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北海道マラソン2023"自然に慈悲はない"

はじめに

10年前の夏。公認のフルマラソンを初めて走った。それが北海道マラソン。当時は「北海道で快適に走れる!」と、深く考えずエントリーした記憶がある。特にタイムの目標はなく、3時間22分42秒。「マラソンは夏のスポーツじゃねーな笑」と家族とジンギスカンを囲み生ビールを流し込んだ、遠い夏の日…。以来、6回参戦。2016年の3時間18分44秒(1044位)がベストで、サブ3.5圏内で常に撃沈を続けた。サブ3ランナーとして挑んだ2022年は、レースで初めて痙攣し危うく棄権寸前まで追い込まれた…
(注:3時間25分41秒で完走)

身体にも脳にも…北海道マラソンは毎年「撃沈確定レース」「過酷なサバイバルレース」と刻まれている。いつしかシーズン前に必ず挑まなければならない「高い壁」として毎シーズンインの目標にもなっている。異常な暑さとなった2023夏。7回目の北海道マラソンは果たして?
いつものように、5k毎に振り返っていく!

スタート〜5k  21分52秒


8月27日 北海道マラソン 大通り公園 
午前7時30分頃


午前8時30分の気温30度。Aブロック。中段後方で待機。待ってるだけで汗が滲む。スタート時点でこの暑さは経験したことがない…今回のレース戦略は、マラソンペースより+10秒〜20秒。4'20-4’30/kmのペースで新川の折り返し(約26k)まで様子を見る。「ペースの貯金より、体力の貯金」
後半、じわじわとあげていく戦略を考えていた。
スタートの道マラは、すすきのを疾走する。テンションが上がり、強引に割り込んだり、突っ込んでいくランナーが毎年多い。今年は「割とみなさん、慎重じゃない?」と感じた。ほぼ想定通りで5kは通過して、今夏の道マラが始まった!

5k〜10k 21分36秒

2つの橋を渡りながら、序盤で整えるのがこの区間。早くも5kの給水でガッツリ2つ飲み干し、首にかける。日差しが強いわけではないが、湿度は高い。10k地点の創成トンネルまでは、テンションも上がるのでペースも上がり気味になる。序盤のペースが速くて30k以降に消耗するかも…脳裏によぎる。
実はすでにこの時点で「お前はもう、死んでいる!」だったのかもしれない…。

10k〜15k  21分54秒

序盤の10k手前の創成トンネルを通過。日差しは避けられるが、蒸し暑い。
なのに、トンネル効果か?ペースが上がるので注意が必要。10k地点で身体は毎回解れてくる。体がほぐれてランニングハイになり、オーバーペースで撃沈するのが北海道マラソン=通称道マラ(笑 だが今夏は笑い事では済まされない。文字通りの命取りになる。何より、帰りの飛行機は1500。収容バスに乗ることなどできない。新川通の前半に向けて、ペースアップをしないよう意識する。

15k〜20k 22分29秒

北海道マラソン名所、新川通りへ。往復13kの直線コース。毎夏、日差しが強いときには「ランナー殺し」の名所だが今年はどうか?曇天で日差しはキツくないが、湿度が高い…折り返しの25.5k過ぎまではペースを抑えようと意識した。ここまで給水は毎回とった。スポンジのあるエイドでは、脇、首をしっかり冷やす。ジェルを1つ。塩ブレットを1つの補給をした。
ただ、ターゲットになる集団やランナーもなく…暑さに意識が向いているからか?いっぱいいっぱい…己の体感でペースを作ってきた。「楽をしていない」レースであることは確かだ。

20k〜25k  23分23秒

最大の難所、新川通りへ。この往復13kの直線の走り方。これが北海道マラソンの結果を大きく左右する。ハーフは1時間32分48秒で通過。去年は気温24度。スタート前から身体の調子がおかしく脱水状態だったが、1時間31分台。ほぼ想定内予定通り。序盤15kまでの5kラップが速いと感じたので、4'30/km〜4'45/km前後に落とし、折り返しから少しずつ元に戻す展開を描いていた。リズムも悪くない。沿道の学生たちのマーチングの応援にも手を振る余裕はあった。だが、やはり道マラは「大いなる壁」となり、立ちはだかる。去年に続き、ここからが地獄の始まりだった!

