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2022年12月 読んだ本 プレゼン/壁/バルジ大作戦/聖書

2022年12月の読書記録

ロジカルプレゼンテーション

論理思考とプレゼン技術の本。コンサルやってる人なら読んだことがあるかも。最近、提案することが増えてきたので、改めて手に取ってみた。現場で汗を流した人が書いたんだなとわかる本。かなり実用的。コンサルやってるとパワポのフォーマットとか、過去の類似案件のを使うことが多くて、何となく「この案件にはこのフォーマット」ってのが身についちゃうと思うんだけど、「なぜこの案件の時にはこのフォーマットなのか」ってのが筋道通して説明されているので、結構勉強になる。オススメ。


壁とともに生きる 

テルマエロマエを描いた漫画家ヤマザキマリは、阿部公房に傾倒し、深い影響を受けたとのこと。私も阿部公房に高校生の頃にどっぷりハマった経験があるので、思わずこの本を手に手に取ってしまった。
読んでみて驚いたのだが、同じ作家が好きと言っても、好きな作品が全く違うのである。

ヤマザキマリが好きな作品として、かなりの紙面を割いて紹介するのは、飢餓同盟けものたちは故郷をめざす なのだが、私が好きな阿部公房の小説は密会である。しかし、ヤマザキマリは密会について「この作品を読んだときに、阿部公房の精神状態が心配になった」とボロクソに書いている。

ヤマザキマリには飢えの記憶がある。フィレンツェで画家を志していた彼女は、電気や水を止められて食べることにも困っていた。芸術は人間が生きていくために絶対に必要な「心のごはん」である。しかし時として、それを生み出す芸術家は経済的に貧窮してしまう。そんな時に阿部公房の文学に出会い、貪るように読んだ。飢えや、芸術を渇望しつつも芸術によって困窮してしまう理不尽などを経験した彼女は、同じような経験を描いた阿部公房の作品に引き寄せられたのは良く分かる。飢餓同盟やけものたちは故郷をめざすというような、阿部公房の作品の中でも「荒野」テイストが強いものが好きなのも、彼女の苛烈な経験ゆえだろう。

私は貧乏がそもそもムリなので、飢餓同盟やけものたちは荒野を目指すは全然好きじゃなくて、都市と思考の迷路に絡め取られていくような作品が好きなので、悪夢を煮詰めたような密会も好きなのだった。

同じ作者の作品を読んでも、読者の個人的な体験によって、こんなに受け止め方が違うのは面白い。このようなことが起こるのは阿部公房の作品世界の広さゆえだと思う。


バルジ大作戦

第二次世界大戦末期(1944/12〜1945/1)のナチス・ドイツ軍と、アメリカ軍を主体とする連合国軍との戦いを描いたノンフィクション。長らく絶版だったのが早川書房から復刊された。分厚いし(704ページ)高いし(5,720円)なんだけど、こんな面白そうなの買っちゃうよね。結果は知っているけど、地図と首っぴきで手に汗をかきながら一晩で一気読みした。めちゃくちゃ面白いんだけど、最後の方に「アメリカ兵は冬の戦い方を覚えた、ドイツ兵を憎むことを覚えた。だから勝利した。」みたいな一文が出てきて、いやいやそれは違うよってなった。厳寒期のサバイバル術や、憎悪を覚えたから戦争に勝てるわけがないのであって、ドイツが負けたのはアメリカに経済力で大幅に劣っていたからです。鉄と油と兵站に潤沢に資金を注ぎ込めるアメリカに、統制経済が限界に来ていたドイツが勝てるわけがなかった。この辺はアダム・トゥーズの「ナチス 破壊の経済」を読むと良くわかる。まあ、最後の結論のガッカリ部分を除いては、すごく読み応えがある本だった。



聖書入門

西洋絵画に最近ハマっていて、オールードアートは宗教をモチーフをしたものが多いので、ちょっと勉強したいなあと思っていた。そんな時にたまたま本屋で目にしたこの本。旧約聖書と新約聖書の両方に触れていて、それが映画、音楽、絵画にどう影響を及ぼしたか解説してくれてる。

キリスト教美術史

ローマ帝国が東西に分かれて東はビサンティン、西はロマネスク→ゴシック→ルネッサンス→バロックと美術も2大潮流に分かれたのですよ、と解説した本。自分は西の方しか見てなかったことが分かった。カラー版で眺めてるだけでも楽しい。

旧約聖書がわかる本

小説家としての奥泉光が好きなので読んでみた。神学者の並木浩一と小説家の奥泉光が対談式で旧約聖書について読み解いていく本。1,397円でこんな教養爆弾みたいな本が買えちゃう日本すごくない?学びの海で溺れ死にそうになった。買うべし。