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パッケージデザイナー向け金型知識~その3~

前回は「抜き勾配」のお話をしました。型の特徴上必ず斜めの面ができてしまうわけですね。
今回はその抜き勾配によって、サイコロはおみくじになることをお話したいと思います。


■サイコロ→おみくじとは?

比喩がわかりにくくて申し訳ありません。おみくじってのは画像のやつです。あのガラガラやって数字が書いた棒が出てくるやつですね。
つまるところが六角柱です。

で、サイコロがコイツになるという話ですが、要するに立方体は六角柱にならざるを得ないという話です。

一般的に型は下の画像のように、前後、左右、ないしは上下に開くように設計します。(画像1)
型は6面体が基本なので、この3パターンが基本的な開き方です。加えて、型の割り部分を変えることでプロダクトとしてきれいになるように設計します。

(画像1)

ただし、前回の抜き勾配の法則より、型が開く方向に平行な面は必ず勾配がつけられます。結果的に型は以下の画像のような形になります。(画像2)

(画像2)

そうなるとサイコロ状の形状を作ろうとしても画像3のような微妙な六角柱になってしまいます。

この現象によって、特にボトル系のパッケージは水平垂直の面がスパッと出ず、ブサイクになりがちです。
これが出来上がってみると、想像以上に商品が微妙になる原因の一つです。

■攻略法はないのか?

では攻略法はないのか。実はいろいろあります。ただ、どの方法も当然ながら一長一短なので、それぞれの特徴をざっくり挙げてみたいと思います

・勾配が付く面を曲面にする
 →スパッとしたモダンなイメージにしづらい
・思い切ってガッツリ六角柱形にする
 →割とゴツゴツする。男性的な印象になる
・ギリギリまで勾配を小さくするよう打診する
 →不良率が上がったり歩留まりが悪くなる可能性が上がる
・型が開く方向に製品の深さを浅くする
 →形状が限定される。容量を保てない。
・秘技斜め抜き
 →抜き深さが深くなり、抜けにくくなる
・奥義スライド型
 →最強の奥義。かなりわがままが効くが、とにかく価格が上がる。

この辺がちょっとしたテクニックになります。正直どれもめちゃくちゃ詳しくなる必要はないと思いますが、お仕事をつなぐタイミングでこういう知識があると、より深い提案ができるかもしれません。

■ちょっとまとめ

ここまでの三回分の記事をぱぱっとまとめます。

①想像より実物がしょぼい理由の一つは、型の得意・不得意に完成品が依存するからだ

②型の特性上発生する「抜き勾配」は、完成度を下げる一因だ

③抜き勾配は工夫次第でうまくごまかすことができる

とりあえずこんなところでしょうか。
すごく単純な法則なのですが、実際の商品になると、形状が複雑で、思わぬところで型が抜けないなんて問題が起きたりするものです。無理にそれを実現するために高額の型代を請求されることもあるかもしれません。
また、逆にシンプルでモダンな形になるほど、勾配は目立ってきます。
このあたりは、外注費の節約にも関わってくるので、ぜひ興味を持っていただけると嬉しいです。

今回はこのあたりで筆を置きます。

次回は外注先にどんなデータ形式で渡しているのかと質問があったので、
設計CAD業界のデータ形式についてお話したいと思います。


(トップ画像:https://www.kai-wai.com/area/atsubetsu/2436より)

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