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人生初の免許更新で感じた違和感

こんにちは。自動車ライター/インストラクター/ジャーナリスト/ドラマーの齊藤優太です。

2024年1月9日、人生初となる運転免許の更新に行ってきました。

私が普通自動車第一種運転免許の交付を受けたのが19歳。普通免許取得以降、別の免許を取得し続けてきたので、14年目にして初めての更新ハガキが届きました。

そんな初の免許更新で感じたことが3つあったので、備忘録もいう意味も込めて記事化します。


映像の内容について

今回受けた講習は、優良運転者(いわゆるゴールド免許)の講習でした。そのため、講習時間はわずか30分です。限られた時間の中でどのような講習がされるのか気になっていると、映像を見る時間が約15分、講師による授業形式の講習が15分とのことでした。

いざ講習が始まると、まず映像を見せられました。講習時間の半分を占める映像がどのようなものなのか、1つひとつのシーンをよ〜く見ていました。

映像の内容は、事故の危険性や被害者遺族のインタビュー、ドライブレコーダーの映像による事故の事例、運転支援システムの作動映像となっています。

そして、約15分の映像の中で気になったことが、運転の基本である「認知・予測・判断・操作」、運転支援システム、ドライブレコーダーの映像の車両についてです。

運転の基本「認知・予測・判断・操作」

運転の基本として教習所で学ぶのは「認知・判断・操作」の繰り返しということです。しかし、教習指導員の資格を持つ私ですら、この3つのプロセスのループに違和感があります。

免許更新の映像では、「運転は、認知・予測・判断・操作」の繰り返しです」と言っていました。まさにこのとおりだと思います。

どれだけ認知ができていても、この先に起こることを予測できなければ、正しい判断(ここでの正しい判断とはより安全な運転のことを指します)や適切な運転操作はできません

また、予測のパターンも1つではなく、複数のシチュエーションを予測することが大切です。これらを教習や講習では危険予測と言われることがあります。

この危険予測こそ、車両を運転する際に最も重要といってもよいでしょう

つまり、運転(一般道路および高速道路を含めた公道)するときにポイントとなるのは、認知と予測ということです。この2つができなければ、安全な運転ができないといっても過言ではありません。

初心運転者やペーパードライバーに多い失敗パターン

初心運転者やペーパードライバーに多いのは、認知している視野が狭く、目の前に何かが現れてから対処しようとするために、対応が遅れたり驚いたり、怖い思いをしたりするというパターンです。

車やバイクなどの車両といわれる乗り物は、人が全力で走って出せる速度を大幅に上回る速さで走ります。そのため、人間の能力の限界を超えた領域で判断や対処をしなければなりません。

人間の身体能力を超えた速さを出せる乗り物に乗っているという自覚を持つだけでも車両を運転する際の心構えが変わるはずです。

人間の身体能力を超える速さで走る乗り物を操るためには、より広い視野やいち早く違和感を見つける洞察力が必要となります。

高齢ドライバーに多い失敗パターン

一方、高齢ドライバーによる事故は、認知・予測・判断ができていても、行動が伴っていないというパターンが多くなります。

正しい行動が伴わなくなるのは、加齢とともに衰える体力や瞬発力の低下が主な原因です。

この加齢による身体能力の低下は、人によってさまざまなです。

あっという間に身体能力が低下してしまうこともあれば、身体能力の低下が緩やかな人もいます。この違いは、それぞれの生活環境や基礎体力の違いなどさまざまです。

少しでも長く運転したいのであれば、基礎体力を低下させないようにすることと、瞬発力を低下させないことが大切だといえるでしょう。

運転支援システムについて

次に、免許更新の際に見た映像で気になったのは、運転支援システムについてです。

過去の記事でも触れたことがありますが、運転を支援するサポート機能であるにも関わらず、「自動ブレーキ」と紹介されていました。

「自動ブレーキ」や「自動運転」と聞くと、車が何とかしてくれると考えてしまう方もいるでしょう。

しかし、運転支援システムの詳細について見てみると、多くの運転支援システムの運転の主体は運転者にあります。つまり、何かあったときや事故を起こしたときの責任は、運転席に座っているドライバーにあるということです。

