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[8月第5週] DAOレポート Vol.34 | Makerが日本でSub DAOを立ち上げる構想を発表 今後のDeFiの道筋つけられるか?

イントロ

老舗DeFiのMakerが日本でSub DAOの「Sakura DAO」を立ち上げるという話が、にわかに注目を集めている。先週末、Fracton Venturesが渋谷のCentrumで主催したイベントにはメーカー創設者のルーン・クリステンセン氏が登壇し、Sakura DAOについてアピールした。日本でSub DAOを立ち上げる狙いは何だろうか?

Sub DAOは、一般的にはDAO内部での専門グループを指す。例えばdYdXではグラント(助成金)とオペレーションの領域でSub DAOが立ち上がっており、今後さらに追加される予定だ。

Makerは、創設者のルーン・クリステンセンが提案した5段階から構成されるエンドゲームの第2フェーズとして「Sub DAOの立ち上げ」を計画している。エンドゲームとは、メーカーのエコシステムのガバナンスとトークノミクスを改善するための計画で、エコシステムとして独自で持続可能な均衡状態に持っていくことを目的としている。

エンドゲームのSub DAO立ち上げの主な目的は、ユーザー獲得と分散型のフロントエンドの維持だ。「生まれながらに分散型」というSub DAOは、ファシリテーターDAOとアロケーターDAOの二つに分けて運営される。

  • ファシリテーターDAO
    DAOのガバナンスのルール作りと運営をすることが役割。

  • アロケーターDAO
    Sub DAOの担保資産の運用、リスク分析、訴訟対応、グロース戦略など幅広い役割を担う。

Sub DAO立ち上げ時にNew Stable(ステーブルコインDAIのアップグレード版)へのファーミングによって独自トークンを発行できる。

ルーン・クリステンセンによると、Sakura DAOの立ち上げ予定は来年の第2四半期。DAIでファーミングすることによって独自トークンを持つことができると述べた。Sakura DAOは、Makerが最初に立ち上げる6つのSubDAOの一角(Four)を担っており、かなり重要視されている。

なぜ日本でSub DAO立ち上げ?

なぜ日本でSub DAO立ち上げなのだろうか?この点に関しては、情報が少ない。フロントエンドの開発を行っているのはSlateで、ガバナンスのデザイン担当はDAOcraftと呼ばれるチームだ。「日本のコミュニティの反応を見て柔軟に方針を決めていく」という。次のイベントも、数週間後に予定されているそうだ。

筆者がWebXでルーン・クリステンセンと話した時、かなり日本に対する期待を示していたのは確かだ。例えば、チェーンアナリシスの分析によると、2021年7月~2022年6月までの1年間でDeFi取引額は567億ドル。韓国の約2倍にまで拡大し、中国の676億ドルに迫る勢いだ。

ルーンは上記の様なデータにも関心を示した上で、日本政府によるWeb3推進の政策や海外ユーザーによる日本への憧れは確かに存在する述べた。例えば、なんの変哲のない建物であっても「日本の建物」ということが分かると海外DeFi勢の反応が大きく変わるという。現段階では、ポテンシャルが先行しており具体的な日本におけるGTM(Go To Market)策はこれから検討する感じだろう。ルーンの上記イベントにおけるスライドも、アイデアレベルでとどまっている印象だ。日本における取り組み例として以下をあげた。

  • 日本のアーティストと開発者によるブランディングとデザイン、UX作り

  • 日英におけるコンテンツ作り

  • DAOガバナンスで作るコンテンツ

    • NFTとアート

    • DAOガバナンス主導のアニメ

  • トークン保有者向けのコンテンツ

    • Sakura祭り

    • VIP向けコンテンツ(god-mode DeFi UI?)

要するにSakura DAOの全貌は現時点で分かっておらず、今後、「日本のコミュニティ主導」で形作られることが期待されているようだ。ただ、Makerといえば、DeFi系のDAOでも開拓者的なところがあり、dYdXを含む他のDAOが学ぶところも多いだろう。

今後、各国のGTMをそれぞれ異なるエンティティが実行する「分散型GTM」が注目されるかもしれない。従来は、中央集権的なエンティティの支社や関連会社(例えば、コインベースジャパンやクラーケンジャパン)が実行してきたGTMだが、クリプトの世界では中央集権的なエンティティに紐づかないエンティティがGTMを担うかもしれない。もちろん目標は(コインベースやクラーケンの日本における成功)という意味では同じになるだろうが、独立したエンティティがGTMを行うイメージだ。これは伝統的なマーケティングやPR会社が中央集権的なエンティティの関連会社をサポートする流れとも異なる。

クリプトプロジェクトは、どこか特定のエンティティではなく「独立したエンティティの集合体」に管理されるべきという話は、本来の意味においても説得力がある。Makerの今回の取り組みは、現時点で情報不足なところはあるが、集合体形成に向けた新たな一歩と考えられるだろう。

注目のDAOトピック

  • dYdX グラント(助成金)プログラムv1.5の延長を承認

    • dYdXコミュニティは、dYdXグラントプログラムv1.5の延長する提案を賛成多数で可決した。

    • 今後6ヶ月で200万ドル相当のグラントが割り当てられる予定だ。

    • グラントは、Strategic InitiativesとCommunity Initiativesに分けられる。前者はMEVリサーチやバリデーター関連ルールなどv4立ち上げをサポートするインフラ周りでの貢献、後者はイベントやコンテンツ周りでの貢献を審査する。

  • dYdX v4で立ち上がる独自チェーン「dYdXチェーン」においてDYDXトークンを使うことを支持する提案

    • DYDXトークンのdYdXチェーンにおいて採用する提案がSnapshotで賛成多数で可決された。

    • dYdX Foundationによって開発委託されたイーサリアムのスマートコントラクトを採用し、もし実装されれば、パーミッションレスで自動的な一方通行のブリッジを使ってDYDXトークンをイーサリアムからdYdXチェーンに移行する。

    • wethDYDXは、dYdXv3のイーサリアム基盤であるDYDXトークンと同じユーティリティを持つ。

トレジャリーデータ

DeepDAOによると、9月4日時点でDAOトレジャリーの総額は185億ドルと前週比で6.09%減少した。内訳は、流動性のある資産(Liquid)が162億ドル、権利が確定していない資産(Vesting)が24億ドルだった。
ガバナンストークン保有者は730万人で、アクティブDAOユーザーは250万人だった。

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