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【必読】車の死角と最適なポジション

こんにちは。自動車ライター/インストラクター/ジャーナリスト/ドラマーの齊藤優太です。

さて、今回は、見かけることが増えてくるのと同時に事故や危険運転が多発している電動キックボードにも関わるお話です。

また、今回の内容は、電動キックボードだけでなく、自転車やバイク、そして歩行者にも知っておいてもらいたい内容となっています。

自分の身を守るためにも、ぜひ読んで、学んで、知って、実践してみてください。


見えない部分

歩行者、自転車、電動キックボード、原付・バイク、車には、それぞれ見えていない部分があります。

一言で言えば「死角」です。

ただし、死角は、それぞれの立場で異なります。

では、それぞれの立場における死角はどこなのか紹介します。

歩行者

歩行者の場合は、視野角=見えている範囲、視野角以外=見えていない範囲となります。

一般的に人の視野は、片目につき上方に約60度、下方に約75度、鼻側に約60度、耳側に約100度。つまり、両面にすると、水平視野が約200度、垂直視野が約135度となります。

(参考:京都府立医科大学付属病院眼科

ただし、これはあくまでも視野角の話。実際に人の目で「見えている」と認識できる範囲は、もっと狭いのです。

この「見えている」と認識できる範囲や、目から仕入れた情報を処理できる範囲は、「有効視野」と言われます。

人の有効視野の範囲は、水平方向が両目で約60度(片目で30度)、垂直方向に40度(上方20度、下方20度)程度です。

出典元:「早めにつけよう思いやりライト」より

このように、実際に意識的に「見えている」と認識できる範囲や情報の処理ができる範囲はかなり狭く、視野角に入っていても認識できていないことの方が多いのが実情です。

また、歩行者としての視野は前方のみとなっています。そのため、歩行者の死角は、左右と後方の広範囲にわたることがわかります。

意外にも、歩行者の死角は多いのです。

参考研究資料:日産自動車

自転車

出典:PAKUTASO

自転車の場合は、歩行者と同様に、有効視野が見えている部分、その他が見えていない部分(死角)となります。

また、歩行者より速度が速いため、急に有効視野に障害物が入ってきても、即座に止まったり避けたりすることは難しいでしょう。

例えば、自転車で道路を走行しているときに、突然飛び出してくるものがあった場合、視野角に入ると何らかの動きを感知し、有効視野に入ると飛び出してきたものを認識し、その後にブレーキをかけたり避けたりするという動作に移ります。

飛び出してくるものが視野角から有効視野に入るまで数秒かかると仮定しても、歩行者以上の速度で走行する自転車を停車させたり避けたりするのは、ほぼ無理だと言えるでしょう。

電動キックボード

電動キックボードの場合、歩行者や自転車と同じように、有効視野の範囲が見えている部分、それ以外が死角となります。

また、電動キックボードは、「特定小型原動機付自転車」と表記されるように「原動機付自転車」のひとつであるものの、原動機付自転車(いわゆる原付)のようにミラーがなくても問題はありません。

出典:国土交通省

そのため、歩行者や自転車と同等の視野となり、死角も多く発生していると言えるでしょう。

原付・バイク

原動機付自転車(原付)や自動二輪車(バイク)は、ミラーが装備され、ヘルメットの着用も義務となっています。

そのため、後方視界は、歩行者・自転車・電動キックボードより見やすくなっているでしょう。ただし、見やすくなっているだけであるため、運転者が見ようとしなければ、ミラーの役割を果たしません。

なぜなら、人の有効視野は水平方向に約60度、垂直方向に約40度しかないからです。

また、フルフェイスのヘルメットを着用した場合、さらに有効視野が狭くなる可能性があります。必ずしも有効視野が狭くなるというわけではありませんが、頭部を保護するために頭よりひとまわり大きいものを被るため、ヘルメットによる死角が増えることは避けられません。

