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恩師の会社訪問で気づいたこと

株式会社田中務補(カネスケ)商店のたなかななです。

弊社は2022年、現在の代表に世代交代が行われました。先代の創業者がそれまで58年間続けてきた会社。靴の中に内蔵している部品『シャンク』を日本で唯一生産している会社が、われわれ田中務補商店です。

58年続いた会社を継いだ現代表は、きっと交代当時大きなプレッシャーを感じていたことでしょう。われわれの『シャンク』は、靴の生産には欠かせないパーツです。ですから、日本で靴が作られている限りは供給を止めることはできません。しかし一方で、国内の靴生産量は減っています。

このまま惰性で事業を続けるのではなく、新社長は【変化しよう】【成長しよう】と決意を固め、今一度さまざまな角度から会社を見直す取り組みを行なっているところです。

先日、われわれのような中小企業の唯一無二の強さを引き出し輝く未来へ導く経営戦略の恩師・NNA株式会社の佐藤元相先生が、弊社へお越しくださいました。

多くの中小製造企業もそうであるかもしれませんが、われわれは長年培った技術と原材料にこだわり、品質の安定した商品を日々繰り返し生産し続けることに注力しています。毎日同じ業務が繰り返される中で、当たり前の生産風景の中から何か見出す知恵のようなものが薄弱化していたところに、佐藤先生が唯一無二のわれわれの強さについて数々言語化してくださいました。きっとわれわれに限らず、全国の製造現場でも共通の“現場が輝く魔法の言葉”となり得るのではないかと思い、このnoteに記録しておこうと思います。製造業に携わる方々の、何かのヒントとなりましたら幸いです。


質問から読み解く「みんなが知りたいこと」

まず、私が驚いたのは、滞在時間中に佐藤先生が投げかける質問の量です。
 - この長さの違いは何の違い?
- 品番によって地域の特性があるの?
- 新たな品番は増やしているの?
- それはなぜなの?
- 男性用と女性用の比率は?
- この機械は何年物なの?
- この部品はどこで使うの?
などなど、
工場をご案内している間、各作業工程・各機械・各製品についていくつもの質問が投げかけられます。

これって、嬉しいんですよね!なぜなら、私たちの仕事や製品や作業について「知りたい!」って思っているのが物凄く伝わってくるのですから。

そして、その質問に明確な答えを持っていない自分たちに直面するわけです。

靴の国内生産は、かなり細分化された分業で成り立っています。パーツの種類だけメーカーがあって、作業工程ごとに作業所が存在する。1種類の靴を生産するのに、かなりたくさんの人の手が加わっているのです。だからわれわれのようなパーツメーカーは、靴製造全体のことは案外知りません。知らなかったという事実に直面することで、「業界のことをもっと知ろうとしなければ!」→「知るために動こう!」となるわけですね。これぞ、佐藤先生マジック!!

先生の質問チョイスからも学ぶことは多かったです。われわれは今後、オープンファクトリーを開催する予定にしています。会社の工場を地域の皆様に開放するイベントです。今回いただいた佐藤先生の質問は、きっと会社へ訪れる人たちが同様に疑問にもつポイントだと思います。ですから、オープンファクトリー開催までには、どんな疑問にも答えられるよう早速業界のことを知るために動き出そうと意欲が湧いたのです。


ひとに気づきを与えるお宝ワード

佐藤先生は工場見学の間、ずっと目を輝かせていました。

私たちの工場では、プレスという機械でコード状の鉄材を打ち抜き、打ち抜いた鉄材を超高温に熱した電気炉で焼き入れし、硬度を高めるため焼きなまし、完成した『シャンク』を人の手で全量検品して箱詰めします。

私たちにとってそれらは毎日目にする当たり前の景色。しかし、佐藤先生にとっては、目を輝かせるほどに真新しい景色だったようです。そのひとつひとつの作業工程で発する言葉が、機械や人に魔法のような輝きを与えてくれます。

例えば、弊社が作りためてきた数千種類の金型をご覧になった場面で発せられたのが、「宝の山や!よく働いてきた。日本の足元を支えてきた大事な職人の技やね」

数千種類の金型を保管する棚


数十年間現役でハトメを製造する機械をご覧になって発せられたのが、
工場遺産やね!今時カム機構で作るのは珍しい。時間をかけて丁寧に作るものは強い!」

カム機構のハトメ製造機械

出来上がった『シャンク』を箱詰めする69歳の作業員を元気づけたお言葉が、「箱入り娘のチェック機能や!製品が語りかけてくれることを受けとってるんやね」

全量検品と箱詰めの作業。すべて人の手で行なっている

数々の機械や作業をご覧になったあと、「モノづくりのプライドを見させてもらった」とおっしゃる佐藤先生。

そして、先生が子ども時代に町工場が連なる地域で暮らしていた時のお話に至り、「プレスの音は町の心臓の鼓動のようやった。しかし、日曜日に町を歩くとその音が聞こえへん。まるで町が死んでいるように感じてたわ」と懐かしい情景を語るのを聴きながら、私の脳裏にはプレスの音が刻まれる町の風景が浮かんできたのでした。


再帰をかけて

工場を一通り見学された後、佐藤先生はわれわれに力強くこう言ってくださいました。

復活の狼煙をあげてほしい!

国産靴の生産量は減るばかりではありますが、佐藤先生の力強い応援のお言葉を聞いて、われわれにはまだまだやれることがある!と大きな勇気が湧きました。

佐藤先生はこうおっしゃいます。「業界をよくしていこうと思ったら"一緒にモノづくり"という考えが大事やで!」と。

われわれの先代は、生き残りをかけて戦略を立てながら業界の中で鎬を削ってきました。だからこそ、われわれはこれまで生き残ることに成功したのは事実ですし、先代の努力なくして今のわれわれはなかったことでしょう。しかし、今一度今までのやり方を見直し、時代に合わせて変化・進化していく局面を迎えたのだと感じています。

モノづくりのプライドを磨きながら、もっと業界全体という大きな視野をもち、自分たちにできることを業界の仲間と協力しながら進化させていく。そんなモノづくりをしていきたいと強く感じた1日でした。

モノづくりをしてきた人たち、そして未来の人たちへ向けて、会社の想いを発信していったらいい!」という佐藤先生のアドバイスに従い、早速こうして記録に残すことにした次第です。

最後までお読みいただきありがとうございました。このnote記事をご覧いただいて、何かしらのご興味を感じてくださいましたら、ぜひわれわれとコミュニケーションしてみませんか。よろしければ、ホームページのお問い合わせよりお気軽にご連絡ください。お待ちしております!
※ 現在弊社ホームページはパーティーグッズ『ドリームキャンドル』のご案内をしておりますが、靴や製造業に関するお問い合わせもこちらにて受け付けております。