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「プロガイドと行く!!双体道祖神めぐりin池田町」に参加した話。

タイトルからして既にニッチと言わざるおえない「Skima信州 x メイプルツリー」企画によるツアーに参加してきたお話、備忘、感想。

プロガイドと行く‼︎双体道祖神めぐり
https://peatix.com/event/387950

総括的なお話は主催者さんサイドからいずれ出る様子。

「Skima信州」
長野県のニッチな話題や観光スポットを取り上げ、 好きな人が全力で紹介するローカルwebメディア。
https://skima-shinshu.com

「メイプルツリー」
長野県池田町の魅力を再発見し、池田に住んでいる方も町外に住んでいる方にも魅力を知ってもらいたいという思いから生まれた若者による団体。
https://m.facebook.com/ikeda.mapletree/?locale2=ja_JP
(紹介文は各webサイトより抜粋)


僕が住む松本市から北へ二十数キロ、北安曇郡池田町。
松本と糸魚川を結ぶ「千国街道」の宿場「池田宿」が置かれた地。

そして、個人的興味では、信州の民話、泉小太郎伝説、八面大王伝説、そして歴史ロマンを掻き立てられる安曇族と盛り沢山なゆかりを持つ川会神社がある池田町。

そんな伝説と歴史ロマンに溢れる安曇野エリアに点在する双体道祖神。
安曇族由来(と思われる)の民話や伝承と、豊富な道祖神との関連があるのか無いのか?
そんな手がかりになったらオモロイな、と参加させて頂いた次第。

さて、今回は残念ながら道祖神プロガイドの小出先生の参加が見送りとなるという主催者側の立場を考えたら恐ろしく大きなハプニングを抱えながらも、そこは志高い主催者さん達。
そんなニッチな動機で参加した僕でも満足のひと時を過ごす事ができました。

ツアーで訪れた場所は以下の通り。

・池田町ハーブセンター(集合場所)
・八幡神社
・中嶋三社大明神・小部澤山神
・堀内三嶋大明神
・仁科神明宮
・相道寺
・滝沢
・あずみ野池田クラフトパーク・東山包美術館

まずは、ツアーのメインコンテンツである双体道祖神の事を中心に備忘を兼ねて振り返る。(既に記憶が怪しい)


「池田八幡神社」

集合場所の池田ハーブセンターより北へ。
恐らく池田町では最も規模の大きな池田八幡神社。9月27日の例大祭では船形の山車が繰り出すそうで、境内には山車が収納されている倉庫もならび、池田町役場が隣接する。

で、早速この神社の境内で「双体道祖神」見物。また、道祖神の「文字」のみ彫り込まれた道祖神や、セットでよく見かける二十三夜塔などの石碑の解説を伺う。
石碑など1400余確認されているそうだが、年々その数は減っているとの事。
風化というより集落の減少、立ち入り禁止区域の拡大などにより存在確認が難しくなっている背景があるそう。
人に認知されず存在が消えてしまう道祖神もあるものなのか、とちょっと切なくなるお話も。

池田八幡宮の双体道祖神


「中嶋三社大明神・小部澤山神」

ツアーの車は東に向かい、養蚕が盛んだったというなまこ壁の土蔵が並ぶ山の麓の集落を抜け到着。

ここでは鳥居側の茂みの中にある双体道祖神を見学。
何気なく見てしまえば、「あぁ、道祖神があるな」とその程度の感想だろう。
しかし、茂みの中に埋もれず顔を出してる道祖神は周辺住民による手入れがあるからこそとのお話でハッと気づかされる人の営み。
忘れ去られて消えていく道祖神の話が頭をよぎる。

中嶋の双体道祖神

ところでこの時期、日中は靄がかかるとは言うものの、有明山を含む北アルプスの展望は満足の一言。
神社の素朴な雰囲気も○。
その絶景から池田町のウォーキングイベントでは通過ポイントにもなっているそうだ。


