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ひとと会わない日のお話。

ひとと全く会っていないわけじゃないんだけれど、なんだかそんな気持ちになったのでこのタイトルにした。なので写真や本文とは関係ないのかもしれない。

アイヌの家族とともに過ごした阿寒湖をあとにした僕は、今回の北海道地震の被災地に向かってルートをとる。そのあいだの写真たちだ。


どこかのレンガ倉庫。北海道にはこういった古い建物がたいして直されるわけでもなく、そのまま使われていたりして残っているのがどの町でも印象に残った。地震が少ないから?お金を生み出すために建て替える必要がないから?お家にしても、お店にしても「きっと何十年もこの姿なんだろうな」なんて思うことが多かった。

「国道はいやだ」交通量の多い道路にうんざりして地図を広げる。
うん。こっちにしよう。と走っていると見覚えのある風景に出会い自分がとまどう。おいおいもしかしてと走った先にはこの夏にお世話になった友人の家があった。突然に訪問にもかかわらず泊めていただけることに。
それにしても自分が車に乗せてもらっているときの集中力のなさよ。ぼくは車に乗せてもらっているときは風景は見ているけれど道を覚えるのが苦手だ。


交通量の少ない道路は自分に入ってくる情報量が多い。木々の姿に野に咲く花々、におい、風がふくことで生まれる音たち。おんなじところを走っていても、車がビュッとくるだけで、僕のキャパはそっちに持っていかれてしまう。それでそこにある自然やものを自分に取り入れる分のキャパがなくなってしまうのだ。


野菜の無人販売所のとなりには、山からひいた水が止まることなく流れていて大きなバケツがあった。そこに買ったばかりのトマトを浮かべて食べた。ついでにコーヒーのためのお水も汲ませていただく。自然の水道が、僕は好きだ。

阿寒のアゲさんに教わっていた彼が大好きな食堂に立ち寄った。おばさんふたりがテキパキと動き、カウンターには常連さんの姿。店のおもてには、ワンちゃんを抱っこするおじちゃん。きっと愛犬とともに旅をするおじちゃんなんだろう北海道ではそういったかたを多く目にする。

昔ながらのラーメンとともに、おばちゃんが手渡してくださったのはラップにくるまれたトウモロコシの湯がいたやつ。
「今日届けてもらったの。いただきものだけれど、どうぞ。」
恩着せがましくない、そのさりげなさが嬉しかった。

川沿いに見つけた広場。この樹の下でテントを張らせてもらうことにした。少し早めだったからゆっくりと本を読んだり、ごはんを作ったり。日が落ちてから、遠くに太鼓の音が聞こえて神社まで歩いてでかけたりした。

夜明け。黒っぽい藍から色が抜けて赤みがさしていく。

朝晩冷え込む北海道の夏。こうして深い霧が出ることも多かった。日がある程度高くなるとサッとなくなり青空が広がっていくのをいつも不思議に思う。

おおきなおおきなタマネギ畑。ごろごろごろ。抜いたところに転がしてある。ある程度、葉を枯らしてから収穫するのかな。それとも。

帯広で食べた塩味のとんこつラーメン。しっかり塩が効いていて、けどスープはさらっとしていてちぢれ麺と相まってほんとに美味しかった。そしてここも女性が切り盛りしてはった。北海道はラーメン屋にも○○食堂みたいな名前がついているところが結構あって、それで女性が作ってらっしゃるところも多かったのが印象的だった。

帯広駅前でコーヒーを淹れた。ちかくで、キリスト教の聖書を配られている宗教団体の方々がおられたのでよかったらコーヒーどうぞ、と伝えるとみなさん飲みに来てくださった。なんでこんなことをしているのか、といういつでもどこでもいただく質問だったけれど、こうしてまちで自ら声をかけるのではなく、興味を持って来てくださる方を待つスタイルの彼らにもなにか感じることがあったのか、その質問には興味本位というよりも、なにか自分たちの思いをかさねているような響きがあった。

写真のおじさんは通称「帯広のコウモリ」さん。ご自分で名乗られていた。
ジャンパーのポケットには道端で拾った吸い殻たち。
毎日お寺めぐりと掃除。
泊まるところなかったらいつでもうちに来な。
誰かに騙されても、誰かを騙すような人になるよりずっとマシ。
数々の言葉を残し、帰られた。いまでもときどきメッセージをくださる。

幸福駅。

牧場。

手ぬぐいを干して、ソーラーランタンを充電して、スピーカーで音楽を聴く。このころはNUJABESをヘビーローテーション。

朽ちようとしている木造の建物。なんだかこういうものに惹きつけられる。

大きな川を渡るたびに、下を覗いた。流れの中心にいくつかあるのが遡上するサケ。海の近くだと元気だけれど、内陸に入ってきて銀色が剥げてきているやつはお疲れ様と声をかけたくなる姿。

いよいよ太平洋側に出た。ここから講演で以前訪れたサラブレッドの産地である浦河町を経由して被災地に向かう。


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