ヘルメットは、命を守るためにも必要なアイテムです。そのため、装着するときは、正しい方法で確実に着用しましょう。

さて、二輪車の死角は、次の画像のとおりです。

出典:ホンダ

二輪車に乗る人の視野は緑の部分です。つまり、基本的に前方のみとなります。
そして、視線をミラーに向けると青の部分を見ることができます

注目すべきは、死角となっているグレーの部分。このグレーの部分に障害物などがあると二輪車の運転者は気づかないということになります。

言い換えれば、二輪車と車両等が並列に並ぶと運転者は気づかないということです

乗用車

乗用車の場合、二輪車と同じように基本的に前方の有効視野の範囲が見えている部分となり、それ以外の部分は基本的に死角です。

また、乗用車には左右のミラーとルームミラーが取り付けられているため、後方視界がサポートされています。ただし、このミラーにも映らない範囲があります

こちらの画像が乗用車の視界と死角です。

出典:ブリヂストン

この画像は運転者の前方視界、ドア(左右の)ミラーとルームミラーに映る範囲、運転者の死角を表しています。

ただし、車にはドアやボンネットなど、物理的に視界を遮る部品がいくつもあります。

前後左右の物理的な死角は次の画像のとおりです。

出典:茨城けんなん自動車学校

画像にもあるとおり、車のすぐ横や真後ろなどは、運転席から見えていません。そのため、黄色の範囲内に人や物があっても運転者は気づくことができず、何もないも勘違いして動き出す可能性があります。

また、後方の死角は画像では約7~8mとなっていますが、車の形や運転者の座高などによって大きく変わります。後方視界が良くない車や着座位置が低い車の場合には、後方が10m以上見えない場合もあります。

このようなことから、窓枠の高さ以下の物は、車の真横や真後ろなどに置かないよう注意しましょう。

トラック

トラックの場合、死角の範囲はさらに大きくなります

出典:ISUZU

この画像のグレーの部分が死角となります。トラックは後方視界を遮る積載物を積んでいることが多く、ルームミラーが使えない場合の後方視界はゼロです。

また、トラックの運転席の窓枠の高さ以下の物が、トラックの真横にあると運転席から目視確認することができません。特に、助手席側は運転席側より死角が広範囲になります

バス

バスもトラックと同様に前後左右に死角があります

出典:STONkKAM

画像の赤い部分が死角となります。画像にもあるとおり、後方の視界はほぼなし、助手席側の死角が広範囲だということがわかります。

また、バスの運転席と助手席の窓枠の高さ以下の障害物は物理的な死角となります。

死角の共通点

ここまでそれぞれの立場ごとの死角を見てきました。
死角を見てみると、それぞれに共通点があることがわかります。

幅が人の幅以下の場合

幅が人の幅以下の場合、つまり、歩行者、自転車、電動キックボード、原付・バイクは、人の有効視野以外が死角となります。

ミラーがある乗り物の場合は、ミラーによって後方視界をサポートされています。しかし、ミラーに映る範囲は車体に沿った部分のみとなるため、真横はミラーに映りません。

そのため、有効視野とミラーに映る範囲以外の部分は、運転者が目視確認をしない限り見ることができないということになります

このようなことから、自転車、電動キックボード、原付・バイクに乗っていて、停止状態から発信するときは、前方(進行方向)だけでなく真横と真後ろの死角を目視確認してから発進した方が良いと言えるでしょう。

また、交差点の右左折や進路を変える時は、進もうとする方向の真横に危険がないか、後方から抜かそうとしている他の交通がいないか確認する必要があると言えます。

人の幅以上の乗り物の場合

人の幅以上の乗り物、つまり、車(乗用車)、トラック、バスなどの死角は次のとおりです。

・人の有効視界以外の部分
・ミラーに映る範囲(車体の側面に沿った部分)以外
・後方(ルームミラーの視界が遮られている場合)
・運転席側の窓枠の高さ以下の部分(窓を開けて覗き込めば見える)
・助手席側の窓枠の高さ以下の広範囲(窓を開けても見えない部分が多く、運転席側より死角の範囲が広い)

