 心配する勢吉。
勢吉「しょうがねえ、ウチで手当てしてやるよ」

◯道(夕)
 勢吉、利一の肩を抱いて歩いている。
 勢吉「で、どうして覗いてた?」
 利一「江戸の商売が知りたくて、あちこち見て回ってました」
  利一、目を輝かせる。
利一「あなたは、他の商人とは違う売り方をしていましたね」

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◯あまぞん堂・玄関の障子戸(夕)
 障子戸が開く。
勢吉の声「ただいま戻りました」

◯あまぞん堂・玄関土間から座敷(夕)
 反物に占拠されたため座敷に上がれず土間で佇む手代ABCと治兵衛、番頭。
手代A「お、勢吉」
手代B「遅かったじゃねえか」
 番頭が利一に気づき不審そうに訊ねる。周囲も不審げ。飄々と答える勢吉。痛みを堪え土間に座り込む利一。
番頭「ん?誰だ、その怪しいヤツ」
勢吉「道でケガして歩けねえってんで、連れてきた。名前は…」
利一「たいら…りいち…」
 土間に寝ている利一。水の入ったたらいを脇に置き、手拭いで足の負傷箇所を拭いてやる勢吉。
勢吉「そうそう、利一っつぁん。取りあえず
手当してやんねえと」

 呆れる番頭。
番頭「勢吉、この一大事に何やってんだ!」

◯あまぞん堂・玄関土間から座敷(夕)
 怒る番頭をたしなめる治兵衛。
治兵衛「まあまあ番頭さん、いいじゃないですか」
番頭「しかし…」
治兵衛「それで勢吉、どれくらい売れた?」
 手当をしながら答える勢吉。
勢吉「旦那様すまねえ、今日は15反しか売れなかった」
  驚く手代ABC。
手代ABC「15反!」
 番頭、手代ABCに訊ねる。手代ABC、弱弱しく答える。
番頭「お前たちは?」
手代A「10反」
手代B「8反」
手代C「5反」

 困り果てる番頭と治兵衛。
番頭「旦那様、どうしましょう。これじゃ全部ハケるのに1年はかかる…」
治兵衛「せめて半月で半分くらいにはしたいのだが…」

◯夜空(夜)
   月夜に犬の鳴き声。

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◯あまぞん堂・土間(夜)
 土間に座る利一と勢吉。
利一「ありがとうございます。もう大丈夫です」
勢吉「顔がまだだせ、頭巾を外してくれ」

 焦る利一。
利一「いやいやいや、頭巾は外せないので。本当にもう大丈夫ですから」
 勢吉と利一、話している。

勢吉「そうか、ならいいけど」

利一「ところで…」

◯千代の家・庭から縁側(回想)
 勢吉と千代、庭で羽根つき。縁側に座る奥方A、これを見ている。
利一N「勢吉さんは人と違う変わった売り方をしてましたね」
勢吉N「あの奥方さまは身体が弱いから、時々あっしがお千代ちゃんと遊ぶんだ。するってえと二人とも大喜びで…あっしも嬉しくて」

◯あまぞん堂・土間(夜)
 土間に座る利一と勢吉。
利一「それならもっと多くの人を喜ばせてみませんか!」
勢吉「どうやんの?」

◯千代の家・縁側(回想)
 奥方Aと千代が布地を広げどれにするか楽しそうに選んでいる。
利一N「この町の呉服商は大きな屋敷住まいの人を相手にされていますが…」

◯長屋の井戸端(想像)
 長屋のお母さんが子どもを負ぶって洗濯している。
利一N「長屋住まいのお母様だってきっと娘にいいモノを着せたいはず…」
利一N「お屋敷の母も長屋の母も娘を思う気持ちは同じですから」

◯あまぞん堂・土間(夜)
 土間に座る勢吉。突然立ち上がる利一。
勢吉「じゃあ、長屋を回れっての?」
利一「回らないです!ここで売るのです!そして、もう一工夫」

◯高家の屋敷・座敷(回想)
 座敷に座る奥方D。
奥方D「お高いんだろ?」
利一N「お屋敷の母でさえ呉服は高いと思っています。まして長屋の母なら手が出ないと思っているはず…」

◯あまぞん堂・土間から座敷(夜)
 土間に立つ利一。
利一「なので全品に値札を付けるのです。そうすれば安心して買い物してもらえます。
 利一と勢吉、興奮して土間で立ち上がって会話。
利一「しかも他店よりずっと安値にすれば…」
勢吉「売れる!」

 座敷の反物の山を見つめる勢吉と利一。
勢吉「これならいまよりは早く在庫がハケるな!」
利一「ええ!」

 勢吉、帰る利一を送り出す。
利一「それでは私はこれで」
勢吉「ありがとよ、利一っつぁん。また来いよ!」

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◯あまぞん堂・奥座敷・外観(夜)
 障子越しに3人の影。

