見出し画像

スキマバイトアプリ「Timee(タイミー)」のビジネスモデル図解

今回は、スキマバイト市場のニーズを見事にとらえ、コロナ禍も乗り越えながら急成長をしている「Timee(タイミー)」のビジネスモデルを図解したいと思います。

Timee(以降、タイミー)は、短期・単発バイトの求人情報媒体で、短時間の労働力を求める事業者と、スキマバイトを探す求職者をつなぐマッチングプラットフォームです。

さらに、タイミーは事業者向けに、オンライン上での雇用契約の締結、出退勤管理システムを提供するSaaS(Software as a Service)プロバイダでもあります。

ここからは、そのビジネスモデルのメカニズムを「ループ図」という手法を使って解説していきます。初めて耳にされた方も、このまま読み進めていただいて問題ありません。ループ図自体の詳細については、以下のブログ記事の解説もご覧ください。

バイト求人媒体はツーサイド・プラットフォーム

まずは理解を深めるために、一般的なバイト求人媒体について簡単に説明します。

ここでの一般的なバイト求人媒体というのは、街でよく見かけるバイト募集のフリーペーパーや、求人情報が検索できるアプリやサイトのこと。

毎月定額で求人情報を掲載できたり、求職者が採用されたときに手数料が発生するなど色々なパターンがあります。

詳しくは以下のnote記事でも解説してますが、とりあえず今はスルーしてもらっても大丈夫です。

基本構造1:マッチングが生み出す収益のループ

まず1つ目のループは、人手が足りていない事業者と、バイト先を探している求職者をマッチングさせることで、手数料としての収益を生み出す流れです。

媒体の営業担当者は、足繁く飲食店などを回って、求人広告の掲載を依頼します。他方、求職者に対してもCMやフリーペーパーの配布などで認知の向上を図り、利用者を増やします。

その結果、両者がマッチングすることで、手数料という形で収益が発生します。そこで得た利益・資金営業活動広告宣伝費に再投資することで事業が成長します。

基本構造2:利用者が媒体そのものの魅力を高めるループ

もう一つのループは、利用者同士が媒体でマッチングすることで、評判が良くなり、さらに多くの利用者を呼び込む流れです。

募集した店舗も、バイトを探していた求職者も、良いマッチングになれば「また次も同じところで探そう」となります。また「バイト探すなら〇〇が良かったよ」という良いクチコミも広がるかもしれません。

つまり、雇用主や求職者の利用体験がよければ、広告掲載店舗数媒体閲覧者数も増えます。そうすると、まだ利用したことのない人たちにとっても、その媒体の魅力が高まり、より多くの利用者を引き込むことになります。

この、お互いの存在がお互いの価値を高めあう状況を「ネットワーク効果(外部性)」と呼びます。特に、今回のように2者が互いに価値を高めあうような媒体のことを「ツーサイド・プラットフォーム」などと呼びます。

2者間の間接的ネットワーク効果

詳しくは以下のブログ記事も参照ください。

ということで前置きが長くなりましたが、ここからはタイミーのお話。

タイミーのビジネスモデルの3つの特徴

タイミーのビジネスモデルには、

  1. 相互評価データによるハズレ店舗/労働者の抑制

  2. バイトの面接を無くしてしまう雇用支援システム

  3. 給与の振り込みを非同期化する即日入金

の3つの特徴があります。

それぞれ、一般的なバイト求人情報媒体と比較しながら、解説します。

相互評価データによるハズレ店舗/労働者の抑制

バイト求人情報媒体では、クチコミが広がって、みんなが使い始めると問題行動を起こす求職者ブラックな職場環境の店舗などもどんどん流入してきます。

「前の職場はすぐにクビになったけど、これだけたくさん求人情報があれば、またすぐに次が見つかるはず。」「採用したバイトは3日で辞めてしまうけど、これだけたくさん利用者がいればすぐに代わりが見つかるだろう。」といった具合に、ハズレ労働者/店舗の割合は増加します。

これは優良な利用者にとっては迷惑な話で、ハズレに当たってしまうと利用体験は著しく低下してしまいます。

このような、媒体が望まないような利用者が増えてくる現象のことを「逆選択(アドバース・セレクション)」と呼びます。

これを解決するためにタイミーが導入したのが「相互評価データ」です。

タイミーは利用者同士をお互いに評価させる仕組みを作ったことで、利用者がミスマッチしてしまう可能性を引き下げることに成功しました。

バイトの面接を無くしてしまう雇用支援システム

一般的にバイトが決まるには、まずバイトの面接を行なって、採用なら雇用契約を結ぶといった流れになります。

しかし、その度に面接をして雇用契約を交わすのは、双方ともに時間を奪われ結構な手間になります。ましてや、一度で決まらなければ、一人を採用するために数回の面接することも。

従来のバイト求人媒体では、この辺りの手間をケアすることはできませんでした。そのため、双方の利用体験を損ねる要素になっています。

他方、タイミーが狙っているのはスキマバイト市場。つまり、短時間・単発バイトをマッチングさせることがニーズ対応になります。

初めて来たバイトに2〜3時間だけ働いてもらって、仕事が終わったらその案件という感じ。しかし1度きりになるかもしれないバイトに対して、毎回、面接をして雇用契約を結ぶのは現実的でしょうか?

現実的な解決策としては、人材派遣会社の登録制バイトを利用するなどの手もありますが、通常の直接雇用での解決策はありませんでした。

そこでタイミーが開発したのが、QRコードだけで雇用契約を完結させ(特許取得済み)、出退勤管理から給与の計算までを行うシステムです。

加えて、前述の相互評価データによって事前の面接も不要になりました。

このことによって、店舗側は人材派遣会社に依頼することなく、面接の時間調整も煩雑な雇用契約も交わすことなく、単発でバイトを雇えるようになりました。

給与の振り込みを非同期化する即日入金

当たり前のことですが、バイトへの給与の支払いは、会社都合のタイミングになることがほとんど。

労働者がどんなに早く報酬を受け取りたかったとしても、月末で締めて翌月に支払われる、といったタイミングになりがちです。

この給与支払いの遅さは、当たり前とはいえ、労働者・求職者にとっては利用体験を損ねる要因となっていました。

しかしタイミーは報酬の支払いを仲介することによって、支払いのタイミングを調整して、即日入金を実現しました。

この仕組みによって、労働者には仕事が終わった直後にタイミーから報酬が入金されます。また、店舗には通常通り月末で締めて、翌月に請求が届くようになっています。

この施策によって、求職者の「すぐにお金が欲しい!だからすぐに働きたい!」というニーズに対応することが可能になり、求職者の利用体験を改善するに至りました。

タイミーのビジネスモデルのまとめ

今回は、タイミーのビジネスモデルについて図解してみました。タイミーを例えるなら、従来のバイト求人媒体と人材派遣業の良いとこ取りをして、優れたユーザーインターフェイスでパッケージングしたという感じでしょうか。

実は、当初のタイミーの主要顧客は飲食店だったため、新型コロナウイルスの影響によってビジネスは大きな打撃を受けました。

しかし、メインのターゲットを物流倉庫などの軽作業に切り替えたことで、事業を回復させることに見事成功。2021年には投資家などから53億円を調達し、注目すべきスタートアップの1社に名を連ねています。

このコロナ禍での戦略変更などの詳しい解説については、以下のブログ記事で解説しています。ここまで読んでタイミーに興味が湧いた方は、ぜひブログ記事も読んでいただけると嬉しいです。

また、下記のTwitterでも情報を発信しているので、こちらでもコメント等いただけると大変励みになります。最後までご精読いただき、ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?