女装回顧録 続・とおくのまち3

わたし史上で、もっとも光り輝いていた時代。レイカちゃん、女装スナックにデビューのお話~☆

まいるーむから歩いて数分、近所の美容院へ行って、髪をすこしカットしてもらった。
来週の木曜日にも来たいので髪のセットを予約しておく。
この日もヘアスタイルをセットしてもらって華やかになった。
いったん、まいるーむに戻ると、着ていく服をあれこれと迷い、
気になっていた女装スナックへ思い切って行ってみました。
この界隈では人気急上昇中のカラオケを主体としたスナックである。ふつうのカラオケ店ではなく、出会いを楽しむ側面もあったと思う。女装の人たちやそういう子たちを愛でる男性たちに大人気だった。

夜の九時前くらいに到着。ネットで調べておいた情報を頼りに、おそるおそる店内へ。
スタッフはオバサンにみえる化粧した男性がひとり、カウンターの中に立っていた。あまり愛想はよくない。
この人がママさんなのかなあと思っていたけれど、そうではなかった。
この日、ママは体調を崩して休みらしい。この人は従業員さんだった。
木曜日は暇なのかな。ほかに客はなく、何曲かカラオケを歌った。ただのカラオケボックスと変わりなし。
刺激的な出来事は起こらず、ちょっと空振り気味で帰った。

その数日後。午後四時、予約しておいた美容室でセットしてから、スナックへ行きました。 常連さんらしい方が、焼酎をさしいれてくれた。
デュエットしたり、写真撮ったりして、楽しかった。
夜遅くなったのでタクシーで帰った。ニューハーフに理解のある運転手だった。話しが弾んでご機嫌さんでまいるーむのあるマンションに到着した。

ある日、気分が鬱っぽくなってたのか、バイトを休んでしまった。
夜な夜な、スナックへ。
東京のおじさまとデュエット。三年目の浮気とかデュエットソングを中心に歌う。わたしは歌は苦手だったけれど楽しい時間をすごせたと思う。
タクシーをひろってもらって帰る。真夜中はとっくにすぎて夜明け前の帰宅になったけれど、ふつうの人間なら眠っているはずのこの不思議な世界は嫌いじゃない。

よく遊びに行った。夜になってから出かけるので、帰るのは深夜だった。
終電があるかないかの時間だったし、地下鉄の駅の通路とかはけっこう危険だった。
電車で帰った時も、店の客にしつこく誘われたり、泥酔して電車に座っていると痴漢に合ったり、ほんとにリスクだらけ。
安全のため、帰りはタクシーに乗ることがほとんどだった。
こういう飲み屋街からタクシーを拾うからか、運転手さんはたいてい、わたしのことをホステスさんだと思っているようだった。
せっかくなので、そういう設定で会話を楽しんだりして、店での楽しかったことの余韻に浸りながらマンションへと帰っていった。
「ねえちゃん、どこのお店?」って、わたしに興味を持ってくれた運転手さんが店に遊びに来たりとかそういうこともあった。
店では男性客がおごってくれることも多く、お酒代はほとんどかからなかったけれど、タクシー代がけっこうかかった。
まあ、これも楽しい想いでになっているけれど。


2月の終わりころだった。
バイトは休みの日。夕方から、いつものスナックへ遊びに行く。
夜も更けて、二時くらい、家に帰る。
Oさんという人に近所までというかマンションの前まで送ってもらった。

