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『レンブラントの身震い』

面白くて読みやすくて後半一気に読んでしまった!
幸せな気持ちでいっぱいな日曜日深夜1時。

筆者のマーカス・デュ・ソートイは数学者で、「対称性」が研究分野のようで、このTEDもすごく面白かった。説明が上手で、数学よくわからない私でもわかった気になる。

対称性は美とも関連が強く、『レンブラントの身震い』では、AIが音楽・詩・小説・戯曲をつくってきた例を紹介しながら、それらは人間の創造力を掻き立てるものなのか?今後AI自らが創造力を持つことができるのか?を考えていく本。

そこで紹介されていた、いくつかの実際の例
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①AI×Artグループ「obvious」エドモンド・ベラミー肖像画
浮世絵シリーズも発表してるんだけど、人物像はどれも「目」を中心とした顔のパーツバランスが崩れているのが興味深し。


②イアン・チェン BOB「Emissaries」
2017年の横浜トリエンナーレでイアン・チェンの作品を見た。AIが人間との交流のなかで変化していく、っていう設定が、人間らしい。

BOBは「Bag Of Beliefs(信念たちの袋)」の略で、AIの心と粘菌をベースとしたアニメーションの身体をもっている。永続的で不可逆的な老化を起こす生命のなかで、成長し、移動し、反応し、遊び、そして探索する。
「BOBは、10~15秒ごとに生活環境をサンプリングして、代謝や、現在の頭の数など、25個のパラメーターを保存します。BOBはそれらのスナップショットを撮って保存し、いわゆる『記憶』を作成するのです。あとで記憶を検索し、以前と比較して、物事が改善しているか悪化しているか、幸せか悲しいか、空腹か、食べ物で調子が悪くなったか、などを判断します」
実際のAIがそこにいることを意識しないまま、AIについて自分がどう考えているかを話しあえるようなインターフェースをつくりたいと思っていました。AIを人工的な生物形態として見てほしいのです。
制作過程で身体の重要性を学びました。AIの進化の方法や感じ方を決めるのは、AIが閉じ込められている身体なのです。


③Massive attack - Fantomアプリによる新曲発表
Fantomというアプリが、Apple watchと連携して自分の場所や心拍数などに合わせたRemixが作ってくれる。

・アプリ作成協力者、ロブ・トーマス(プログラマ)
わたしたちの感情と聴く音楽との対話、それらが互いにどんな影響を及ぼすか、に興味がある。


④2016年、AIVAというアルゴリズムが、機械として初めて音楽作詞者作曲者出版社協会から「作曲家」という肩書をもらった


⑤リュック・スティールズ 自分自身の言語を進化させるロボット
 @パリ SONYコンピューターサイエンス研究所

20体のロボットが互いに自分の体を使って作れる形を学び合い、最終的には人間には意味が理解できない動作を作り出し、1週間でロボット同士が独自のコミュニケーションするようになった。

コンピュータは規則に従っているだけで、規則に従っているからといって理解しているわけではない。例えば、アルゴリズムが「椅子」を経験したことがなければ、「椅子」という単語を完璧に使いこなすことはできないはずだ。言語は私達を取り巻く環境を低い次元に投影したもの。
だからこそ、肉体を持つ知性の問題が、現在のAIのトレンドと関係してくるのである。


④Beyond the Fence/2016年春 上演@West End Theatre
Propper Wryterというおとぎ話をつくるアルゴリズムが戯曲をつくり、Android Lloyd Webberというアルゴリズムが曲をつくった。

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マーカス・デュ・ソートイは、物語の力についても端々で語っている。

数学の定理の証明に一番近い創造はストーリーテリング、物語。数学の証明が物語だとしたら、コンピューターは一体どれくらい上手に物語を作れるのだろうか。
物語機械シエラザード-IFの主任研究者リードルは、アルゴリズムが自分のつくった選択肢の中から非人間的で奇妙な経路を選ばなかったことに心動かされた。「最近、物語の訓練を施したAIが精神に異常をきたしたように振る舞えないことが示すことができた。」
 もしもシンギュラリティに達した時、人間の運命は意識ある機械との相互理解にかかってくる。機械の描いた数学、絵、音楽、小説が機械のコードを解読するチャンスを、機械であるとはどういう感じなのかを知るチャンスを与えてくれるのである。

他者との共感力を高めること、ということから、この本を思い出した。多様な人種が集まるイギリスの学校では、他者との共感力を高めるために演劇が授業で行われている。


◎感想
AIもひとつのcreatureとして捉えてみれば、共生の道が見えてくるかもしれない、と思った。あと、この本を読んで知ったアルゴレイヴのライブ!
日本でも時々やってるみたいだから、いつか行ってみたい!!!

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マーカス・デュ・ソトイ『レンブラントの身震い』
2020/11/26発行 新潮社

〈目次〉
第一章 ラブレイス・テスト
第二章 創造性を作り出す
第三章 位置についてレディー、用意ステディー、碁ゴー!
第四章 現代生活の秘密、それはアルゴリズム
第五章 トップダウンからボトムアップへ
第六章 アルゴリズムの進化
第七章 数で描く
第八章 巨匠に学ぶ
第九章 数学の技量アート
第十章 数学者の望遠鏡
第十一章 音楽は、数学を奏でる過程である
第十二章 曲作りの公式
第十三章 ディープ・マセマティクス
第十四章 言葉のゲーム
第十五章 AIにお話を語らせよう
第十六章 精神の邂逅、わたしたちはなぜ創造するのか

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