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78.9:15 謎めいたあなたに惹かれていた

長年の推しが、ツアーをしている。
楽しそうで何より。
私は既に2公演行ったが、非常に満足度の高いものだった。
長年推していると、公演がマンネリ化していくのが感じられて物足りなかったが、今回のツアーではその不満を払拭してくれた。
ありがとう、我が推し。


最近新鮮な野菜がたくさん届いて、珍しく料理が楽しく感じている。
いつもは、料理なんて嫌で嫌で仕方ないのだが、美味しい食材があると嬉しいものだ。

私が独立するまで、我が家での料理担当は母であった。
(実家ではまだまだ現役で料理担当である。)
母の手料理を食べて成長した。
母は昔ながらの家庭料理が得意で、西洋風の料理(例えばグラタンなど)や、中華料理(例えば回鍋肉など)は市販のキットを主に使用していた。
だから美味しくないというわけではなく、十分美味しいのだ。
ただ、外食で食べるものは何かが違うなあ、という感想を持ったくらいだ。
キットは殆どの材料が用意されていて、特に味付けにおいては、全て含まれたタレや粉に頼る。
その為、私はそれを一から作る方法を知らずに独立したし、一から作る家庭がある事も想像できなかった。

つまり、何が入っているのかということが理解できずにいた。
更に、それを理解するのを禁忌とさえ思っていた。

そのまま自分が料理をするようになったものだから、出来るのは本当に簡単なものばかり。
良いように言えば、素材の味を活かした料理だった。

先述の通り、料理が基本的に嫌いではある。
しかし、YouTubeを見るようになって、料理をする動画を見るのがなぜか好きになった。
美味しそうな料理を何気なく作る動画が好きだ。
その過程で気づいたのが、実家ではキットに頼っていた料理も案外簡単なのである。

知りたくなかった。
そんなに簡単にできるなんて。

例えば大好きな「グラタン」。
あの白いソースはとんでもなく美味しいので、プロの領域だと感じていたのだが、かなりシンプルであると知った。
愕然とした。
これなら、作れるじゃないか。

「グラタン」。
好きだけれど、一からは作りたくなかった。
何が入っているかわからない。
けれど美味しい。
それが良かったのに。

やはり、知りたくなかった。

この気持ちをどうやって表現すればいいのか。
ミステリアスな雰囲気に惹かれるというか。
複雑な性質に惹かれるというか。

とにかく、自分には手が届かない、けれど私を満たしてくれる存在であったのだ。
「グラタン」は。

でも、君はそんなに親しみやすかったのか。

長々と書いたが、それくらい私の中では認知革命であった。

独立してから長い年月が経っているが、最近になってやっと料理のレパートリーが増えつつある。
これは良いことである。
件の「グラタン」にも挑戦し、見事成功させた。

ただ、あの謎めいた存在(料理)たちはもういないのか、と思うと少し寂しい。
複雑な問題を解決した後は、一抹の寂しさがよぎるものなのかもしれない。
また、出会えるだろうか。
存在自体が謎めいていて、美味しい料理に。

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