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【小話】介護で三年過ごしてみたら

一日一稿、そんなことを思いながらも日々のよしなごとに忙殺されているうちに気が付くと一週間、二週間経ってしまうという、そんなわけです。
書いてみておもいますが、よしなごとに忙殺される人生って、何にも大切なことに手を付けられていないのではないでしょうか。

さて、恒例のお久しぶりのご挨拶に次ぎまして今回のお話のイントロダクション。
前回前々回と「転職」についての記事を書かせて頂きましたが、今回は少々小話を一つ。


少し小話、介護の話

EASC中の人は、社会人のスタートを介護職員としてスタートした人間です。
もうかれこれ10年近く昔になりますが、東京の認知症対応型グループホームで現場スタッフとして高齢者介護のお仕事に従事し始めました。

その後紆余曲折あり現場を離れ、求人広告屋、訪問看護の裏方全般などを経て現在に至るのですが、社会人になって初めて経験したお仕事や環境というものはどうしても自分の根っこに残るものです。

なので今回は介護スタッフ時代に経験したお話を雑談小話として書き連ねてみようかな、と思っております。
面白かったお話や、今思い返しても少々胸が詰まるようなお話までございますが、ご興味の許す限りご一読いただければ幸いです。


私の思う、介護の「オモシロイ」

高齢者施設には当然のことですが男性、女性のサービス利用者様が入居しています。年代も70代~90代と幅広く、中には100歳超えのウルトラ高齢者さんなんかもいらっしゃいます。

自分が配属された環境は女性7:男性2くらいの計9名の高齢者の方がお住まいの認知症対応型グループホーム、という施設で、平均介護度(どのくらい介護が必要なのかを図るための指標の利用者さん平均)は一番高い時期で4.3程。

これはどういう数字かといえば、まぁそれなり以上には介護が必要な方が集まり生活している、という状況なんですね。

皆様性格も十人十色なので合う合わないが明確にあり、毎日だって喧嘩しているような方たちもいらっしゃます。
ひと昔前にイメージされた「おじいちゃんおばあちゃん」と言えば穏やかで、少しぼんやりしていて、なんだかよくニコニコしている、みたいなものだと思うのですが、どちらかといえばおよそ真逆の環境であったように思われます。

いらっしゃる皆さんはお身体的にはもちろん高齢者なんですけれど、その気持ちや中身の部分は我々と変わらない一人の人間で、世間からイメージされがちな「高齢者」という属性よりも、ただ当たり前に自己を持つ一人一人の人間でした。

さて、そんな皆様の不満渦巻くわれらがフロアですが、スタッフそれぞれと利用者の皆さんの関係性が悪いかといえば決してそんなことはありませんでした。
個々のスタッフに対して利用者さんそれぞれが気を許してくれていることもあり、利用者さん同士のお話よりも専らスタッフとお話をしたがる方のほうが多かったように記憶しています。

そんな環境なので、利用者さんが爆発するときはそれはすさまじいもので、フロアの中で特定の方同士で言い争いが発生すると周囲の利用者さんを巻き込みフロア中で喧嘩する声が響くのです。
言い争いをする方を中心にして、外野から「そうだそうだ!」など合いの手やヤジが飛ぶようなイメージでしょうか。

こうして書いてみるとおよそどこがおもしろい話なんだろう、と思われるかもしれません。(自分でも今書きながらどこに着地できるのか迷いながらパソコンをカタカタと鳴らしているのですが、、、

ただ改めて思い返してみても、こうした環境の中でもスタッフに対しては皆さんそれぞれが心を開いてくれていた、という点がやはり結構面白いものだと思うのです。

元プロカメラマンの方で、自身が出版した写真集をくれた方がいました。

世界を回ることが好きで、世界を回って撮った写真を毎日のように見せてくれる方がいました。

私の命より大切なカバンなの、といって常に肌身離さず持ち歩く方が、ちょっと重いからお兄さん預かっていて頂戴、と預けてくれました。

今改めて考えてみても、介護に従事するまで縁もゆかりもなかった先達と同じ時間、場所を共有して、自分より何廻りっも年下の小僧っこに信頼を見せてくれる、そんな環境ってなかなかないものだよなぁ、と思うのです。

介護のお仕事というものは、たぶん綺麗事ではないように思うのです。
サービスの提供者はプロとして、当たり前に求められるものが多々あるのですが、結局最後に利用者の方たちと相対するその瞬間には向きだしの自分自身が重なり合うのかな、と思います。

だからこそ多分誰にでも容易にできる仕事ではないし、本来は非常に専門性の高いお仕事だと思うんですね。
なかなかどうして残念なことに、介護のお仕事っていまだに世間的に魅力が見えづらく、労働環境としても決して裕福な生活ができるわけではない現状があります。
こればかりは介護保険制度によって成り立つ限界があるので仕方ないと唇を噛む他ない現状がありますが、やっぱり現場で血を通わせたコミュニケーションをした経験を持つものとしては、何か一つ、ブレイクスルーが作れないものか、と考えてしまいますよね。


さて、こんなところまでお付き合いを頂き誠に有難うございました。
辛かった話も一緒くたにしてしまおうかと思っていたのですが、それはそれでボリュームがあるのでまた次回に、ということで自分を奮い立たせる材料にしてお別れにしたいと思います。

お読みいただけた方には重々ご承知かと存じますが、ご覧の通り介護職や医療職に肩入れしがちな人間なので、今介護のお仕事、医療のお仕事をしていて少し疲れてしまったなんでこんなことしてるんだろう、と悩まれている方がおりましたら是非一度お話を聞かせてくださいね。
一人で抱え込まず、誰かに話すことだけでも何かが変わることってあると思います。


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