「堀内三嶋大明神」

藁の屋根を被った道祖神の解説を伺うなど。

松本でも道祖神はチラホラ見かけはするものの、このような屋根付きは見かけたことは無いように思う。

安曇野のエリアの道祖神は平野部では主に花崗岩、そして山で見られるものは砂岩製なのだとか。屋根を付けるのは風化から道祖神を守る風習。根底に合理的な理由がそこにあった事への驚きと感心。

堀内三嶋大明神の道祖神

そして、今回のツアーでは最小クラスの道祖神でもあった。解説によると道祖神は元々抱えて持てるくらいのサイズだった様子。集落が潤い経済的な余裕が出てくると大きな道祖神で力を誇示する面もでできたそうだ。そして、面白いのが「道祖神は盗まれる」笑

換金や収集みたいな俗っぽい盗みではなく、盗んで自分の集落の道祖神にしてしまうといったお話。この道祖神も「中嶋」から貰われてきた(と言ってたはず)ものだとか。
帰宅の途に付き読んだ書籍によると、地域によっては「ご機嫌伺い」と呼ぶ風習で嫁に出す感覚で合議の元、貰われるケースもあったようで道祖神にまつわる風習をなぞるだけでも相当面白いものが沢山ありそうである。


「仁科神明宮」

ツアーで訪問する場所は当日まで知らなかったのだけど、仁科神明宮も行きますよー、と聞いた瞬間にテンションが上がった場所。
国宝という事もさる事ながら、個人的なニッチな動機に少なからず因縁のある場所であったから。

それはひとまず置いておくとして、仁科神明宮すぐ側の道の途中で道祖神見学。

仁科神明宮側の双体道祖神

かつてバラバラにあったのだろう周辺の石碑が集められ道祖神と共に並べられている馴染みの風景。

これまで見てきた道祖神と違い、建造物まで彫られた凝った造作の道祖神。
大きさも中々で、ツアーの中で道祖神の在り方が単に祈りの対象のみならず集落の力を知らしめるものへと変わっていったといった趣旨の話を聴いたが、この道祖神の凝った彫り物もその一例なのかもしれない。


「相道寺」

お寺があったのか無かったのかは定かではないけれど相道寺という地名なんだとか。

さて、これまで見てきた道祖神の中でも1番整備が行き届いており今なお本当に大事にされてる印象が強かった道祖神。

相道寺の双体道祖神

そんな道祖神の前で撮った集合写真の写り映えが楽しみである。

信州では馴染みのどんど焼きや三九郎といった新春の行事。
道祖神に付いた厄を落とす行事だというお話を伺うなど。
そのお話自体はボンヤリと聞いた覚えがあったが、道祖神そのものを火にくべるのがどうやら本来の在り方だった様子。
北信から来ていた参加者の方からは今だに火に投入してるよー、とその風習が残っている地域がまだまだあるよう。
小さな道祖神が元々の姿ならば確かに火にくべるといった事も容易に想像がつくので納得。


「滝沢」

先の相堂寺からの道すがら「花見(けみ)」という名のホタルの名所近くを通過。(湧水が花のような様から付いた地名だとか)同乗した某氏から様子を伺ったりして来年見にきたいねぇなどと思いつつ到着、最後にして最高にカラフルかつファンキーな道祖神。

滝沢の双体道祖神

色付きの道祖神はこれまでもいくつか見たことはあったが、髪型の表現は随一(特に女性)
そんな事もマジマジと見てみないと案外気がつかないもんである。
色彩豊かな道祖神はそれ相応の手入れがされているわけで、未だにこの地域で大事にされている証だよなぁ、と。


あずみ野池田クラフトパーク・東山包美術館

午前10時からスタートし、駆け足で巡った池田町双体道祖神ツアー。締めくくりは眺めも素晴らしい、あずみ野クラフトパークで一休み。


その後メイプルツリーのメンバーの方が写真展を開いている園内?の東山包美術館へ。
館内一階は喫茶スペースになっており、アイスコーヒー啜りながらしばし参加者の方々と歓談。


