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【第2回】授業で学生の注意(関心)を引き出すには?② 看護教育実践例と疑問

~看護教員から、教育学者へ~

「授業改善の学習会」に臨む私のワクワク

 私は千葉中央看護専門学校で副校長(教務主任兼務)をしている梅澤明美です。助産師として10年間勤務してきましたが、その臨床経験よりも看護基礎教育に携わる年数のほうが、長くなってしまいました。
 教育経験が長くなっても、「学生の反応がよく、テストの結果もよく、私自身も納得できるような講義」を常にできている訳ではありません。講義の後には、毎回何かしらの課題が見つかり、次年度に活かす、その繰り返しです。
 このnoteでARCSモデルについて学べると聞き、ワクワクしています。正直なところ、ARCSモデルについては、意図的に授業に活用するほど理解はできていません。今回、一緒に学んでいく当校の教員たちのなかには、「初めて聞いた」という者もいます。5人の教員で学び合い、意見交換したことを、梅澤が記事にまとめていこうと思います。

学生の「関心」を引き出すために私達が工夫していること 

1.学生の知覚に働きかける
 横田先生が担当している「看護学概論」では看護理論について学びます。ただ、文字だけで説明しても印象に残らないので、それぞれの理論家の写真を添え、身近に感じられるように工夫をしていました。
 私は、できる限りワクワクする授業のテーマを設定する努力をしています。例えば、「医療安全(全15回)」の授業の第2回目は、教科書的なテーマ「事故発生のメカニズムとリスクマネジメント」のサブテーマを「人は誰でも間違える それなぜ?」としてみました。また第7回目の授業では、教科書的なテーマ「看護師の労働安全衛生上の事故とその防止方法」を、「医療事故の被害者は患者だけではない~自分を守るために知っておくべきこと~」と変えてみました。
 このように横田先生や私が行ったことは、視覚に働きかけて学生の関心を引き出す方法になっていたのではないかと思います。
 板倉先生は、人工透析の授業の際、ダイアライザー(血液中の老廃物や余分な水分・電解質を透析液に移すための筒状の濾過装置。腎臓の糸球体と同じ働きをする)の断面を実際に触れてもらい、イメージしやすくしていました。これは、学生の触覚に働きかけた方法であったと思います。
 どの教員も意図的に実施していたのは、声に抑揚をつけることです。これは学生の聴覚に働きかけ、関心を引き出すことに繋がるのではないかと思います。

2.授業外で体験してくる課題を出す
 横田先生は、1年生の入学後間もない授業の中で、看護の対象を理解するために、授業で習った視点で、学生の身内1名を選んで観察するという課題を出しています。
 今回のメンバーではありませんが、基礎看護学の授業担当者は体験課題をしばしば出します。例えば「清潔」の単元では、3日間頭を洗わない状態にして他者に頭を洗ってもらう体験をする、「活動」の単元ではあおむけで動かずに寝ていられる時間を測る、などです。
 看護学校では、患者さんの気持ちを理解するために体験課題を出すことはよく使われる方法です。患者さんの気持ちに近づくことで、看護として何をしたらよいのかを学びたくなってくれるのではないかと思います。

3.学生主体の授業方法で探求心を喚起する
 私は、母性看護学概論の中で、「女性の健康の保持・増進を目的とした健康教育」として、8つのテーマを設定して、興味のあるテーマを選んでもらっています。ただし、学習目標の達成という観点から、どこかのテーマに偏ってしまわないよう第3希望まで聞いて、概ね第2希望以内に入るよう調整をしています。学生たちは、さまざまな方法で情報収集をして学んでいきます。最後に発表会をするのですが、どのグループも大変よい発表をしてくれます。
 横田先生は看護学概論の授業で、国民の健康状態に関するデータをグループで読み取り、資料作成・発表を行ってもらっています。学生の反応は、「授業から発表まで約1週間だったので、テーマの情報を集めたり、文にまとめたりしてとても大変だった」という声もありましたが、「今回の授業を通して『なぜ、どうして』を考える癖をつけることができました」という学生もおり、能動的に学び合う機会となったのではないかと思います。

4.授業に変化をつける
 板倉先生は、90分の授業の中で、教員が話す時間、個人ワークをする時間、隣の席またはグループで意見交換をする時間、発表の時間を持つようにしているということでした。これは、どの教員も出来る限り意図的に実施をしていました。
 しかし、すべての授業で……という訳にはいかない現状もあります。1回の授業内で伝えなければならない知識量が多い場合は、教員が一方的に話す時間が長くなりがちです。3年間で卒業し、同時に看護師国家試験に合格するためには、最低限修得しなければならない知識があり、それは結構膨大です。伝える知識が多い授業で変化をつけたいが、そうしていると授業が終わらない……そんなジレンマを抱えています。
 青葉先生や酒井先生は、なるべく自分の経験や臨床での例を交えて説明をして、学生が興味を持てるようにしているということでした。当校の教員は、臨床経験が豊富なので、ここは得意分野です。学生も興味津々に聞いてくれます。
 学生がよく知っているような芸能人の例をあげて説明することもあります。例えば、熱傷の授業の際には、芸能人のヒ〇ミさんの大火傷を負った話や、成人期の発達課題を学習する際に、白血病を患った水泳の池〇選手の話などを出したりして、イメージがしやすくなるよう工夫しています。
 このように、私たち教員の体験談や芸能人の話をすると、学生の興味を引くことはできますが、話だけを覚えていて、肝心な学習内容と結びつけられていないということが時々あります。授業自体に変化はつけられたとは思いますが、学習内容との紐づけがされないと意味が半減してしまうようにも思います。西野先生はこのようなご経験はないですか?

学生の関心を引き出すためにこれからやってみたいことベスト3

1.よい発問をしたい
 「発問」はとても重要であり良い「発問」は学生の思考を深める、と研修で学んできました。どの教員もそれはわかっています。しかし、学生の関心を引き出すために「発問」をしています、と言った教員は誰もいませんでした。それはなぜか? 自分がよい発問ができていると思っていないからです。探求心を喚起する「発問」ができるようになりたいです。西野先生、どうしたらよい発問ができるようになりますか?

2.学生の興味を引く授業のテーマをつけたい
 とはいいながらもなかなかこれは難しいです。頭が堅いので、なかなかグッドタイトルが思いつかず、授業当日を迎えてしまうことがしばしばあります。学生の興味を引く「タイトル」の付け方のコツを知りたいです。
逆の発想で、授業後に学生にサブタイトルを考えてもらうようにするというのはありでしょうか?

3.学生の疑問を中心に授業をしてみたい
 テキストを読んで、疑問に思ったことを1つ以上挙げてもらい、そこを中心に授業を展開してみたいです。ただ、自分の力量では難しいと思ってしまいます。実際に行うにはどうしたらよいか、西野先生にアドバイスをいただきたいです。

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