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自然に浮かんでくる気持ちが変わってきた。

「MAY I HELP YOU ?」
であってるかいな、これはいらっしゃいませ、かいな?とにかく夜の京都駅前のスタバには夜行バスを待つ外国人の方々がいた。みんなちょっと深刻そうな顔でなにかを言い合ってる。僕は夜行バスをここでもう2時間待っているだけの、いてもいなくてもいい存在だ。

僕がそのグループにこう声をかけると、
「いやぁ僕らの乗るバスがさ、きちんと発車するのかどうか気になってさ。」と一番多く話していた落ち着いた髪の色をしてメガネをかけた白人のおにいさんが答えてくれた。そっかそっか、今日は台風なのだ。僕も台風は関東上陸だし、それも夜中上陸みたいだから朝に到着の夜行バスには影響がないだろうくらいに考えていた。だからバスも出るだろうし、バス停まで案内してあげて、そこからバス会社のスタッフさんに確認すればOKくらいの気持ちでいた。

よく話す白人のおにいさんは東北大学に留学していて、友だちを訪ねて京都に来ていたそう。彼はこのスタバからすぐ近くのバス停からの夜行バス。「まあダメなら朝までどこかで過ごすだけだよ」と気楽な感じ、対してフランス人の母子はどうしても明日の昼には東京にいなくてはいけないのに・・・と焦りぎみ。彼女たち親子をバス停まで連れて行くことにした。うん、きっとだいじょうぶだよ。

モワッとぬるい空気の外を歩く。台風が来ない関西のこの街はいたって通常営業な感じで、学生グループが階段にまとまって座りながら「今日このままオールしても、明日朝から寝たらさ5時間は寝られるよね」と話してる。そんな横をフランスの親子とともに抜けていく。

電光掲示板には【22:30新宿】と表示が出てる。うん、大丈夫!と思いながらとりあえず横にいた職員さんにここでいいですよね?と確認すると、彼女は申し訳なさそうに、ごめんなさい今日のJR夜行バスはすべて運行中止になっております。と返事をくれた。そこで彼女に「このフランスの親子を案内しているんだけれど、どうすればいいですか?」とたずねると、とりあえず返金処理をしましょうということになった。だんだんと表情が疲れて、焦りがましてくる親子。大丈夫だよ。僕がなんとかするから。そう笑顔で言い聞かせて僕が職員さんと話をしていく。

とりあえず明日の朝には新幹線は復旧している予想
夜行バスはJRはアウト
僕の乗る会社は通常運行の予定だけれど空きはない
夜行バスを捕まえるとしたらバス乗り場で空きを待つしかない

サッと電話をして、この4点にまとめて親子に伝える。さあどうする?彼女はお母さんとフランス語で話してこう決めた。

「明日の昼には東京にいないといけないんだけれど、今日これからリスクをとってチャレンジするのはちょっと無理だわ。明日の朝の新幹線に乗ることにしようと思う。」

うん。了解。そしたら朝まで待たないといけないから、これから宿を探そう。サッと友人のゲストハウスに電話するも、彼女は今日はゲストハウスには誰もいないので、そしてもうこの時間なので(夜10時半)大したことができないと思う。これからなら駅近くのゲストハウスがいいと思うよとスッといくつかのゲストハウスの名前を出してくれた。それをもとにして予約サイトで調べてく。1件電話してダメだったけれど、2件目で空きが見つけられた。そのことをふたりに伝えて、一緒にいこうとバスのチケットカウンターを出る。

ひとまず宿が決まったことに安堵しながらも疲れがにじんでいるのでタクシーを拾うことにした。行き先を告げてしばしタクシーの運転手さんと外国人が乗ったときにはどうしているんですかー?言葉とか?アプリとか?というお話をしながら宿を目指す。うしろでふたりは何やら話し合ってる。

宿に到着して、お金をサッと払ったら。NO!とうしろからお姉さん。「ううん。いいんだよ。これは僕のおもてなしじゃなくて日本流のおもてなしだから!」と笑顔で言って、レセプションへ。ゲストハウスのお兄さんも僕らを待ってくれていて、明日の朝も僕が働いているから安心して、と優しくフランスからのゲストに伝えてくれた。うんこれでひと安心。サッと連絡先を交換して、彼女たちに「東京無事に到着できるといいね」と伝えると、いままでほとんど話さなかったお母さんが僕の目を見つめながら手をお祈りのように組んでいくつかの言葉を紡いでくださった。それを娘さんが訳してくれた。

「こんなにしてもらえるなんて。あなたのことは絶対に忘れないわ。いつでもニース(フランスの南)に遊びに来てね。」

ううん。僕も旅でたくさんの人にこうして支えられてきたから。僕ができる小さなお返しをしただけだよ。そういってハグをしてお別れをした。


なんてことはない夜行バスを待つ2時間ほどのできごと。
けど自分で少し変わったなと思うのが、自分ができることがあってよかった、と素直に思うようになっていたこと。これはもしかしたらこの夏のふたつの旅で多くの人に支えていただいて日本に帰ってきたばかりだからかもしれない。

けれどなんだかわからないけれど、もう少し深いところにも思いがありそうだ。
それは相手に喜んでもらいたいというところの先の、もう少し根っこにある「自分が誰かのためにできることがある」という自分の喜びに少しだけ触れたのかもしれないなという思い。

成長とか、オトナになるとか、僕はあんまり自分を客観評価することはないけれど。
けれども自分から自然に生まれる気持ちが、それがちょっと新鮮なものとして出てきたことに小さな喜びを感じたできごとだった。

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