2023年8月24日 「映画『さらば、わが愛/覇王別姫』とレスリー・チャン」

明日から友達が泊まりに来るので、家を片付けなければいけないのだが、体が動かない。

夜からチェン・カイコー監督『さらば、わが愛/覇王別姫』。

去年ウォン・カーウァイの『ブエノスアイレス』を観て大好きになったレスリー・チャンが主演。『覇王別姫』のレスリー・チャンの美しさはもう言葉にならない。胸が詰まるような綺麗さ。頭の先からつま先まで、内側から何かが溢れそうな、それでいて凍ってもいそうな、しかし柔らかい、身のこなし。兄弟分であり相方でありそして愛する人である小樓を見る、その目。

そして、歴史に翻弄される二人=京劇。物語の作り自体も素晴らしい。京劇の演目『覇王別姫』との重なり。複雑に絡み合わせて重ね合わせるその手腕。

蝶衣は小樓を愛しているけれど、小樓は元遊女の菊仙と結婚する。でも蝶衣の母も遊女である。菊仙は蝶衣と小樓の強い強い結びつきを意に介さない。その三角関係の複雑さ。

「”男”として生を受け……」と間違い続ける蝶衣。やはりこれは自身のアイデンティティゆえの故意だろう。指の切断、張老人の剣、袁世卿からの髪飾り、反復される首吊りなど、映画的な細部の読み解きは難しいが、中国近現代史と京劇、『覇王別姫』と主人公たち、そして主人公3人の関係にだけ着目しても凄まじい映画。

レスリー・チャンの美しさに完全にやられてしまって、観終わってしばらくは鳥肌が止まらなかった。やや挙動不審だったかもしれない。2500円もするレスリーのメモリアルブックを買ってしまった。私の中でレスリー・チャンの存在感が圧倒的になってしまったターニングポイントだろうと思う。

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