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僕が車の窓を直さない理由


世界を違った目で見つめたいな、と思う。

サーフィンをまじめに練習するようになった。
それは、僕のまわりにいるガチガチではなく、みんなで波をシェアするピースフルなサーファーのみなさんがこう言うからだ。

「この風やったら◯◯うねりやからさ、あそこがええかも。」
「来週に波があがるからな、今週しっかり仕事して来週はサーフィンいこ。」
「こないだの台風で地形がよくなったからこの夏はいけるぞ」

サーフィンやってへん人にとっては彼らの会話は宇宙のようだ。
なに言うてんねんやろ。聞いていてひとつも映像が浮かばない。
だからやろう。そう思った。彼らと同じ世界を見てみたいから。


このあいだは岐阜のかっちゃんに会いにいった。
かっちゃんは最近アホみたいに夜中に釣ったナマズの写真しかあげてない。当然のごとく「いいね」は少なくなってきている。毎回あがっているナマズの写真がほぼ変化がないからだ。同じように見えるに決まっている。それなのにかっちゃんはナマズの写真をUPし続ける。なにを考えてんのやろ?

だからかっちゃんにこう言った。
「かっちゃん!ぼくもナマズ釣りに連れて行ってくれ!」
夜中の1時まで居酒屋を開けて、片付けをして、2時からナマズ釣りにいった。
まぶたにレンガが付いてたか?と思うほどまぶたが重い。

しかしだ。慣れない手つきでポコポコ水面を泳ぐルアーを、川の草のわきの流れているところに投げた瞬間、ガバッ!!!となにかが水面に出てきた。

わ!あれなんやねん!
まーくん!それナマズや!
えー!すげーやん!

夜中に静かにテンションのあがるアホ2人組はそれから黙々とルアーを投げ続けた。
水門の水しぶきがあがっているところにルアーを浮かしていた僕は、突然竿が重くなっておったまげた。あわてて竿を振り上げたら黒いヌメッとした巨大なやつが一緒にあがってきた。おいおい釣れてもーた。

すげーやん!まーくん!
お、おう!かっちゃん!

そのあとも何度もあたりがあったものの、かっちゃんもぼくもそのあとは釣れなかった。もう1mmぐらいしか開いてない目で夜中の岐阜を見つめながら(うそだ。寝ていた。)お店に帰って爆睡した。かっちゃんは相当悔しかったらしい。

このあいだ名古屋で大雨だった日にぼくの車のパワーウインドウが壊れて、しかも下がった状態で壊れてしまった。どんなに雨が降り込もうとも、もうパワーウインドウのスイッチはカチッという感触だけ残して窓は沈黙したままだ。

あれから2週間は経過した。いまだに窓は締まらない。当然だ。直していないからだ。

今日は高知で豪雨となり大雨警報が出た。
びっくりした。旅でお世話になったかたに挨拶をして、店を出て運転席を見たらシートが池になっていた。池にだ。

一瞬固まったが、見送りに出てきている彼らにそのことを悟られないように、ありがとー!と言ってそのまま席に乗り込んだ。一瞬でジュワッとパンツまで水分が染み込んだ。それでもぼくは最高の笑顔のまま彼らに全開の窓から手を出して手を振り続け出発した。

この2週間。何度も何度も雨が降った。何度も濡れた。
今日の豪雨なんてぼくの右半身はびしょ濡れだ。

雨が降るたびに、ぼくは考える。

えっと、作業するのにどこいこ?どこの駐車場に屋根があったかいな。
雨降るから車止めるのは壁際にしてちょっとでも雨を降り込ませない!
やべ!このトンネル2kmある!息が止められるか!吸うとやべーぞ!

こうして僕は車の窓が壊れてくれたおかげで、壊れなかったときには考えたこともなかった視点で世界を見つめ、そして行動をしている。これは紛れもなく自分に新しい世界を届けてくれているということなのだ。表現を続けるためには、常にインプットを生み出さないといけない。だからこそ。


最後に一言だけ付け加えようと思う。
早く梅雨が終わらないだろうか。

僕は車のパワーウインドウが壊れたおかげで、おそらく日本一「梅雨の終わりを待ちわびるオトコ」になれたのだ。

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