【信州松本の説話を語りたい】2.泉小太郎とは何者か?

「坊や〜、良い子だネンネしな〜♪」

「まんが日本昔ばなし」のオープニングテーマのイントロであり、アラフォーの僕には幼少期の馴染みのフレーズである。

さて、このオープニングテーマと「泉小太郎」の名前でおおよそオチが見えてる方には別段面白くもない話になるが、今からおよそ三年前にふと、この「泉小太郎」という名前が気になり調べ出した事が僕が信州松本界隈に残る説話の数々に興味を抱く第一歩となった。

それは松本市の弘法山の麓に「泉小太郎の像」というものがあり、また、他の地域(安曇野、大町)にもよく似た名前の人物名の像がある事をIngressという位置情報ゲームの中で知った事に始まる。
(Ingressというゲームは位置情報を使った陣取りゲーム。ザックリ言うと他のプレイヤーがゲームの拠点となる史跡等で何かしらアクションを起こした結果がゲーム画面にログとして流れてくるので、自分が普段行かないような地域の史跡名などを図らずも目の当たりにし知るきっかけとなる。)


何故、こうも色々な場所に「泉小太郎」の名を冠したスポットがあるのか?「泉小太郎」とは一体何者なのか?
これが最初の疑問であり好奇心の火種だった。

弘法山は松本の旧城下町、現在の市街地より南にある小高い山だ。

市内屈指の桜の名所であり、また3世紀末頃に作られ東日本最古級と言われる前方後方墳「弘法山古墳」がある。

(弘法山古墳より市内を眺める 2018年4月某日撮影)

その山の北東側のふもとにあるのが写真のこの像である。

躍動感に溢れ、どこか少し可愛げのある龍の髭を手綱のように掴み跨る男の子。どこか上向き加減に遠くを見つめている。

そして像の土台の説明にはこうあった。

伝説 泉小太郎
日本の伝説の中で、松本・安曇野地方に語り伝えられている開拓・治水の伝説である。
小太郎は父・白竜王(大日如来の化身)母・犀龍(諏訪大明神建御名方の神の化身)の子(八峰瀬権現)として、今の中山 和泉で生まれた。
成長するにおよび その当時、松本・安曇野の平地は湖であったので、この湖を干拓して陸地にしたら人々は豊かになるだろうと考え母、犀龍の背にまたがり、山清路の巨岩を突き破り、水を長野から越後の海へと流し、現在の広々とした盆地を作ったと言われる。

正直この説明文、最初に読んだ時は全然ピンと来なかった。あぁ、泉小太郎ってなんだ、偉人かと思ってたらこの辺に伝わる民話だったのか。くらいの感想だった。

しかし、ある事を知りまた強烈に興味を持つ事となる。
それが冒頭に唐突に歌い出した「まんが日本昔ばなし」のオープニングと関係する。
既に知っている人には別段面白くもない伏線と引き伸ばしであるが、なんとこの「泉小太郎」は、あの、幼少期に何度も何度も観てきたオープニングテーマソングとともに現れる龍に跨がった子供のモデルであったのだ。

別段、「まんが日本昔ばなし」が大好きだったわけではない。しかし、「まんが日本昔ばなし」を思い出す時、テーマソングと共に同時にこの龍に跨がった子供を思い出さずにはいられない
土曜の19時、晩飯時に何気なく付けられたテレビから流れていた、このオープニング。(そして我が家の土曜の夜はいつもカレー。)
習慣化され刷り込まれた記憶ってのは強烈だったようだ。
毎度お馴染みのオープニングはただただ懐かしく、そして

(子供の頃に観てたアレのモデルがこんなご近所にあったとかマジか!マジなのか?いやはやスゲーな!!)

という知的でもなんでもない、むしろ良い年して恥ずかしさすらある、シンプルな驚きと、なんだか凄い事実を発見してしまったという嬉しさみたいな感情が湧き出したのだった。

で、生まれも育ちも松本な家族にその感動を伝えたところ、まぁ、普通に知ってたわけなんですけども。

余談となるが、生まれも育ちも松本であっても知らない人は知らないし、他県から移住してきた人なんかも興味がなければ知らない話で、クドクド「泉小太郎」ってのは云々…と説明するより、出だしで

「まんが日本昔ばなしのオープニングに出てくる龍のやつ、あれ松本界隈の民話がモデルになってんの知ってる?」

と始めると大体食いつきが良いという実感(当社比)はあるので、大体皆刷り込まれてんだなぁ、って感じることが多々あり。

話を戻し、一方でこんな疑問も出てきた。

(何故桃太郎やら浦島太郎といった皆が良く知る有名キャラじゃなく、泉小太郎という少々素人には馴染みの薄そうなキャラを番組の顔ともいえるポジションに起用したんだ?)

続く。

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