◯あまぞん堂・奥座敷・中(夜)
 番頭と勢吉が言い争い。治兵衛、これを静観。
番頭「バカか!そんなのうまくいくわけねえだろ!」
勢吉「やってみねえと分からねえじゃねえか!」

 番頭、イヤミっぽく。
番頭「それに長屋の汚い連中が店に来るなんてキモチ悪い」
 勢吉、飄々と。番頭、イヤミっぽく。
勢吉「あっしらだって長屋の人たちとそんな変わんねっすよ」
番頭「お前はな」
 番頭、真剣に。
番頭「だいいち、一見客に売って、金の回収はできるのか?踏み倒されて大損くらうぞ」
 治兵衛、冷静に。番頭、諭すように。勢吉、熱っぽく。
治兵衛「うーん、確かに」
番頭「ほらみろ、旦那様も反対なさってる」
勢吉「そんなぁ!あっしは、この一大事を何とかしたくて…」

◯あまぞん堂・奥座敷(夜)
 治兵衛、親身に。
治兵衛「勢吉、ありがとう。しかし、このやり方ではお金を払ってもらえぬかもしれない」

 勢吉、打開策を思いつく。
勢吉「あ!お金をその場で払ってもらえばいいじゃねえか…」
 勢吉、楽しそう。治兵衛、嬉しそう。番頭、慌てて。
勢吉「掛売にしなくっても、現金払いに限ればいい。その分、うんと安値にすれば」
治兵衛「おぉ、それならやれそうだ」
番頭「いや!いや!いや!」
 番頭、必死。治兵衛、落ち着いて。勢吉、やる気満々。
番頭「私は反対ですよ、そんなやり方。それに今までのお客様もウチの商品を待っていらっしゃるのに」
治兵衛「わかりましたよ、番頭さん。ではまず勢吉だけにやらせます。いいな勢吉、明日から頼むぞ」
勢吉「はい!あっしにお任せを!」

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◯あまぞん堂・座敷
 反物の山の中に一人が何とか座れるスペースを作り、勢吉が覇気なく座っている。番頭、ぼそっと。
T「一日目」
T「しーん」
番頭「暇そうだな」
   
勢吉が覇気なく座っている。番頭、ぼそっと。
T「二日目」
T「しーん」
番頭「生きてる?」

勢吉が覇気なく座っている。番頭、ぼそっと。
T「三日目」
T「しーん」
番頭「死んでる?」
 番頭、イヤミっぽく。
番頭「他の手代は少しずつでも売ってるんだぞ。悪いと思わないか?」

 勢吉、目だけ動かし番頭を睨む。番頭驚き。
番頭「わ!動いた」

◯あまぞん堂・外の置き看板
 『現金払いに限る』『掛売御免』『全ての品に値札があり〼』と書かれた置き看板。この看板を見てるであろう女性の草履。

◯あまぞん堂・座敷から玄関外
 暖簾の間から店内をチラ見するおっかさん(32)と梅(14)。これに気づく勢吉。
勢吉「お!美人のお二人さん」

◯あまぞん堂・玄関・暖簾の外と内
 暖簾外のおっかさんと梅、不安気。暖簾内の勢吉、明るく。
おっかさん「いいのかい、入って?」
勢吉「どうぞ、どうぞ」

◯あまぞん堂・土間から座敷
 一人しか座るスペースのない座敷に梅が座り、おっかさんは立っている。二人で布地を広げ見る。脇で勢吉が明るく。
勢吉「どれでもお気軽に見ていただけますよ」

 布地を前身頃に合わせてみる梅、嬉しそう。おっかさんと勢吉、梅に見惚れる。
梅「おっかさん、これどう?」
おっかさん「あら、梅ちゃん、イイじゃない」
勢吉「うん、梅ちゃん、イイじゃない」

◯値札
 布地の端に『三百文』の値札。
おっかさんの声「お高いんだろ?」
勢吉の声「値札が付いてます」
おっかさんの声「え!お値打ちじゃない!」

◯ あまぞん堂・土間から座敷
 嬉しそうなおっかさんと梅。更に嬉しそうな勢吉。
おっかさん「お正月の晴れ着にいただくは」
勢吉「ありがとうございます」
勢吉M「よし!ついに売れた!」

◯あまぞん堂・外の置き看板
 『お正月の晴れ着あり〼』と書かれた置き看板が増設されている。
N「その後、少しずつ客足が伸びた。そして七日目…」

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◯あまぞん堂前から数軒先までの道
 お客さんがずらりと並んでいる。母娘、女子二人がコア層。男性も数名混じっている。この列を見て驚く利一。
T「梅ちゃん親子の口コミで…」

