見出し画像

プ譜 と 二項対立 と 型破りなプロジェクトマネジメント

はじめに

プロジェクトマネジメントについて何度か記事を書いてきました。その度にプロジェクトの全体を捉える方法としてプ譜という手法を紹介してきました。

プ譜は「予定通り進まないプロジェクトの進め方」の著者である後藤洋平氏と前田考歩氏が考案した手法になります。

プ譜とは何か?

プ譜を一言で説明することは難しいのですが、後藤氏が書かれている記事から引用させていただきます。

プ譜とは、ある取り組みの、ある時点における現状認識と将来像、またそれをつなぐ過程を一枚の局面として描く、というものです。

プロジェクト工学フォーラム プ譜とは何か:その成り立ちと基本

プ譜は大きくわけて下記の5つの要素から成り立っています。
獲得目標、勝利条件、中間目的、施策、廟算八要素

廟算八要素はさらに下記の8つの要素から成り立っています。
ひと、お金、時間、クオリティ、商流/座組、環境、ライバル、外敵

プ譜における項目
獲得目標 その取り組みを開始するときに目指す成果物。
勝利条件 どのような状態を迎えたら、その取り組みが一件落着するか。
中間目的 勝利条件を満たすための、局所的な状態。
廟算八要素 その取り組みにおける状況。びょうさんはちようそ、と読みます。
 ・ひと、お金、時間:獲得目標を達成するために必要な資源
 ・クオリティ:生み出したい価値、到達したいレベル、使用技術等
 ・商流/座組:お金の流れや契約関係、指揮系統、ビジネスモデル等
 ・環境:国、地域、企業、コミュニティ、社会情勢等
 ・ライバル:同じ成果や資源を取り合う存在
 ・外敵:積極的に目的達成を阻むヒトやコト
施策 現状とありたき未来をつなぐアクション。

プロジェクト工学フォーラム プ譜とは何か:その成り立ちと基本

プ譜と二項対立

全体を捉えるプ譜は、状況と目標を分類し、構想を経て行動を実現することを目論みます。全体を捉えることで状況に対して柔軟に全体像を見失うことを対応できます。分類することで全体を把握することに寄与しますが、ただ分類するだけでは逆に枠内に要素を閉じ込めて、全体像に捉えていることに慢心し、返って事態を硬直させてしまう可能性もあります。形式的なプロジェクトマネジメントしかできない状態とも言えます。これはプ譜の手法の問題ではなく、書き手の思い込みみよるものです。これはプ譜に限らず既存のプロジェクトマネジメント手法においても起こりうるのです。

今回、プ譜の全体を捉え、統一的に考えつつ、事態の硬直を避けるための試みを行います。それは、プ譜の中にある二項対立に着目し、そこからさらに柔軟に捉える見方を模索します。つまり、二項対立に分解していくこと、そして二項対立から対立を渡り歩く道をみつけます。

二項対立にすることで小さな部品に分解していくことで、人間の自由な思考(さながら神話的思考)により、二項対立を超える創造性を探る試みです。
この例えがわかりやすいか疑問ですが、あるロジックをAND、OR、NOTといった基本的な論理回路に分けていくような作業です。

二項対立によるプ譜の分解

まず、プ譜にある最初の対立として、

動かさない /  動かす

の対立が見られます。プロジェクトの中で何を動かすか、動かさないか。何を動的とし、何を静的とするかを分けます。
(廟算八要素が絶対に動かさないかというとゆらぎますが、最初に情報が置かれる場所であり、一旦静とする側面があるため、動かさないにしています。まだまだ荒削りな点ご容赦ください。)
下の図でいうと左の青が動かさないもの、右の青が動かすものになります。

