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【データ分析】つくば市の財政指数の他都市との比較

こんにちは。つくばに住む研究者です。
今回は自治体の財政指数について見ていきます。

全国の自治体の財務状況については、総務省が発表する「市町村別決算状況調」から確認できます。一般には、大都市圏を除き多くの市町村では地方税だけでは支出が賄えない実質的な赤字自治体であり、地方交付金による補填により運営をしています。地方自治体の独自税収だけで運営できる自治体である不交付団体は僅かです。

先の総務省のデータには、自治体の税収と支出から計算される「財政力指数」が含まれています。総務省によれば財政力指数とは、

財政力指数
地方公共団体の財政力を示す指数で、基準財政収入額を基準財政需要額で除して得た数 値の過去3年間の平均値。 財政力指数が高いほど、普通交付税算定上の留保財源が大きいことになり、財源に余裕 があるといえる。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000264701.pdf

とあります。この財政力指数が1以上であれば、その自治体は独自の税収だけで運営できる、ということになります。他に自治体の財政を説明する数字としては経常収支比率や公債費比率、将来負担率などがあります。

さて、つくば市や他の都市について、財政力指数について人口規模と比較しながら見てみましょう。先の総務省のHPから、「都市別」の調書をダウンロードして使います。他にも「町村別」の調書も掲載されていますが、市と町村では人口規模や産業形態も大きく違うため、都市別についてだけ見ていきます。

そのままではPandasではかなり扱いづらいデータの形式になっているので、事前にExcelのままデータを整形します。具体的にはヘッダが1行に収まるように削りつつ、空白の列も削除していきます。そのあとはいつも通りPandasで読み込みます。


from google.colab import drive
import pandas as pd
import matplotlib.pyplot as plt
import japanize_matplotlib
japanize_matplotlib.japanize()

drive.mount('/content/drive')
df = pd.read_csv(dir_path+'/000871018.csv')
df.head(10)

どうやら数多くの問題がありそうです。まず1行目の北海道については何もデータが入っていないので、取り除く必要があります。日本の会計表では負号を△で表記しますが、そのままではPythonではマイナスとして扱うことはできません。また3桁区切りの「,」がそのまま文字列として入っているため、取り除かなければいけません。財政力指数がハイフンになっている行も取り除きましょう。

df = pd.read_csv(dir_path+'/000871018.csv')
df.columns = df.columns.str.replace('\n', '')

df = df[df['団体コード'].notna()]
df = df[df['財政力指数']!='-']

df = df.replace('△','\U00002212',regex=True)
df = df.replace(' ','',regex=True)
df = df.replace(',','',regex=True)

ガッチリ整形するとこんな感じです。だいぶよさそうになりました。

含まれる都市数は792市です。これらについて、財政力指数を見ていきます。
まずは平均値と中央値です。それぞれ、0.63と0.62となりました。人口を横軸に、財政力指数を縦軸にプロットします。

fig = plt.figure(figsize = (20,20),dpi=100)
ax = fig.add_subplot(1, 1, 1)
ax.scatter(df['国勢調査人口'], df['財政力指数'])

plt.xlabel('国勢調査人口', size=16)
plt.ylabel('財政力指数', size=16)

for i in range(0, df.shape[0]):
  ax.annotate(str(df.iloc[i]['団体名']), (df.iloc[i]['国勢調査人口'],df.iloc[i]['財政力指数']),fontsize=9)

plt.title('人口対財政力指数')
792都市の人口対財政力指数

人口規模が大きい横浜市や大阪市の影響もあり、横軸方向に疎になってしまいました。これらの都市を取り除くか、横軸を対数にするとよさそうです。横軸を対数にしてもう一度プロットします。

792都市の人口対財政力指数

概ね正の相関が見られ、人口規模が大きい都市ほど財政力指数が高い傾向があります。財政力指数が1以上の都市を色分けします。

fig = plt.figure(figsize = (16,16),dpi=100)
ax = fig.add_subplot(1, 1, 1)
ax.scatter(df2['国勢調査人口'], df2['財政力指数'])
plt.xscale('log')
plt.xlabel('国勢調査人口(対数)', size=16)
plt.ylabel('財政力指数', size=16)

for i in range(0, df2.shape[0]):
  if df2.iloc[i]['財政力指数']<= 1:
    ax.annotate(str(df2.iloc[i]['団体名']), (df2.iloc[i]['国勢調査人口'],df2.iloc[i]['財政力指数']),fontsize=9,color='b')
  else:
    ax.annotate(str(df2.iloc[i]['団体名']), (df2.iloc[i]['国勢調査人口'],df2.iloc[i]['財政力指数']),fontsize=9,color='r')

ax.grid()
ax.grid(which = "minor")
ax.minorticks_on()

plt.title('人口対財政力指数')

殆どの市が財政力指数1以下です。財政力指数が1を超える市の数は、792市中の僅か43市でした。地方税の配分はこのままで大丈夫なんでしょうか。つくば市の財政力指数は1.05と全国の都市の中ではかなり上位にあるようです。

792市のプロットには人口規模や産業構造が違う様々な都市が含まれています。財政指標の比較をより正確に行うには、人口や産業が似た都市間で比較するのが適切です。こうした「類似団体」についても総務省がまとめており、つくば市は「政令市」という類型に含まれています。同類型には全国で44の市が含まれています。

同じ類型にある44市について、人口規模と財政力指数をプロットします。

人口対財政力指数(類似都市)

44の政令市の財政力指数は0.84となり、全国平均よりもかなり高いことがわかります。44市の中でも財政力指数には人口との相関が見られますが、比較的人口規模が少ないつくば市ですが、財政力指数は厚木市に次ぐ2位です。

次回は経常収支比率や将来負担比率についても比較してみます。

それでは。

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