◯あまぞん堂・玄関土間から座敷
 座敷の反物は殆どなくなり、広いスペースができている。そこで勢吉、治兵衛、番頭、其々が接客をしている。小僧Aが反物を運んでいる。玄関から利一が入って来る。
利一「勢吉さん、凄いじゃないですか」
勢吉「利一っつぁん、いいところに。上がってよ」

◯ あまぞん堂・座敷
勢吉、治兵衛、番頭が相談。脇に利一。
勢吉「利一っつぁん、手伝ってもらえねぇか」
利一「私でよければ」
治兵衛「ではお願いできますか」
番頭「えー!こんな怪しいヤツにやらせますか?」

 勢吉と治兵衛、番頭を説得する。
勢吉「奥で小僧と一緒に値札付けをしてもらうのは?」
治兵衛「それがいい。どうです、番頭さん?」
番頭「は、はあ」
 治兵衛、利一に依頼。番頭、イヤミっぽく。
治兵衛「利一さん、やっていただけますか?」
利一「かまいませんよ」
番頭「金はださんよ」

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◯あまぞん堂・外(夕)
 手代ABCが外回りから帰宅。夕焼け空にカラす。障子戸を開く。
手代ABC「ただいま帰りました」
◯あまぞん堂・玄関(夕)
 手代ABC、驚愕。
手代ABC「えー!」

◯あまぞん堂・土間から座敷(夕)
 完全に元に戻った広々とした座敷。その中央で治兵衛、番頭、小僧ABCが息を上げて倒れている。勢吉と利一は壁にもたれている。これを土間から見ている手代ABC、驚いている。
手代A「座敷が」
手代B「元に戻ってる」
手代C「盗人でも入ったか?」
勢吉「売れたんだよ」
番頭「けど、まだ、奥にあるけどな」
 座敷に勢吉、利一、番頭、治兵衛、手代ABCが座っている。
勢吉「明日からはみんなで店で売りしましょうや」
番頭「勝手なことを言うな」
治兵衛「いや、みんなでやらないと手が回りませんよ」

◯あまぞん堂・座敷から土間
 寝てしまった小僧たち。これを囲むように番頭、治兵衛、手代ABCが座っている。勢吉と利一、気づかれないよう土間に向かう。
番頭「しかし、お得意様が…」
治兵衛「お前たちはどっちがいい?」
手代A「どちらでも」
手代B「番頭さんと一緒はイヤです」
手代C「小僧たち、寝ちまってる」

◯のし袋
 『お礼』と書かれたのし袋。
勢吉の声「利一っつあん、これ、旦那様から」
利一の声「いやいや頂けません」
勢吉の声「番頭さんに見つかる前に懐にしまっとくれ」

 土間で勢吉と利一がヒソヒソ話。
利一「では、ありがとうございます」
勢吉「ところで利一っつぁん、あっしにもっと商売のこと教えてくんねえか」

 土間で勢吉と利一がヒソヒソ話。
勢吉「それで年季が明けたら、一緒に店をやろう!」
利一「…」
 土間で勢吉と利一がヒソヒソ話。
勢吉「何だい?ダメか?」
利一「外で話せますか」

◯あまぞん堂・玄関(夕)
 勢吉、利一が外に出ようとしている。
勢吉「ちょっと利一っつぁん送って来るぜ」

画像15

◯市街地の道(夕)
 利一と勢吉、歩いている。
利一「返事をする前に、私の秘密をお話しておかなければなりません。ついて来てください」

◯橋(夕)
 橋を渡る利一と勢吉。

◯竹林・道(夕)
 利一と勢吉、歩いている。
勢吉M「どこまで行くんだ」

◯竹林(夕)
 利一と勢吉、立ち止る。
利一「ここならいいでしょう」
勢吉M「なんか怖くなってきた」

◯竹林(夕)
 利一、神妙に。
利一「勢吉さん、これからお伝えすることは、誰にも言わないと約束できますか?」

◯竹林(夕)
 勢吉、怖さを押さえつつ。
勢吉「約束する。だから早く、秘密とやらを話しておくれよ!」
 利一、首元で縛っている頭巾の結び目を解く。
 利一、頭巾がほどけ頭から布を垂らした状態になる。顔は暗くて見えない。

◯利一の右手(夕)
   手に持った布がヒラヒラとなびく。

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◯竹林(夜)
 満月の夜空。月明かりに照らされる利一の顔が西洋人の顔だと分かる。勢吉、驚愕。
勢吉「南蛮人」
 利一の顔。神妙な表情。
利一「私の名はタイラー・リーチ」

スクリーンショット 2021-03-10 22.13.49

◯竹林(夜)
 利一、月をみあげながら 
利一「未来のアメリカから来たCEOです」
 勢吉、困惑。
勢吉「未来?あめりか?しーいーおー?」

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