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値上げの論理

弊社は2023年1月に値上げの発表をしました。

4月入校のお客様からは新価格でのご提供とさせていただきます。
この記事では、今回の値上げについて少し詳しく説明をします。

「自動車学校の値段は高いですか?安いですか?」と消費者に問うと、殆どの方が「高い」と答えると思います。実際にお客様が自動車学校にお支払いする金額は様々に大なっている消費の中ではかなり大きい方になります。
しかし、人がレッスンを提供するビジネスとして考えると寧ろ安い方と考えてよいでしょう。

例えば、結果にコミットするRAIZAPさんは50分のレッスンを2ヶ月16回で298,000円で1レッスンの価格は18,625円となります。
某英会話学校さんはマンツーマンの40レッスンで308,000円で1レッスンあたり7,700円になります。
一方、オートマチック限定の自動車教習は31時限の技能教習と学科教習の26時限で弊社のベースの料金は258,000円となります。弊社の場合、技能教習は1コマ5,000円で学科教習は1コマ2,000円とあとは教材費や入学金などとなっています。
自動車学校のマンツーマンレッスンは技能教習の31時限のみなので一概には比較しにくいのですが、提供するボリュームはRIZAPさんや英会話学校さんよりかなり多いわけですが、総額は低めで、マンツーマンレッスンの単価も低めになっています。

類似の業態であれば価格を上げてしまえばいいと誰もが思うことですが、自動車学校業界は長年それができケースが多いのが現状です。
その原因は、簡単に言ってしまうと経営者の努力不足といってよいと思います。消費者は良い商品・サービスは高くても購入しますが、悪い商品・サービスはどんなに原価が高くても購入しません。適正な価格で商売をしたければ適正な品質の商品・サービスを作らなければなりません。
しかし、少なくとも佐賀県の自動車学校は今でもその努力に経営リソースを割いてきていません。昔はあまり営業努力をしなくてもお客様が来ていた業種だったのですが、人口減少によりマーケットが小さくなる中で殆どの自動車学校がとった施策は、現場に負担を強いて徹底的なコストダウンを図り、価格を上げないことに努めることで入校減を防ぐ経営に取組んできていました。日本の人件費は基本的にはゆっくりと上昇傾向にありますが、その中でこんなことだけに終始していれば現場で働く人たちはどんどん疲弊していきます。そうするとサービスの品質の低下が進み、価格を上げたくても上げられない、そういうスパイラルに陥ってしまいます。そのスパイラルを抜けだすために、経営者は自社の商品・サービスに如何に付加価値をつけるかの努力をしなければなりませんし、健全な業界はその努力を競争するものです。しかし、佐賀県の自動車学校業界は競争は現場の厳しい負担で競争をしてきたと私は感じています。

弊社はここ数年、このスパイラルを抜けるための努力に取組んできました。よいサービスは労働環境の改善なしに行えないため、代表に就任して最初に取組んだことは年間労働時間の短縮と基本給の引き上げです。単にそれだけを行っただけでは組織のパフォーマンスは上がらので、時間の使い方とお客様視点に関するマインドセットを育む努力に努めました。
また、組織へのロイヤリティを高めるためには分かりやすい成果を出す必要があるので、ビジネスの規模をしっかり上げることや会社の知名度を高める努力も合わせてしっかりと取組みました。その結果、弊社の現場は自律的に成長する流れができつつあり、それは様々な数値でも結果として現れ始めています。現在、よりよい教習・よりよい顧客体験を提供すべく現場は様々なことを考えて改善を繰り返しています。
こうしたことの結果、弊社が取り扱っている自動車の免許の多くは競合よりしっかりと数字がとれています。競合が価格勝負を仕掛けても負けないようになってきました。Googleの口コミも高まり、最近行った市場調査を行った結果でも県内での認知度はトップクラスとなり印象の良さでは競合を大きく上回っています。競合より大幅に高いオプションサービスも、販売すれば必ず売り切れます。
こうした状況から、弊社は現状の価格から適正な価格に調整してもマーケットからご理解を頂けると判断し、値上げに踏み切ることとしました。本音をいうと評判の悪い競合校は我々の値上げに追随せず、「安かろう悪かろう」でやって頂いた方が競争戦略上は有利になるので助かるのですが、自動車学校業界の収益性は免許行政の維持のためにとても大事なことなので、競合が弊社から学んで真似をすることは容認したいと思っています。

価格を上げるなら上げるで、そこにも哲学が必要です。「よりよい教習体験を提供するために必要となる投資や費用を販売価格に転嫁する」というのが今回の値上げの基本姿勢としています。現在、全体の価格テーブルの調整をしており値上げ額は確定できていませんが、ざっくりな方針は下記の様に定めています。
まず、自動車学校のサービスの根幹は優れたインストラクターが優れたコーチングによって得られる学びの質を高めることです。自動車学校はここにこそコストをかける必要があるため、そこにかかる費用は技能教習単価に転嫁をします。学科教習はテクノロジーを活用した効率の良いティーチングになるのが今後のトレンドと考えられるためそこに投資は必要ですが人件費が圧縮できるため学科教習の価格は据え置き、事務手数料も同様の考えて据置きの方向で投資をしつつもコスト増にならないようにすることが理想的だと思っています。
人と人が接するサービスにはしっかりとコストをかけながらもデジタル化を進めるべきところは進めることでお客様の満足度も収益性が上がる仕組みを構築することが今回の価格戦略の要諦です。スクールビジネスにおいては、人が行うべきサービスをデジタル化して価格を抑える努力は将来に禍根を残しお客様の不満を増やす可能性が高いのでこのあたりの見極めは誤らないようにしたいところです。

昨今、人口減によってマーケットが小さくなるだけでなく、生産労働人口の減少で人手不足も深刻になる傾向にありますが、価格戦略はこういった環境の中だからこそとても重要になります。小さいマーケットの中でもしっかり売上を立てることができる、それを働く人たちにしっかり還元できる会社こそが少子高齢化の中でも生き延びることができる会社になるでしょう。

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