プ譜:動かさない / 動かす

動かさないもの、 廟算八要素も2つの分けます。それは内側と外側です。

内側 / 外側

内側はひと、お金、時間、クオリティ。外側は商流/座組、環境、ライバル、外敵で分かれます。
下記の図では、赤が内側、青が内側になります。

廟算八要素:内側と外側

動かす領域を2つに分けます。それは施策(実体) 、目標(構想)に分けます。
施策は具体的に何を行うかです。現実世界において具現化する行為です。
一方、目標は構想するだけでは、現実世界では反映されておらず、未だ実現されていない意味で精神的な領域となります。

施策(実体) / 目標(構想)

プ譜の特色として、施策と目標の両義的な存在として中間目的があります。
中間目的は、目標よりも実現的であるが、施策よりは抽象的存在です。
中間目的は目標でもあるが施策でもあり、そのどちらでもない存在です。
中間目的によって、実現と構想の乖離をつなぎとめています。

下の図では、青が施策(実現)、緑が中間目的(両義的)、赤が 目標(構想)になります。

動かすもの:施策(実体) ー 中間目的(両義的)ー 目標(構想)

最後に、勝利条件と獲得目標です。この両者はとても似ているが違うものです。

目標:勝利条件と獲得目標


勝利条件と獲得目標の定義を後藤氏の記事から引用させていただきます。

勝利条件とは:取り組みが成就するためにプロジェクトの状況が満たすべき状態

プロジェクト工学フォーラム 勝利条件

獲得目標とは:プロジェクトの成果物
そのプロジェクトに関係する利害関係者が共通認識として持つ、成果物としてのゴール

プロジェクト工学フォーラム 獲得目標

勝利条件も獲得目標もどちらもプロジェクトのゴールに関わるものではあるものの、一方は満たすべき状態、もう一方は成果物の違いがあります。
下記の後藤氏の記事からさらに違いを見ていきます。

勝利条件と獲得目標の同じ要素、異なる要素を下記にまとめました。

勝利条件 / 獲得目標

同じ要素

ゴールに関するもの
実体がないもの

異なる要素

状態 / 成果物
条件(=コト) / 具体(=モノ)
終わり / 始まり
未知 / 既知


このような違いが勝利条件と獲得目標にみられます。

今までの対立を下記の木構造にまとめました。プ譜における対立関係を可視化しました。

二項対立によるプ譜の分解

対立を超えて

対立を可視化したとて、実際はそう簡単に行き来できません。一般的には対立があるからこそ、行き来できないと考えるのが普通です。
しかし、対立するとは異なる要素ばかりに目がいきますが、同じ要素があるから対立するのです。異なる要素しかなければ、対立することもないのです。対立するとは通り方のわからない道がある状態とも言えます。

典型的ではありますが、対立を超える例を挙げます。

プ譜の「動かさない → 動かす」
当初の予算では足りない →  追加予算の確保する、別予算を当てる、クラファンをする

見積もっても当初の納期には間に合わない → 納期を変更する、工数を圧縮する、タスクを並行して行う


廟算八要素の「外側 → 内側」
商品が競合関係にある → 友好関係を気づき、住み分けを行う

部署間の利害が衝突する → 部署間の利害を調整し、協力関係を築く

型破りなプロジェクトマネジメント

先程の例では、私の力不足により対立の横断の例は典型的なものとなってしまいました。しかし、歴史では無理難題を実現したプロジェクトが存在しまう。例えばガンジーの塩の行進、幕末の高杉晋作、ハンニバルのアルプス超え。これらは可能と不可能の対立を超える行動を行った結果です。対立は超えられないというのは誤りで、対立はハードルは高いが超えられるが正しいのではないでしょうか。

対立している(=比較ができる) / 対立していない(=比較ができない)
||
超えられる可能性はある / 超えられる可能性自体がない

困難な状況のプロジェクトを打開することにおいて、対立を発見しておくこと、対立を超える方法を考えることは、形式的なプロジェクトマネジメントから型破りなプロジェクトマネジメントに至る道になるのでは無いかと考えます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?