台場 時生

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AI時代の資本論 AI革命の始まりは資本主義の終わりを意味する

「人類の一生」シリーズの3冊目をやっと書き終えました. 気付けば執筆に8年もかかってしまいました. 1作目の科学技術・哲学編「人工超知能が人類を超える」(日本実業出版社),2作目の宗教編「科学仏教」(Amazon KDP)につづいて今回は経済・哲学編です. 今回の「AI時代の資本論 AI革命の始まりは資本主義の終わりを意味する」はAmazonの電子書籍(キンドル)のみでの出版契約(KDPセレクト)なので,しばらくnoteの方には載せられませんが,Amazonのキンドルス

    • 科学仏教(9)菩提樹の下でブッダは何を覚ったのか?

      ◆ まとめ ◆本書では、科学技術と仏教を融合する形で釈迦仏教に対するあらたな解釈を提示し、さらに菩提樹の下で開いたとされる「釈迦の覚り」についても新たな説を示しました。  もちろん本文中でも述べたように、このような覚りの内容が歴史的事実だ、などと主張する趣旨はありません。あくまでこれは科学仏教という立場から見た釈迦の覚りに対する解釈です。  しかし、一方で私たちは、「釈迦は何を覚ったか?」という何処を探しても答えの見つからない問いに対し、「謎」という言葉で美化しながら25

      • 科学仏教(8)菩提樹の下でブッダは何を覚ったのか?

        ◆ 般若心経 ◆ 本書の最後に、日本でもっともよく知られているお経の一つである般若心経について述べておきます。お経に全く興味がない人であっても、この中にでてくる「色即是空、空即是色」という一節はご存知の方が多いと思います。お経というと葬式や法事の際に聞くことが多く、どこか暗いイメージを伴います。実は私も、般若心経の内容を知るまではそのような暗いイメージしかありませんでした。  しかしその訳をみればわかりますが、般若心経は非常に哲学的な内容を含んでいて、日本人がもつ無常観とも

        • 科学仏教(7)菩提樹の下でブッダは何を覚ったのか? 

          ◆ 覚りと悟り ◆ ところで、「さとり」を漢字で書く際「覚り」と「悟り」の二種類があります。これまで本書では主に「覚り」という漢字を用いてきましたが、この二つはどのように違うのでしょうか。  仏教関連の書籍を見わたしてみると「覚り」と書かれている場合と「悟り」と書かれる場合の両方があります。またさらには平仮名で「さとり」と書く場合もあります。各々の本の中では統一されていますが、どちらを使うかは本によってまちまちであり、著者の考えや慣習によって何れかが選ばれているようです。

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        AI時代の資本論 AI革命の始まりは資本主義の終わりを意味する

          科学仏教(6)菩提樹の下でブッダは何を覚ったのか? 

          ◆ 釈迦の覚り、科学仏教的解釈 ◆ ここでは「釈迦の覚りの内容は何だったのか」という謎に対して、本書としての仮説を提案します。  もちろん先に述べたように釈迦が覚った本当の内容は、2500年という時の中に消え去ってしまい、今となっては誰も真実を知ることはできません。したがってここで述べる主張に関しても、歴史的・文献的な根拠はありません。あくまで後世の弟子達が行ったように、「釈迦の覚ったのはこのような内容だったのではないか」という推論に基づいて仮説を述べる、というものです。(

          科学仏教(6)菩提樹の下でブッダは何を覚ったのか? 

          科学仏教(5)菩提樹の下でブッダは何を覚ったのか? 

          ◆ 科学仏教 ◆ 前章まで釈迦仏教について解説をしてきました。ここからは釈迦仏教とは異なる新たな仏教について述べていきます。  釈迦が生きていた紀元前5世紀と私たちが生きている現代とでは、人々の生活環境や人生観も大きく異なっています。釈迦の時代に即して説かれた教えを、今でもそのまま使っているというのでは、当然時代に合わない部分も出てきます。現代は科学技術が高度に発達した時代なので、それにマッチするように、釈迦仏教の教えも再定義・再解釈される必要があると思います。そこで本章で

          科学仏教(5)菩提樹の下でブッダは何を覚ったのか? 

          科学仏教(4)菩提樹の下でブッダは何を覚ったのか? 

          ◆ 釈迦の覚り ◆ 釈迦が何を覚ったか、ということについては多くの経典や仏伝に記載されています。しかしその内容は文献によってかなり異なっています。そのため、単純に「釈迦の覚りの内容はこうだ」と決めつけることはできません。  そこで本章では、釈迦の覚りの内容に関する様々な意見・見解を紹介していきたいと思います。中でも特に仏教を専門とする研究者の人達がどのように考えているのか、という点を中心にみていきます。  まず一般によくいわれている内容は「釈迦は十二縁起を覚った」という

          科学仏教(4)菩提樹の下でブッダは何を覚ったのか? 

          科学仏教(3)菩提樹の下でブッダは何を覚ったのか? 

          ◆ 釈迦の教え ◆ 本章では、仏教の教義についてみていきたいと思います。まず始めに釈迦の教えを簡単に一言で表現するならば、次のようになります。  「煩悩を無くすことによって苦を克服し、心の安らぎを手にいれる」 これが仏教の核となる主張です。ここで煩悩とは、様々な欲望であったり、怠慢やおごりであったり、物事に対する執着といったものを指します。煩悩は細かく分類すると百八つあるとも言われています。ちなみに大晦日の夜にお寺では除夜の鐘をつきますが、鐘をつく回数が108回なのもこの

          科学仏教(3)菩提樹の下でブッダは何を覚ったのか? 

