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俺たちの物語を届けるために必要なもの

あんたの物語ってやつ、どんな物語だい?

今の世の中を見てみると、びっくりするくらいありとあらゆる事柄に「物語」が求められている。

缶ビール一つとっても、その商品コンセプトという名の物語が求められているし、携帯会社のCMは物語そのものになっているよな。

俺たちは、その物語があることが当たり前の世の中で暮らし続けている。

驚くべきことには、俺たちはこんなにも多くの物語を消費し続けているのに、俺たち自身が物語を紡ぐことにはものすごく多くのハードルが用意されている。

今回は俺たち自身が物語を紡ぐということについてあーだこーだ考えてみる回だ。

あんたの物語。どうしていけばいいんだろうな?

時代を変えた物語

俺たちが子供の頃、今よりもずっと商品の種類ってのは限定されていたような気がするよな。

俺は見まごうことなきパソコン少年だったわけだが、それでもパソコン以外に全く興味がなかったかというとそうでもない。

産まれて初めて買ったCDはTM Network(後のTMN)のSelf Controlだったし、Walkmanという「音楽を携帯する」という文化のハシリの時期が俺たちの青春時代だった。

その時は、やたらに重低音ってやつがもてはやされていて、どんな音楽でも「ドコドコ」言わせて聞いていたもんだ。

で、このCMを見てみても、ものすごく物語が強調されているよな。

当時を振り返ってみても、この「音楽を携帯する」というライフスタイルは革新的だった。

なにしろ、CDが出始めた時代だ。音楽は家で部屋にこもってコンポで聞くというのが普通のスタイルだった時代。
今となっては考えられないライフスタイルだよな。

家族が部屋で同じ音楽を楽しむ。そんな時代だったんだ。

そこに現れたWalkman。

その圧倒的な技術力に俺たち技術屋は思いを馳せがちだが、今あらためて振り返ってみると、その技術を一般に広めた物語こそが、時代を作り上げていったもののように思われる。

「音が進化した。人間はどうですか?」

この音楽に聞き入っている猿。その猿が文化の極みとも言われる音楽に酔いしれている様は、明らかに今までとは異なる「進化」を表現している。

その「進化」というキーワードは俺たち自身に様々な変化を想像させた。
そして、その変換は現実に起きた。

いや、現実はそれ以上に変化していく。

音楽はみんなで楽しむものではなくなり、個人で楽しむものへとその後の時代は移行していく。

究極的にWalkmanの物語は、音楽の有り様を変えていくくらいのインパクトを持っていたわけだ。

発信者が個人にシフトするという意味

俺たちの青春時代は大量生産・大量消費が大前提にある社会構造だった。

そのため、今とは比べ物にならないくらいの少ない種類の商品を大量に生産していけた。
なので、CMも目玉商品に絞り込んで行うことが出来た。

みんなが同じテレビを買って、同じ洗濯機を買って、同じ冷蔵庫を買っていた。

土曜日の夜は「全員集合」をみんなで見ていたし、「北斗の拳」を夢中になってテレビにかじりつきながら見ていた。

みんなが同じ価値観を共有することが当たり前の世界だった。

そこには共通の物語が共有され、その物語を軸に俺たちは共通語を非常に容易に手に入れることが出来た。

その提供される物語は、大企業、マスコミによって提供され、俺たちはその物語を消費することに何の疑問も差し挟むことはなかった。

ところが時代は一つのキーテクノロジーの発生によって劇的に変化する。

インターネット。

インターネットの普及により、情報の発生源は指数関数的に増えることになった。

ほんの10年前には、動画配信を個人がやって、その動画が俺たち個人にエンタメを提供してくれるなんて想像もできなかったんだけれどね。

依然としてテレビの力は巨大だけれども、テレビも含めて、俺たちは情報の吟味をする必要が出てきてしまった。

同じニュースを受け取るにしても、テレビでやっていることをそのまま鵜呑みにはできなくなって、必ずネットで別の側面の捉え方を探すようになってきている。

現実にはそんな情報の吟味なんて能力は俺たちにはない。どれだけ自分が納得しやすいかということで情報を取捨選択していくことになってしまう

では、どうやって俺たちは情報に対して「納得」できるのか。

それが「物語」だ。

そのニュースの背景にあることにどんな物語があるのか。
その物語に共感が出来るのか?

俺たちは情報を「共感」で判断しているんだ。

そして、俺たちはSNSという社会構造の上で生きている

それはすなわち、俺たちは情報発信をし、そこに「共感」を生む「物語」を作り込んでいく必要があるってことになる。

ところが、その「物語」の内容以上に「物語」に「共感」するために必要なものがある。

それが「信用」だ。

この人はどんな人か。
この人は何をしている人なのか。
この人は何を自分に与えてくれるのか。

そのことを常に世の中に発信していかないと「共感」にはたどり着かない。

俺たちは、俺たちがいる意味ってやつについて、もっと真剣に考えなければ行けない時代に生きているってことなんだ。

なあ、あんたはどうだい?

あんたは、あんたの物語。誰かに聞いてもらえそうかい?

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