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【7日間ブックカバーチャレンジ(7/7)】 竹内均 監修、ケヴィン・W・ケリー企画/編集『地球/母なる星 ― 宇宙飛行士が見た地球の荘厳と宇宙の神秘 』(1988年12月10日), 小学館


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「無自覚の自覚(awareness of unconsciousness)」について考えていた時期がありました。もともとは学生時代に(記憶が確かならば)大学の書庫にあったアメリカのビジネス誌「FORTUNE」の記事で見かけたIDEOが「観察(Observation)」をデザインプロセスの中で重要視していて、人々の無意識の行動にこそデザインのヒントがあるということをもとに、よく思っていたキーワードです。

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人々は、日常を生きる中で、何を見ていて、何が見えなくなっているのか。「いま」「ここ」に集中することは重要であるが、「いま」「ここ」が存在するのは、「かつて」と「これから」、「あちら」と「こちら」、という時間軸と空間軸があってこそ、「いま」「ここ」が存在する。

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人によっては、「いま」の認識も、「ここ」の認識が異なるのだと思います。オフィスワーカーであれば、「いま」というのは、今日このタスクを行っているほんの数分から数十分の"意識"であるかもしれません。「ここ」というのはオフィス内のしかも自分のデスクの、さらに小さなパソコン+ほんの30cm程度が私の空間(パーソナルスペース)であるかもしれません。極端な例ですが、その狭い範囲で生きる人はどれほどの"世界"が感じられているのだろうか。多くのことが見えていないのでないだろうか。

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観じられている、と、「観る」という漢字をあてた方が良いのかもしれません。現在の人の時間感覚、空間感覚はどれほどのものなのだろうか、などとよく思いを巡らせていました。もちろんこのように書くのは「過去・現在・未来」という時間感覚、「あちらとこちら」(此岸と彼岸)という空間感覚が大切ではないかと思うからです。いま、この、行動が、過去・現在・未来、あちらとこちらの中で、どのような変化または効果をもたらすのか、ビジョナリーと呼ばれる人々、歴史に名を残すような人々はそのような「時空」の感覚、想像力が異なるのではないか、などと思っていました。

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宇宙は、いつも私たちに豊かな想像力を提供してくれます。現在の宇宙が138億光年前に始まったというのは、情報として知るまでであって、その現実味や体感はなかなか得られるものではありあませんが、人類がそれを追い求めて、今現在においてそこが起源であると探究し続けたことに感銘を受けます。

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宇宙物理学者の本をいくつか読んだり、先生方の講演を拝聴していたりしていて思ったのは、生命や進化の過程を振り返れば、私たち人類が地球という星の成分でできていて、地球が宇宙にある成分でできているとするならば、138億光年前の宇宙を見ようとすることは、私たち(の祖先)が生まれた過去を見ようとすることでもあると。その私たち自身のアイデンティティを確かめるかのように、科学は進化し、道具を手に入れ、より広い宇宙が見えてくる。その「見えないものを見ようとする」行為が、私たちが地球上で生物最強を誇り、支配し、改変しようとする強大な力を持とうとする中で、まだまだほんのちいさなガラスのビー玉(ガラスの風鈴という表現のほうがその儚さが伝わるかもしれない)に住まうちっぽけな生命体であること、謙虚さを思い出させてくれます。

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「ガイア理論」を提唱したジェームズ・ラヴロック、100歳にして上梓した新刊『ノヴァセン』では、人類を頂点とする人新世(アントロポセン)から、「超知能」と人類が共存する時代(=「ノヴァセン」)へと移行する、つまりは人類はノヴァセンへの移行のための中間的存在であると語られている。こうした概念がどれほど私たちに影響を与えるかは、定かではありませんが、少なくともこうした自分たちの由来と将来に想像力を働かせ、「いま」「ここ」を観るための一つの参照点として、超視観的に現在を捉えることができれば、些事の衝突に時間を費やす事なく、それぞれに与えられた時間をどのように使うかに、発想を変えられるのではないかと理想論的な妄想をします。

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本書は、古書が市場に流通し、なぜかプレミアもついていないので、ぜひ一冊お手に入れてみていただきたいと思っています。宇宙飛行士たちが宇宙空間で見た地球を外から見たときの言葉、そして大型本による迫力が訴えかける今まで見たことがないような地球の姿の写真の数々に、いっとき自分の今いる場所に思いを馳せるような経験ができると思います。

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地球上に生きる人々が、それぞれの文明・文化は尊重しながらも、138億光年の無限とも言える宇宙に浮かぶガラス玉のような繊細かつ奇跡のバランスで生きているたった1つの地球を共有する人々が、争いなどに時間を費やすのではなくて、いかに共に生きる時間を豊かなものにするかに、時間を費やすことができたら、本当に素晴らしいですね。

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「最初の一日か二日は、みんなが自分の国を指していた。三日目、四日目は、それぞれ自分の大陸を指さした。五日目には私たちの念頭には、たった一つの地球しかなかった。」
– スルタン・ビン・サルマン(サウジアラビア)


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ブックカバーチャレンジは、「読書文化の普及に貢献するためのチャレンジ」として始まったとされていますが、その起源によらず、こうして書籍を再び手にとって、ページをめくり、時と共に変化した紙面の香りを嗅ぎ、出会った当初の自分に思いを巡らす体験はとても豊かなものでした。バトンを回していただいた 松野克彦 さん、ありがとうございます。

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