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萩尾望都『私の少女マンガ講義』『一度きりの大泉の話』

この記事は、日本俳句教育研究会のJUGEMブログ(2021.12.11 Saturday)に掲載された内容を転載しています。by 事務局長・八塚秀美
参照元:http://info.e-nhkk.net/

『ポーの一族』の40年振りの続編連載・刊行も話題の萩尾望都さんですが、今回はマンガではなく、イタリアで開催された講義が中心となった『私の少女マンガ講義』の文庫版と、話題作『一度きりの大泉の話』です。

『私の少女マンガ講義』

イタリアで日本ならではの文芸である少女マンガについて語ったものですが、「女性と権力をめぐる」物語である『リボンの騎士』と『大奥』で始めと終わりを締める大変興味深い講義で、日本人である私自身も萩尾さんの語る少女マンガ史を楽しませてもらいました。また、個人的に読み応えがあったのが、萩尾さん自身のマンガである「半神」「柳の木」「ローマへの道」「イグアナの娘」の実際のページを引用しながら、具体的にマンガの読み方を解説しているところで、なるほど、と面白く読み進めました。また、3・11以降に書かれた作品についてのⅢ章も有意義でした。『残酷な神が支配する』以降は、『ポーの一族』の続編は辛うじて追えていたものの、遠ざかりぎみだった萩尾マンガを、また手にとってみたくなりました。

『一度きりの大泉の話』

萩尾さんがこれまで全く語らなかった大泉時代について言及した一冊ですが、結果として、私自身が大好きな萩尾さんの少年が登場する作品群、『ポーの一族』『トーマの心臓』などを書くことになったいきさつなどを知ることができて、作家&作品論など、いろんな方面からのアプローチを見せてもらえた意味でもファンとしてとても面白く、また、嬉しく読みました。

『11月のギムナジウム』は兄弟の話だし、『トーマの心臓』は愛以前の混沌とした人間関係の話です。『小鳥の巣』は吸血鬼の出てくるオカルトです。たまたま寄宿学校が舞台ですが、少年が自由だったので少年を描いたまでです。
その後、私は少年の自由から女の自由について少しずつ考えるようになります。男の自由、不自由についても。人間と自由。社会性と自由。奥深いテーマです。

萩尾望都さんの作品を読み返したくなったのは言うまでもありません。名作たちをひっぱりだして、萩尾ワールドにドップリ浸かる日々が続いています。