最後に

記憶違いや既に忘れている事柄もあったかもしれないが、ざっと振りかえってみただけでも濃密な「双体道祖神」ツアーであったなぁと改めて感じているところ。大きさ、素材、形、風習などから、その道祖神の背景にある物語がほんの少しでも想像出来るようになっただけでも大きな収穫だった。

そして、池田町。スポット的に思い入れのある場所があったもののまるで知らなかった池田町。双体道祖神ツアーと銘打ちながらも町の魅力の一端も知ることができ、またゆっくりと訪れてみたいと場所も見つけられて充実したツアーだった。


その他雑記

ツアー参加者について。

約20名が参加した今回のツアー。
その大半が20代と若い参加者が多くて面食らったが、このツアーの主催者である信州サーモンさんをはじめとする、ニッチでコアなブログ記事を書かれているSkima信州の面々の方々も記事の内容から想像しなかった若さであったし、池田町を盛り上げようとフリーペーパーを発行するなどしているメイプルツリーの方々も志高い若者揃いでまぁ、普通のサラリーマンのおっさんは驚くやら関心するやら、自身を振り返って恥ずかしいやらと笑

プロガイドの代役とは思えないほど、タメになるお話を多く聞かせて頂きました。

一方で、少数派のオーバー40は濃い面子。
安曇野FMで大岩堅一さんとラジオトークをされているという御婦人が担当番組のネタ探しの一環で参加されて熱心にメモを取られていたり、遥々東京から参加されてたオッちゃんはシュメール遺跡から発掘されたあまりにも双体道祖神に酷似した像に魅せられ研究の一環で来られていたりとその界隈のお話だけ伺っているだけでも充分面白い方々でした。

因みに安曇野FMの8/17金17:00〜この時の様子が話題にされる模様。

http://www.azuminofm.co.jp

あいにく仕事で聴けそうもないのが残念。


極個人的なアレコレ雑記。

・川会神社
・仁科神明宮

「川会神社」

集合場所の池田町ハーブセンターに行く前にちょこっと寄り道した池田町は十日市場にある川会神社。

個人的には5本の指に入るくらいには思い入れの強い当神社。

およそ3年前にとあるキッカケで読んだ本「信濃安曇族の謎を追う -どこから来て何処へ消えたのか」を通して知った神社である。

著者である坂本博氏は福岡出身。

そして池田町に住み、当地で食べられている海藻加工食品「エゴ」と福岡で食べていた「おきゅうと」が酷似している事への気づきに端を発し独自の視点から、かつて海上交易などで活躍した古代史族安曇族が内陸の安曇野の地に移り住み衰退していったその謎を追いはじめた先生である。

坂本氏はこの川会神社と安曇族の関連についても多くのページを割いて考察していた。

ご祭神は「底津綿津見神(そこつわたつみのかみ)」。

安曇族が祀ったとされる海の神様、綿津見神三神の一柱である。

坂本氏がここの社伝に伝わる泉小太郎伝説が伝説の原型であり安曇族が創った伝説だといった趣旨の主張されていたのが印象深い。

主に安曇野地方に伝わるいわゆる「八面大王伝説」と言う鬼伝説では、その八面大王討伐の命を受け指揮した坂上田村麻呂が布陣した場所とも伝わる場所でもあり、坂本氏は安曇族と八面大王との関連についても考察されている。

鳥居の裏には坂本博氏の名も

それらの真偽はともかく一見ひっそりと地味な神社ではあるが、ロマン溢れる神社なのだ。

さて久しぶりに訪れると3年前には無かった「泉小太郎ゆかりの里」なる真新しいレリーフが神社の入り口に出来ていたのには驚いた。

書かれている内容は松本平一帯で最もポピュラーな形の「信府統記」現代語訳版だと思われる。

せめて川会神社に伝わる独特な小太郎伝説も併記していたらより良かっただろうなぁ、などと思いつつ、伝え残そうとする人達がまだまだ多くいる事を垣間見てなんだか嬉しい気分になった。