          科学仏教(2)菩提樹の下でブッダは何を覚ったのか? 

          ◆ 釈迦の生涯 ◆ 釈迦は紀元前500年頃、現在のインドとネパールの国境付近にあった小国、釈迦族の王子として生まれました。本名は「ゴータマ・シッダールタ」といいます。本書では一般によく用いられる「釈迦」の呼び名を使うことにします。釈迦は他にも「ブッダ(仏陀)」、「釈尊」、「釈迦牟尼」など様々な呼ばれ方をします。ちなみに「仏陀」とはもともと「目覚めた人」という意味で、釈迦の固有名詞ではなく、悟りを開いた人をさす一般名称です。  釈迦の生誕については、これにまつわる有名な伝説が

          科学仏教(2)菩提樹の下でブッダは何を覚ったのか? 

          科学仏教(1)菩提樹の下でブッダは何を覚ったのか? 

          はじめに 本書では仏教を完成させることを目標とし、科学と仏教を統合した「科学仏教」という新しい仏教について紹介します。その中で、  (1)菩提樹の下でブッダは何を覚ったのか?  (2)なぜ仏教のゴールは幸せのない「涅槃」なのか?  (3)般若の智慧とは何を意味するのか?  (4)「覚り」と「悟り」は何が違うのか? といった仏教が抱える根本的な疑問に対し、明確な解釈を提示していきます。  また,本書は拙著「人工超知能が人類を超える」の付章として書かれたものです。本来であれ

          科学仏教(1)菩提樹の下でブッダは何を覚ったのか? 

          第1章 マルクス人物伝(8)

          マルクスの生涯のまとめ以上がマルクスの生涯です.本章の最後に彼が行った3つの業績をより具体的に示しておきます. (1)哲学面:ヘーゲル,フォイエルバッハ批判から史的唯物論を確立 (2)経済学面:経済学による資本主義批判,資本論の執筆 (3)実践的活動面:新聞による言論活動,共産主義者同盟等による社会主義・共産主義運動 (1)の哲学面では,人間社会がどのような構造で成り立っているかを人類史的な視点から明らかにし,また,人類の過去から未来へとわたる発展の道筋を明らかにしました.

          第1章 マルクス人物伝(8)

          第1章 マルクス人物伝(7)

          イギリスでの研究生活なんとかイギリスに逃れたマルクスでしたが,家計は困窮を極めました.家具や洋服など売りに出したり,差し押さえにあったりしながらもどうにかやっていくという状態です.そのような生活がたたってか,イギリスで生まれた次男と三女,また8歳になった長男も病気で失ってしまいます. 不幸続きのマルクスでしたが,仕事面では経済学の研究にまい進するようになります.大英博物館の図書室に連日のように通いつめ,経済学の文献調査に没頭する日々を送りました.  そして,移住から10年

          第1章 マルクス人物伝(7)

          第1章 マルクス人物伝(6)

          共産主義者同盟の結成と革命の勃発1846年,マルクスとエンゲルスは他の仲間とともにブリュッセルに「共産主義通信委員会」を設立します.翌1847年には,ドイツ人の共産主義者の秘密結社「正義者同盟」と合併し,500名程度の成員からなる国際秘密結社「共産主義同盟」が結成されます.この同盟は,プロレタリア革命によって共産主義社会を構築することを目的としていました. マルクスとエンゲルスは,この組織の綱領として『共産党宣言』を執筆します.なお,この『共産党宣言』の内容についても,後の

          第1章 マルクス人物伝(6)

          第1章 マルクス人物伝(5)

          経済学,社会主義の研究を開始この時期からマルクスは研究や活動の対象を,哲学から経済学や社会主義・共産主義運動へと広げていきます. というのも,ライン新聞でジャーナリストとして様々な時事問題に触れるうちに,哲学だけに頼って啓蒙的に社会を変えていくには限界があることに気づいたからです. 例えば先に示した木材窃盗取締法に反対する記事ですが,この記事をライン州議会の議員が読んだとしても「確かに貧しい人を守らねばならない,よってこの法案は廃案にしよう」とはならないでしょう.「そう言

          第1章 マルクス人物伝(5)

          第1章 マルクス人物伝(4)

          パリで『独仏年誌』を発行1843年,青年ヘーゲル派のアーノルド・ルーゲからの誘いを受け,雑誌『独仏年誌』を発行するためにパリに移ります.検閲の厳しいプロイセンを逃れ,パリで発行しようと画策したわけです. 『独仏年誌』の創刊号にはマルクスの2篇の論文「ユダヤ人問題によせて」と「ヘーゲル法哲学批判序説」が掲載されています.この中でマルクスは「宗教は民衆のアヘンである」という有名な言葉を記しました.これはどういう意味かというと,「民衆は苦しい現実の世界から逃れるために,宗教という

          第1章 マルクス人物伝(4)

          第1章 マルクス人物伝(3)

          大学を卒業したマルクスは,プロイセンのライン地方で発行されることになった新たな新聞「ライン新聞」の編集長の職に就きます.このライン新聞においてマルクスは,ドクトル・クラブの哲学討論では触れることのなかった,より実際的な社会問題と日々関わるようになります.新聞の編集を通して,哲学理論から実際問題へと軸足を移したマルクスは,様々な問題に対して論説記事を書き,啓蒙的に社会を改革しようと試みます. そのような中,ライン新聞に掲載した有名な論文記事として「木材窃盗取締法に関する討論」

          第1章 マルクス人物伝(3)