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フルリモート時代だけど想いのこもった手書きの寄せ書きを送りたい話

こんにちは、ドリーム・アーツのデザイナーです。
今回は、会社が組織である以上どうしても発生する「社員の転職・退職」に際したお話です。

今やデジタル当たり前・どんなに離れていても連絡を取り合おうと思えば簡単にできる時代です。
それにドリーム・アーツは現在フルリモート+自由出社の企業になったので、直に顔を合わせる機会はかなり減りました。
とはいえ、同じ場所・同じ組織で同じ目的のために働き、たくさんお世話になった仲間が新たな人生を歩み出すというのは、めでたいことながら同時にどうしても寂しさを禁じ得ません。

実はこのほど、デザインチームでもお世話になっている人の多かったTさんも、ドリーム・アーツ社員ではない新たな人生を歩み出すことになりました。
Tさんは、社内では総務的役割を兼ねることもある人事グループに長く所属していました。採用関連や社内広報、社内外のイベント運営など、全社員もれなくお世話になっています。
さっぱりした気性としっかりしたリーダーシップを併せ持つ堅実な頑張り屋で、機転もきく人物です。
そんな聡明な彼女ですから、当然自分の退職に際して発生するイベントのことはある程度予想していたと思います。

退職に際して発生しがちなイベントといえば、

  • 送別会

  • 花束の贈呈

  • プレゼントの贈呈

  • 寄せ書き

こんなところでしょうか。
こういった場面での寄せ書きといえば、トラディショナルなのは色紙に手書きでメッセージを書き込む手法ですよね。
現在では、場所を問わずに参加してメッセージを渡せる「オンライン寄せ書きサービス」も発達しています。
しかし、全社的にも個人的にもお世話になった相手ですし、せっかくだからなるべく強い思い出として残る寄せ書きにしたい。
しかも彼女はサプライズ好きなので、少し意外性のある贈り物がしたい。
ということで、今回はデザイナーのスキルをフルに活用することにしました。

■寄せ書きについての企画

  • 全社からメッセージが集まるはず
    →色紙ではなく、冊子にまとめよう

  • 各人の人柄や雰囲気を思い出せるようにしたい
    →メッセージは手書きのものを集めよう

  • 可能な範囲でリッチな完成度にしたい
    →ブックカバーをかけよう

■寄せ書きの制作方法(必要とした時間)

□メッセージ冊子

  • 白い紙にメッセージを書き、スマホで撮影してもらう(1週間)

  • 集めたメッセージをAdobe Photoshopで透過(1枚につき1〜3分)

  • Adobe Illustratorで冊子に編集し、PDF化(2日)

  • 一冊から製作可能な印刷会社にて製本していただく(特急便での発注のため入稿の翌営業日出荷、翌々営業日到着)

※私は使い慣れているAdobe製品に頼りましたが、WordやPowerPointに手書きメッセージの画像を貼りつけてPDFとして書き出す方法でも同じようなものが作れるはずです

□外装ブックカバー

  • 贈る相手のイメージに合わせてデザインを制作 ※同期のデザイナーに依頼(2日)

  • 自社にて印刷、裁断(1時間30分)

  • サイズを確認しつつ折り曲げ作業、冊子に被せる(10分)

出来上がったものがこちらになります。

世界に一つの寄せ書きブック

■制作から渡すまでの流れ

企画を頭の中でこね上げ、信頼している同期のデザイナー(あの記事この記事に出てくるWさんです)にデザイン制作をお願いしたあと、まずはメッセージの収集を開始しました。
最初は関係部署から広げる想定で依頼を投げていましたが、前述の通りTさんの影響範囲は広範に渡るため、最終的には「組織図を見ながらほぼ全社員(Tさんを除く)を一つのチャットに手動で召集して寄せ書きを依頼」という手段を取りました。
かなり強引な手段でしたが、Tさんに向けた熱い感謝のメッセージが予想以上にたくさん集まったので、結果的には正解だったと思っています。
あとうちの会社がこういう誰かのために何かをしたがっているときにアグレッシブな手段を使っても暖かく受け入れてくれる組織でよかったです。

メッセージが集まり始めたら、これをPhotoshopで透過します。
ちなみにPhotoshopでこのようなテキストや線画を透過する方法は以下になります。

①トーンカーブなどを駆使し、白黒のコントラストをはっきりさせる。合わせて不要な線やノイズは削除する
②[チャンネル]タブから[チャンネルを選択範囲として読み込む]を選択
③透明度を濃淡として白が選択された状態なので、[選択範囲を反転](Shift+command/Ctrl+i)
④新規レイヤーを任意の色で塗りつぶし

感じてください

こうして一つ一つクリーンアップし、透過データとして用意したものをページに配置していきます。
今回はIllustratorでPDFを作成しましたが、InDesignでもよかったかもしれません。気づいたらそのくらいの量にはなっていました。人望に怯えたのは生まれて初めてのことです。

同じころ、同期デザイナーからブックカバーのデザインが到着したので、そこに使われていた素材を流用して本文ページを構成し、メッセージと一緒に思い出に残りそうな写真(人事グループの集合写真、同期との写真、オフィスの風景など)を飾っていきました。
社員の肖像権については入社時に会社へ委ねるかきちんと確認されていることと、今回は個人的な贈り物であり商用利用に発展する可能性は無いことから、社内で撮影した写真や素材を多少寛容に使いました。

中身はこんな感じです

ページの編集が完了したら、PDFとして書き出し、いよいよ製本のために印刷会社へ入稿します。
今回は「製本直送.com」様へお世話になりました。
説明にならって4の倍数の本文+表紙・裏表紙のページ数でPDFを制作し、選択肢を適切に選ぶだけで簡単に入稿できました。
かなり慌てた進行になってしまい少しご無理を言った部分があるのですが、丁寧で優しい対応をしていただき、誠に感謝しています。

出来上がった冊子に寸法を合わせてブックカバーを印刷し、カッターで注意深く裁断。サイズ確認用のテスト印刷稿と本番稿を、安っぽくならないように半光沢のコート紙で印刷しました。
冊子サイズはA5、ブックカバーの印刷はA3サイズ内に収まるように制作しています。

実際に共有した自作のテンプレートがこちら

こうして完成したてほやほやの寄せ書き本と、他の同期たちが用意した花束やプレゼントを合わせて無事Tさんに渡し、ミッションコンプリートです。

完成したのは寄せ書きを渡す五分前でした。カバーをかけた冊子に重石を置き、ページが開いてこないよう落ち着かせる工程を取れなかったのは反省として次回以降に活かす所存です。

果たして、サプライズ好きなTさんは驚いてくれたでしょうか。
「メッセージで涙腺崩壊」「人に恵まれすぎた数年間だった」と言ってくれたので、社員みなさんの想いを届ける目論見は成功したのかなと思っています。

懐かしんでくれるといいな🐥

以上が、今回制作した寄せ書きのお話でした。
もしもあなたの会社の社員が新たな一歩を踏み出すとき、少しだけ手のこんだ寄せ書きを送ってみようという気になったら、ぜひ参考にしていただければと思います!