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イノベーションを起こすには、 あなたの "-able" をはじめよう。

最近よく耳にする ”イノベーション" 
人によって使い方はさまざま。

では、イノベーションとは、具体的にどんなことだろう?
イノベーションの研究者であり実務家の田村大氏よりお話を伺った。
田村氏は、コンピューターサイエンティストを経て、現在 ”持続的にイノベーションが起こる生態系(=エコシステム)を研究し(Think)、実践する(Do)、シンク・アンド・ドゥタンク” である Re:public Inc.の共同代表をされている。

田村氏の図によると、こういうことらしい。

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どういうことだろう…
具体的に伺ったので、印象的だったお話をまとめる。

目次
1)そもそも、イノベーションを起こすのは難しい。
2)イノベーションに最も必要なリソースとは?
3)近づく限界費用ゼロ社会、みんなはどう生きる?
4)イノベーション事例:バルセロナ的思考
5)イノベーション事例:人々の暮らしをつくる文化
6)”-able” をはじめよう


1)そもそも、イノベーションを起こすのは難しい。

田村氏のお話は「科学的なアプローチによる目的設定も含めて、デザインできるのか?という問いに答えるのは極めて困難。」という話から始まった。

” 何の為にイノベーションをするのかも含めて、イノベーションを起こすのは難しい。イノベーションは結果論のことが多いと思う。”

とのこと。

2)イノベーションに最も必要なリソースとは?

” 人 。”

お金も、技術も、情報もどれも必要だが、まず人がいないと始まらない、どう使うかが重要とのこと。


3)近づく限界費用ゼロ社会、みんなはどう生きる?

そんな "人" が、" 消費者 " と呼ばれたらどうだろうか?
なんだか温かみを感じない。

昨今、限界費用ゼロ社会という本が流行ったが、資本主義の終着点は、コストゼロ(商品やサービスがタダで手に入る)の世界に向かっていこうとしている。

イメージしてみると・・・
通常、生産者が価値を提供することで、消費者が価値を享受する。

生産者
-----------
消費者

その状態が、限界費用ゼロ(コストゼロ)に近づいていくと・・・

???
-----------
消費者

医療、教育、食生活、育児も、AIに代替されていき、無機的な社会となるだろう。この事象への良し悪しは判断つけかねるが、気持ちわるいと感じる自分がいる。
うまく取り入れ、より快適な暮らしへと導くにはどうしたらよいだろう。
個人的に、そんな世界を打破していくのがイノベーションの役割でないかと思う。


4)イノベーション事例:バルセロナ的思考
田村氏は、都市におけるイノベーションの事例として、スペイン バルセロナでの『ファブシティー宣言』をご紹介してくださった。この取り組みは面白いし、凄い。

▶︎Spain Catalonia Barcelona
『ファブシティー宣言』とは、「人口1万人につき、1つのfab labを作る」という宣言である。背景として、バルセロナ住民が、仕事をしていない時間を利用し、自分たちの身の回りの物を自分たちで作ろうという考えが採用され、実施された試みだ。

驚きなのは、この取り組みから、住民自らがサービスを開発していること。
個人的に、イノベーションを起こしやすい環境設定と、そういった意識を持ち、形にできることが大きな要素ではないかと思う。

そうして、市民が普段気になる生活への課題(店で飲まずに街中に酒を持ち寄り、地べたでたむろする、それが騒がしく課題だったよう。)を解決すべく、住宅街の建物一軒一軒に音量データを計測できる装置をつけ、音量を計測する「Citizen sensing ※正確ではない」というアプリを開発、音量データを計測して、改善提言をしたそう。

たしかに、アプリなどサービスの利用する生活者が、生活者視点で開発するのは理に適う。問題を自分たちで解決してよりよい暮らしを目指そうとする姿勢、それを実現できる環境があることが、イノベーションが起こる重要な要因ではないだろうか。


5)イノベーション事例:人々の暮らしをつくる文化

▶︎ニューノーマル@佐賀県

佐賀は「なんもなか~」と言われもするが、伝統工芸が有名な県。
しかし、伝統工芸品は、傷つかないように取り扱い注意が求められ、日常に扱いづらい点が多く、なかなか手に取られにくい。
(私も親戚に備前焼の職人がいるからよくわかる・・)

そんな佐賀県民の課題意識とリパブリックが出逢い、新しい県民運動を起こそう!と、佐賀の強みを活かして生まれたのが『ニューノーマル展』
佐賀のライフスタイルを考え、体験する展覧会だ。

この取り組みにより、自分たちの生活に伝統工芸をうまく溶け込ませられるようになったそう。

価値を理解する当事者が、自分たちの手でうまく編集しリメイクすることで、新たな価値提案をする構造は、上記のバルセロナの課題解決の構造と似ている。

ここで、人々の暮らしに大きく関係する「文化」について考え、佐賀の事例を観てみる。

個人的に、日本文化がとても好きだし、世界の文化にも関心がある。
ただ「文化」という言葉を正しく理解しているかというと、どうだろう。
田村氏からは、京都大学経営管理大学院で准教授をされている山内裕氏の言葉を引用し、ご説明いただいた。

” 文化とは、常にズラされた概念で、
他のものとの対比でそれを位置づけるものであり続けてきた。”

つまり、” 文化とは相対的なものである。”と。

ニューノーマル展は、県民が自ら「文化」を暮らしに取り入れようとデザインしたということだ。

理解のために、言葉を置き換えると、” 県民は、商品や作品という価値を、どのように使うかという利用文脈と共に、受け手に届けた。受け手は、商品や作品単体(完全な自由意思)では使い道がピンとこなかった状態から、県民に提案された利用文脈(ここでいう「文化」)によって、価値を見出し(文化に共感し)、楽しく日常生活に取り入れる発想が湧いた。” ということだろう。

作り手と受け手の間を曖昧にしていくようなイメージが大切なのではないだろうか。

6)”-able” をはじめよう

” able=何かができる ” をはじめよう。

商品やサービスを使う側だけにとどまらず、自分たちにできる何かによって、自ら価値を生もうとすることが重要で、それが生活に根付く文化へと繋がっていくよう。

今の自分にまずできることを始めよう。
そう考えるだけで、何か新しい日常が生まれていきそうな気がする。

田村氏のお話を伺い、私がイノベーションをひと言で表すとしたら・・・

" 現状のモヤモヤを、人がワクワクする未来を描き、形づくることで、
「未来を今」としていくこと。"


課題をそのままにせず、いかに楽しいものに変えていけるか
今、私にできる ” -able  " を実践していきたいと思う。

情報元:
武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第1回 田村大氏 2019/04/10