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野党は「消費税 ”実質ゼロ” 」でまとまれる

年明けとも、オリンピック後とも言われる衆議院解散総選挙。
政治的選択の時が迫るにつれて自民党長期政権のデメリットが大きく姿を表しつつある一方で、野党が一枚岩でないのも事実です。

まずは政治の現実を直視しよう

政治は国民の意思を示す手段とも言えます。よって、国民にとって多くの選択肢が用意されるのが理想的です。しかし、我が国では小選挙区制が取られており「似ている政党同士」はできる限りまとまって、1対1の構造(二大政党制や選挙協力体制)を作らなければ政治に緊張感が生まれず、与党長期政権や、場合によっては事実上の一党独裁体制を招いてしまいます。これが選挙制度における理想と現実です。

言うまでもなく、与党に「安心感・安定感」を与えるのは腐敗・不正を招き「危険」です。そのうち人民のためでなく権力者のための政治へと変貌するというのは、長い人類史が幾度も幾度も証明してきた事実です。

よって、自民党と公明党が(あまり考えが似ていない気もしますが)まとまっているのだから、野党(特にリベラルな国家像を理想としている勢力)も当然にまとまらなければ、どんなに彼らの描く国家像が国民の支持を受けても、一向に選挙で勝てやしないのです。

消費税を巡って まとまれない野党

れいわ新選組の山本太郎代表が次期衆院選に「100~131人の公認候補を擁立する」と掲げ始めた。他の野党をけん制し、消費税率5%への減税を柱にした野党共闘を促す狙いが透ける。ただ、立憲民主党などは消費税減税に消極的なため、実際に大量擁立へ踏み切る選択肢も残す。和戦両様の構えだ。 (2019.12.29 共同通信)

現在、立憲民主党と国民民主党、社会民主党らが合流に向けた協議を進めています。共産党も選挙では協力姿勢です。そんな現在の野党「主力戦力」にとって対応に苦慮しているであろう相手が「れいわ新選組」です。先の参院選で「消費税ゼロ」を主張して台風の目となりました。次の衆院選に向けて山本太郎代表は「消費税を5%まで下げることを公約とすることが選挙協力の最低条件だ」としています。

一方で立憲民主党などはこの案に否定的です。一言で言えば「現実的でないから」です。「消費税ゼロ」を支持している方々にとっては「そんなことない」と思うのでしょうが、そんなことあります。ただ、その理由を書こうとするとそれだけで論文ができてしまいますので、申し訳ない。今回は「消費税5%減税はできない」という前提を一旦頭に置いてほしいと思います。(というより、今回その点は重要ではありません)

では、れいわ新選組と野党各党は落とし所なんて見つけられないまま、このまま分裂選挙を戦うことになるのでしょうか?私はそうは思いません。両者には明確な落とし所があるのです。それが「消費税実質ゼロ政策」です。

消費税実質ゼロという選択肢

世間的には「給付つき税額控除(消費税逆進性対策税額控除)」と呼ばれています。民主党政権が導入を目指していたものの政権交代により頓挫し、今は立憲民主党や国民民主党などが提唱している制度です。

その仕組みは簡単です。それぞれの世帯の所得や家族構成に応じて、一般的な消費支出額を割り出し、その10%(消費税として支払っている額)を低所得世帯向けに還付(給付)するのです。例えば世帯年収300万円で、夫婦と高校生1人からなる家庭の消費支出が平均で年間250万円だとしましょう。消費税としては年間25万円(軽減税率を考慮しない場合)取っていることになるので、この家族構成で世帯年収300万円の家庭にはすべからく一律年間25万円を給付するのです。こうすることで、消費税分が戻ってくる(あるいは事前に渡される)ので消費税負担はプラスマイナスゼロ(消費税負担が実質ゼロ)となるのです。これを低所得世帯に(場合によっては中間層も)行えばよいのです。

立憲&れいわ 両方の目的を「真に」達成できるのでは?

確かに、れいわ新選組の主張通り、消費税には逆進性があります。お金持ちほど所得に対する消費税負担の割合が大きくなく、低所得者ほど消費税への負担が大きいのです。

ただでさえ我が国では実質賃金が上がらない状況が20年以上も続き、消費は冷え込み、経済は伸び悩み、子どもなんて生めない、結婚できないという人が大勢います。そんな状況で消費増税なんて行えばそれに拍車をかけるのは当然です。

しかし、だからといって消費税をゼロにすれば、お金持ちがダイヤモンドや豪邸を買うような消費ですら消費税がかからないという状況になります。

「ダイヤモンドから紙おむつまで同じ税率?冗談じゃない!」

れいわ新選組代表の山本太郎氏の発言です。ぱっと聞くと確かにと思うわけですが、消費税ゼロとはすなわち、ダイヤモンドから紙おむつまで一律に消費税を減税することにほかなりません。冗談じゃない。

これはれいわ新選組支持者の目指す姿ではないでしょう。消費税が何%になろうが消費を減らす必要なんて無いような高所得層のために消費税廃止を主張しているわけではないはず。あくまで、消費税の魔の手から守るべき相手は、消費税で打撃を受ける(消費税の存在によって消費を減らさざるを得ない、あるいは結婚や子どもをあきらめてしまうような)低所得層や中間層であるはずです。

だから「消費税実質ゼロ政策」なのです。この政策は消費税廃止よりも優れているのです。この政策では、消費税を支払う能力のある方々からはしっかり消費税をいただき、消費税で打撃を受ける方々の消費税はプラスマイナスゼロにできます。増えつつある社会保障財源を確保しつつも、中間層・低所得層の負担を軽減し、貧困を解消するだけでなく、活発な消費を喚起し、暗く低迷を続けてきた経済をついに好転させ、結婚や子育ての余力を生み出すことで幸福度と出生率を上げ、最後には我が国を国難から救済するのです。

実は現実的な「実質ゼロ」

さらに言えば、幸いなことに、この政策は「給付つき税額控除」として民主党政権やその後の自民党政権の一部で検討された政策であるがために、ある程度調査や準備が整っています。必要な年間の予算額も調査され、3000億円という額が示されました。これは消費税の10%への増税に合わせて、低所得層対策のために(実際にはそうはなっていないが)導入された「軽減税率制度」にかかる費用と同じ額であり、(何かと問題の多い)軽減税率制度を廃止すれば「消費税実質ゼロ政策」は十分に可能だと言えるのです。また、この制度を導入するためには個人個人の収入と給付額をしっかりと把握する必要があります。民主党政権はそのために「個人番号制度」の導入を進めていました。それはその後に「マイナンバー制度」として完成しています。これを使えば収入や給付の一元的な把握が可能になるため「消費税実質ゼロ政策」を導入する基礎は既に確立されているのです。そう、この政策はマジで現実的です。

今こそ日本再建のチャンスだ!

消費低迷によって20年以上も続いている経済の長期低迷。そしてそれらが拍車をかけている少子高齢化・人口減少。一方で、膨らみ続ける社会保障費と借金。そしてグローバル化が招いている法人税安競争。消費税を上げなければならないが、目の前の国難を深刻化させてしまうというジレンマが私たちから希望を奪い、諦めを生み、政治不信をも高めています。しかし、それは解決可能なのです。いや、解決するしかない。「消費税実質ゼロ」この道しかないのです。自民党や公明党が主張できないのなら、野党が政権をとってこれを実現すれば良い。そうでなければ、野党が自民党や公明党を説得すれば良いのです。そのためには野党が消費税という争点においては、この「消費税実質ゼロ」で一枚岩となる必要があるでしょう。

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