中々遅々として進まないこの沼深い民話・伝承の考察を改めて続けてみようと決心するのであった。


「仁科神明宮」

池田町のお隣の大町の仁科神明宮。

ここはいつか必ず訪れたい場所の1つだったので、ツアーに組み込んでくれた主催者さんには本当感謝感謝。

巨木に囲まれた神聖な雰囲気は流石国宝。

個人的な興味はここにあると聞いていた「唐猫像」とやはり安曇族との関連。

まだまだ理解が追いつかないが、奈良時代頃から大町とその周辺を支配していた仁科氏。

また、仁科氏により編纂されたとされる「仁科濫觴記」は安曇平の記録書として最も古く信憑性が高い資料とされており、泉小太郎伝説や八面大王伝説の元となった史実と思われる内容も記されている。

歴史資料としての信憑性を推し量る事は今の僕には到底できないが、この仁科氏の台頭と安曇氏(安曇族)の衰退のヒントになりそうだと思っているのが、仁科神明宮の「唐猫」だったのである。

なんとなく知っていただけの仁科神明宮の唐猫の存在。

どこにあるのかも見当もつかぬまま、境内をウロウロしていると主催者の一人、信州サーモンさんのその場の思いつき(だと思う笑)で、急遽、仁科神明宮の宝物殿を見学する事になったのだが、これが大正解。

劣化防止のためだろうが空調の効いた宝物殿内部。文化財の木造棟札(むなふだ)が多く並んでいてこれだけか?と諦めかけた瞬間、またも信州サーモンさんの忘れもしない「イーストキューブさんあったーーー」のお声がけ。

探してくれてたんかいー、と、オッさんっ嬉しかった笑

それはともかく唐猫は仁科神明宮にあった。

木造の唐猫様のお姿から察するに狛犬の阿吽のように対になっていたのだろうか?口閉じてるのと開けてるのといるわけで。

年代不詳なのは残念だが、唐猫による雨乞いの風習については他の神社でもある様子なのでいずれその辺から推測してみたい。

さて、この発見でまだまだ根拠に乏しいところではあるけれど、坂城町や上田に伝わる「神ネズミと唐猫様」の伝説は、話の筋から仁科氏の台頭と安曇族の衰退をモチーフにした物語じゃないかという説。

坂城町の鼠のお話は以前聞いたことがあったものの、Skima信州さんのこちらの記事を見て再認識。以来、唐猫まっしぐらなのである。

「坂城町の珍地名「ねずみ」の由来とは?真田家との関係と民話を検証した」

地域は離れるが、上田の塩田には小泉小太郎伝説があり、松本、安曇野エリアの「泉小太郎伝説」と「神ネズミと唐猫様」伝説に共通する蹴裂伝説の側面、「八面大王伝説」と共通する化け物退治の側面、隣接する松川村付近の地名「鼠穴」と坂城町の地名「鼠」などなど。

「仁科濫觴記」には八面大王伝説の元になった史実とされているお話が記されているのは前述の通りだが、その敵役は鬼ではなく盗賊集団鼠族。

少なくとも安曇野地域における「鼠」が「安曇氏」の蔑称であることは坂本氏も言及されており目新しい事ではないのだが、安曇野地域、もとい犀川流域と千曲川流域の共通性は千曲川流域でもかつて安曇氏が活躍していた証だろうか。

アズミ、イズミ、ネズミ

既に目星を付けて研究されてる方は何処かにいるだろうし何処かに考察があるならば読んでみたいが、無ければこの共通性の謎について自分なりに答えを見出したい研究課題である。

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