Oさんは、スナックの常連客のひとり。
ワイルドな雰囲気でちょっとガラがわるい。
オタクの話やアニメの話で気が合い、よくいっしょに飲んだ。
話しもろくにしないくせにいきなり体に触ってきたり、強引にキスしようとしてくる変な客もいるけれど、Oさんは、そんなことはまったくしなかった。
逆に変な客たちも、Oさんがいると、わたしにちょっかいを掛けてこなかった。
高校の頃、そんな友人がいたことをふと思い出す。
運動部のキャプテンをしていた背が高く怖そうなS君。なぜか妙に気が合って友達だった。
クラスが変わってからも、休み時間になると別のクラスの私の机のところへやってきては、飼っているペットや好きなテレビドラマの話をしてくる。修学旅行でもずっと一緒にいたなぁ。
私のことを好きなんじゃないかと思うほど、熱心にやってくる。実際は、怖そうで性格が時代遅れの不器用で、孤高でかっこいいけど、ほかに友達がいなかったのだろう。
穏やかな高校だったけれど、多少のイジメは流行っていた。私は物静かでおとなしいからいじめられてもおかしくなかったはずだけれど、背も高くケンカの強そうなS君がいつも側にいたからか、悪そうなやつが近づいてさえ来なかった。
毎日、現れるのに来ないと寂しくなった。
二人とも学級委員をしていたので、クラスの代表で集まる時は、顔を合わせた。ちょっと、うれしかった。
S君はこわそうな雰囲気があったから、私もどきどきしたんだと思っていた。
当時は、わからなかったけれど……今から思えば、なんというか、友情というよりは、あれはちょっとした恋愛感情だったのかもしれないね。
自分がずっと昔から、生まれた時から女だったら、きっと幸せになれた気がする。……けど、男子校だから、女の子だったらS君と出会ってないというオチ、(笑)。

3月のはじめ。 バイト、暇で楽勝!
夜、Oさんが、ケイタイにメールくれた。デートの約束した。

デートの日。夕方、待ち合わせ。
ゴハンを食べに行った。なんとデザートにケーキもあった、甘くっておいしい。
Oさんは、甘いのあまりすきじゃないみたい。
なんと、Oさんに、わたしがカメラが得意なことをばれてしまった。
ホームページに写真をのせていたのを見たのかなぁ。
七時すぎくらいに、スナックへいっしょに行った。
Oさんに店内で写真を撮ってもらたっり、パソコンでインターネットをみて遊んだりした。

3月、実家にいるとき、母に怒られて、頭とかをぬいぐるみで何度も叩かれた。女性ホルモンを使っているのかと問い詰められて、素直に答えたら、そうなった。とても、悲しかった。

気分を変えて買い物へでかける。 だいすきなブランド、レストローズ。
試着してみてくださいといわれた。けど、わたしを常連客って知ってる人かな? 地声でしゃべっていたし、背も高いし、女性としてパスしていたとは思えないけれど。たぶん、よく買いに来る客リストでもあるのかな。
実戦的なことをいえば、
女性の服や下着、コスメなどの買い物のとき、女性としてパスできたとかも大切だけれど、店員さんとなじみに信頼関係を気づいておくことがいちばんのコツかもしれない。初めて買い物したときに、店員さんのセールストークに乗ってあげて金払いをよくする。近いうちにまた買い物に行く。
化粧品売り場でも、時間ばかりかけてあまり買わない若い純女よりも
優遇されるようになります、笑。
その日は、なじみの店員さん、いなかった、休みかも。
白ワイン色ワンピ、シャンパーン色のキャミ、薄紫の細プリーツスカート。
たくさん買ってしまった。母に叱られた憂さ晴らしだもの。

美容院に寄って、傷んでいた髪にレイヤーを入れて
今風に軽やかな髪型にしてもらった。現代風にアレンジされたかんざしみたいなアクセサリをつけて、高い位置でハーフアップ。プロのホステスさんみたに仕上がって、気分も高揚する。今からお店に、出勤~、出勤~という感じ♪

Oさんとデートに出かけた。
食事をしてそのあと、スナックに寄った。同伴みたい、笑
その日は、このスナックのナンバーワンといわれるQ子さんがいらっしゃっていた。素敵なひとだった、憧れるなぁ。

翌朝というか、昼前。眠くてバイトに行くのがつらい。休みたいなぁ。
でも、現実と、もうすこし、向き合わないといけない・・・そんな気がした。
欠勤つづきだし、あまり寝てないし、バイトに行くのはつらいけど。
まだだ、まだ、止めるときではない。まだ。

たぶん、この頃のわたしは、もう完全に女だったと思う。身体はまだまだ男性ではあったけれど、ここの中はどっぷり女になってしまっていた。
よく恋に落ちたりもした。
バーで知り合った彼氏。オタクサークルの旧友や、女装の友達、バイト先の先輩とか。
色気づいた猫のようなものだったのかもしれない。
今までの灰色の世界とは打って変わって、花びらが舞い踊るようなまぶしい世界のなかで、なんだか、幸せの中に溶け込んでいた。


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