このようなことから、四輪車を運転するときは、ミラーを有効に活用して後方の視界を確認するだけでなく、ミラーに映らない真横や斜め後方の部分を目視確認する必要があると言えます。

近年では、ブラインドスポットモニター(BSM)をはじめとするセンサーを活用した死角補助システムが搭載されている車も増えてきました。しかし、これはあくまでもサポート機能であるため、過信は禁物です。また、BSMは検知範囲外の物に対して反応しません。そのため、真横から徐々に近づかれた場合、ミラーやBSMに対象物が反映されず、気がついたら横に車両等がいたということもあります。

さまざまなことを考えると、四輪車を運転するときにも、死角部分の目視確認は必要だと言えるでしょう

最適な走行ポジションは相手に認識される位置

運転免許が必要な乗り物を乗るときだけでなく、運転免許が不要な乗り物に乗るときも、適切なポジションで走行したり信号待ちをしたりすることが自分の命を守ることに繋がります。

特に、死角部分に車両等がいることに気がつかず、進路を変えたり、右左折をしたりすると、悲惨な事故に繋がりやすいです。

このような事故から自分の身を守るためにも適切なポジションを覚えておくことが大切だと言えるでしょう。

ここからは、運転免許がなくても乗れる自転車や電動キックボードにおける適切なポジションについて解説します。また、ここで解説する通行位置は原付やバイクを含む二輪車に共通しているため、覚えておいて損はないでしょう。

ミラーがある乗り物の後ろを走るとき

ミラーがある乗り物の後ろを走るときは、前方車両のブレーキランプやウインカーなど後方の灯火類が見える位置で、前方車両のサイドミラー(左右のドアミラー等)に映る範囲にいることがポイントです。

具体的な位置は次の画像の赤星の位置です。

出典元:PAKUTASO

自転車や電動キックボードなどを含む二輪車からの視線は次のような感じになります。

【例:止まるときの位置】

出典:PAKUTASO

止まるときは、ブレーキランプ等が見える位置で待つことがポイントです。

この位置で止まる理由は、前方車両のミラーに自車を映すためでもありますが、前方車両のウインカー等を確認するためでもあります

【例:走行中の前方視界のイメージ】

出典:PhotoAC

走行中は、真後ろでも真横でもなく、車の左後端の後ろを走る(もちろん適切な車間距離をとって)とよいでしょう。この画像のような位置を走ることで車のミラーに自分の存在を映し出すことができます。

真後ろや真横に行くと、死角に入ってしまうため、前方を走行する車が進路を変えたり右左折するときに巻き込まれてしまう可能性があります。

ミラーがない乗り物の後ろを走るとき

電動キックボードに続いて自転車が走行する場合や、自転車後ろで電動キックボードが信号待ちをする場合など、ミラーがない乗り物の後ろを走るときは、素直に後ろに付きましょう。

電動キックボードに続いて自転車を走らせる場合や、自転車に続いて電動キックボードを運転する場合は、前方を走行する車両等が後続車に気がついていないケースが多いです。そのため、無理に追い抜いたり、信号待ちの時に車体を並列に並べたりしない方がよいと言えます。

自分を守るための走行位置や車両ごとの死角を理解しておくことがポイント

人の視野角や視界、各車両ごとの死角の範囲、適切な走行位置などについて解説してきましたが、これらは自分の命を守るための自己防衛策のひとつです。

交通事故を起こしてしまったり、巻き込まれたりして、気持ちがいい人はいません。尊い命を守るためにも、人の有効視野、乗り物ごと死角を理解し、相手に自分の存在を見せながら運転することが事故を減らす第一歩と言えます。

また、ここで紹介してきたことは、運転免許取得時の学科教習で教えている内容と被ります。

しかし、自転車や電動キックボードなど、運転免許がなくても乗れる乗り物を乗る時に、このようなことを学ぶ機会がありません。

歩行者、自転車、電動キックボード、原付・バイク、車など、全ての道路利用者に関係する視野や死角は、小さい頃から学んでおいて損はないことです。

この機会に自己防衛する知識を学んでいただけたら幸いです。

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