25k〜30k  25分00秒

新川通りの25.5k地点。折り返しを過ぎた。4'20/kmで!落ちてくるランナーを拾いながら淡々とペースアップの作戦だった。が…「あれ…前に向かおうという感じにならない。。。なんか疲れてる?」スイッチが全然入らない。前方には黒雲が!気がつくと「ピカっ!ゴロゴロ・・・!」道マラ参戦7回目にして初の「雷雨」を経験した。ロードが川になり、シューズはびちゃびちゃ。。
そして、28k過ぎ。後方から軽快な足音を感じた。
「まじかよ!ここでペースアップかますランナーって?!」と思わず振り返る。東京パラ五輪金メダリストの道下美里選手だ。(*サブ3ランナー)去年もほぼ同じ地点で抜かされた。
「今年も同じかよ!」と、なぜか愕然とする…。序盤でお見かけしなかった
理由はこれか…

「嗚呼!抑えたつもりでも、前半のオレは突っ込み過ぎていたんだ…」

豪雨の中を淡々と刻んでいく後ろ姿。護衛のように、数人のおっさんランナーが追尾していた。
道下選手は去年同様、折り返しから上げてくプランだったようだ。アスリートのサブ3と、市民ランナーのサブ3…地力の違い、レースプランの違いを見せつけられた。道下選手は、土砂降りの中を軽快に疾走、視界から消えた。そして、今年もオレは道マラの地獄を味わうのであった…

30k〜35k  28分46秒

ゲリラ雷雨は恵の雨?だったのか…雨の時間は10分くらい?道端を走ってなるべく浸水を防いだ。靴づれ、水膨れを意識したためである。
「今夏も去年同様、道マラの泥沼に引きずり込まれたな・・・」と観念して
ゾンビjog
になっていたとき、ふと道端には…熱中症?で倒れているAブロックの(速そうな)ランナーが2人も!うなだれて座り込む招待選手?みな、救護班を待っているのだろうか?
「速いランナーも軒並み撃沈、どころかレース棄権か。」完走したら、彼らよりもこのレースは上回ったってこと。今夏の道マラの目標は、この時点で「飛行機の時間に間に合うタイムでゴールする!」になった。

「YMCA!」の学生たちの応援に、エイドで女子学生の水ぶっかけ
「大会を楽しもう!」という意識に持っていきながらも、ゾンビjogは続く。。すると、「痛っ!」右脇腹に差し込みが襲い始めた。止まって痛みが収まるまで待つか?いや…「止まったら、収容バス行きだ…」
(注*収容バスは68台出動。収容されるまで2時間待ち、だったとか)

かつて大迫選手が差し込みを抑えながらゴールを目指す、「魂の走り」を思い出した。「時間が経てば、どこかでおさまるはず!」止まったら、そこで終わり。歩くな。ただ、前だけ見て進め。ここからが、北海道マラソン。

ガマン大会が始まった!

35k〜40k  29分34秒

差し込みは相変わらず治らない。ゲリラ雷雨で濡れた路面はとっくに乾き
湿度が上がり…むしろコンディションはキツくなったか?去年は、37k辺りで脱水して脚が痙攣。腕も痙攣して、地べたでのたうった…去年の忌まわしい記憶が甦ったとき、救われたのが私設エイドのコーラ!おばちゃんが差し出してくれた紙コップコーラは、「氷入り!」。一気に飲み干す。
ゴミ袋を持ったおじさんに「氷はいただきます!」。4粒の氷をゲット。
脇に挟んで溶けるまで走る。「あっ・・・助かった!」幸い、差し込みは40k手前で消えた。脚は終わっていない。
7月下旬の富士登山競走向けに、坂練習をしてきた。このペースで終わるほどやわではない。徐々にペースを上げて、ゴールを目指す。そう決めた。

40k〜ゴール 11分54秒

40kから北大構内を通過して、大通り公園のゴールへ向かう。応援のみなさんが多いコースだ。差し込みが消えたとはいえ、キロ5が精一杯だった!
いつもここで、大勢の応援で「最後の力」をいただく。今夏もそうだったが、、例年より応援が少ないと感じた。北海道の異常高温のせい?
ゴールに向かうラストの直線で、「北海道大好き!また来るね!」と叫びながら、ラストスパートをかけた若い女性ランナーがいた。その姿を横で見ながら、7年前、初めて完走した自分の姿を重ねた。今夏もどうやら完走できそうだ。全てに、感謝しかない。


北海道マラソン2023   全記録

毎年、過酷な展開が必ずある北海道マラソンだけど、今年も無事帰ってこれた。あんなに過酷な経験をしたのに、ゴールしてすぐに「来年も出るぞ!」と思わせてくれる、不思議な夏のレースだ。

自然に慈悲はない。それでいい。それでこそ、北海道マラソンなのである。

北海道マラソン2023 3時間26分24秒

 







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