運転支援システムを使うときは、運転のサポート機能であること、何かあったときはドライバーに責任があることを忘れてはなりません。

そして、免許更新の映像で紹介されていた運転支援システムを見て気になったことがもう1つあります。それは、成功例ばかり映像化されているということです。

運転支援システムは、道路環境や天候など、さまざまな理由によって正しく作動しないことがあります。このことについては、文字や音声で伝えているものの、映像化されていません。

免許更新の際に見る映像に、運転支援システムが作動しない例も入れるべきではないかと私は考えます。なぜなら、運転支援システムの機能の限界を視覚的に伝えることで、運転支援システムの正しい使い方が身につくと考えているからです。

実際、運転支援システムを過信して事故に発展したケースは多くあります。NEXCOや一般ドライバーから提出された証拠映像を集めて、講習時に見せることで運転支援システムの正しい使い方を学ぶことができるでしょう。

この映像変更はすぐにでもできることです。各都道府県警察、公安委員会ならびに国家公安委員会の方々、早急に改善お願いいたします。

ドライブレコーダーの映像のほとんどがタクシー

最後に、免許更新時に見たドライブレコーダーの映像の多くがタクシーでした。

良くも悪くも運転頻度が多くや運転時間が長いタクシードライバーが事故に遭う危険性が高くなるのは事実です。そのため、タクシー会社の協力によってドライブレコーダーの映像を講習の映像に組み込むことが多くなるのは理解できます。

しかし、警察であれば、一般ドライバーから提出された映像を講習の映像として使うことも可能でしょう。事故が身近にあることを伝えるためにも、一般ドライバーから寄せられた映像、運転しているドライバーの年齢層、事故の相手の年齢層などを明確に伝えた方がよいのではないでしょうか。

交通事故は、映像やニュースで見てもどこか他人事のように感じやすい傾向があります。しかし、いつ、どこで、事故を起こすかは誰にも予想できません。そして、予想外の事故が発生することも珍しくありません。

自分だけでなく他人の命を守るために行われる運転免許の更新や講習。このような機会だからこそ、事故が身近にあることを伝えるべきなのではないかと私は考えます。

現状のままではほぼ無意味ともいえる免許更新の講習

厳しいことをいいますが、今現在の免許更新時の講習内容はほぼ無意味といっても過言ではありません。

なぜなら、運転の基本として重要なことを強調していなかったり、運転支援システムの成功例ばかり見せたり、同じ免許の種類の事故映像ではなかったりするためです。

交通事故は道路に出た瞬間に起きるかもしれません。大袈裟な言い方に聞こえるかもしれませんが、道路に出るということは、交通事故の危険と隣り合わせということを忘れてはなりません。

言い換えれば、道路を利用するということは、交通事故の当事者になる可能性があるということです。特に車両として扱われる自転車・電動キックボード・原付・二輪車・自動車などは、加害者になる可能性が高い乗り物であることを常に自覚していなければなりません。

また、運転支援システムや先進的な技術を利用する際には、正しい使い方を確認し、作動しない可能性もあるということ理解した上で使う必要があります。

少し話が変わりますが

スポーツをはじめとする競技の世界では、ルールが厳格に定められており、ルール違反をするとペナルティがあります。

競技の世界と同じように、ルールを守り、違反したらペナルティがあるというのは交通社会も同じです。

競技の世界と交通社会の大きな違いは、人の命を奪ってしまうリスクの高さです。

競技の世界も交通社会も不慮の事故によって命を失ってしまうことはあります。

不慮の事故より酷いのは、ルール(モノの使い方やそれぞれの規則など)を守らず、身勝手な行動によって起こってしまった事故です。

使い方を守らず、ルールを破って、身勝手なことをして自ら命を落としてしまうのは自業自得だと言われるでしょう。

しかし、たった1人の身勝手な行動によって他人の命を奪ってしまうと、取り返しがつかないことになります。取り返しがつかないことになる前に、自分の運転行動を見直し、ルールや変更された点を再確認することが大切だと言えるでしょう。

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