愉雨子

雨が降って気付かないひとはいない。ならば人に嫉妬されるくらい、魅力的に降りたいのです。…

愉雨子

雨が降って気付かないひとはいない。ならば人に嫉妬されるくらい、魅力的に降りたいのです。ーー好きなものや感じたことを自分の気持ちと向き合って、書いてみる。

最近の記事

迷ったり見つけたり

電車は良い。 乗ってしまえばある程度行き先は決まるし 一緒に乗る人がいれば道中心強いのは間違いないだろう。 それでもわたしは、歩くことを選ぶ。 行き先はわからない。 道端に気になるものがあれば立ち止まり 素敵なお店を見つけたら入ってみる。 だからなかなか進まない。 計画なんて、ないも同然。 思いがけず誰かに出会い しばらくの間一緒に歩くこともある。 自転車や車に気をつけながら 雨や風を受けながら 100%自分の興味に従って歩みを進めるのだ。 時折線路沿いの道に出ては、

    • レモンピールはいらない

      それは久しぶりにやってきた。 前触れもなく でも、今思えば気配はあったのかもしれない。 15年近くも前 「かき氷はレモン味に限る」と思っていた。 色ばっかり鮮やかなシロップは 果物のレモンとはまるで別モノだった。 思っていたのとは違って、悲しくなったことだってある。 久しぶりに再会したそれは ほんのりと苦さを纏い、色は限りなく白に近い。 正真正銘のレモンシロップ。 華やかさはないが、昔よりもよっぽど自然で身軽だ。 無理に苦さを消す必要もないことを 今のわたしは知って

      • 怠惰、ということばが好きだ。正しく怠けている気がするから。

        • 帰り道の電話

          日の暮れ始めた道すがら まるでおとぎ話の世界のように 明かりを灯した窓が目に入る。 吸い込まれるようにして足を踏み入れると ずらりと並んでいるのは飴色の焼き菓子たち。 まるで子供時代の記憶みたいなその空間は どうしたって気の張るこの日常から 束の間、わたしの心を解放した。 子供時代の記憶。 なかでも、家族との一番古い記憶は 旅先でのものだ。 わたしが幼い頃、家族旅行は毎年の恒例行事だった。 最も、父の仕事の都合もあって 行き先はそれほど遠くない場所ばかりだったけれど。

        迷ったり見つけたり

          今ものすごくスポーツが見たい。それもW杯やオリンピックのような規模の。みんながそのために足早に帰宅して、一丸となって応援するような。画面を祈るような気持ちで見つめ、時に叫ぶ。例えばゴールが決まった時、自分が歓喜するのと同時に近所の家からも歓声が漏れ聞こえてくるような。恋しい。

          今ものすごくスポーツが見たい。それもW杯やオリンピックのような規模の。みんながそのために足早に帰宅して、一丸となって応援するような。画面を祈るような気持ちで見つめ、時に叫ぶ。例えばゴールが決まった時、自分が歓喜するのと同時に近所の家からも歓声が漏れ聞こえてくるような。恋しい。

          わたしの定番の一つについて (下)

          一目惚れなんて、したことがない。 ただ、この時だけは例外だった。 画面の奥の絵画に、その纏う空気に 一目惚れをしたのだ。 骨董屋で運命を感じ 「清水の舞台から飛び下りる覚悟で購入した」 などといったエピソードを披露する ”依頼人” たちの気持ちが 今なら少しわかるかもしれない。 ただ、いくら一目惚れしたとは言え そんな楽しみ方はわたしの身の丈に合わないことだと 十分に承知している。 まして出会ったのは他の誰かの所有物だし 画面の奥にあるのだから、身の丈の問題ですらない。

          わたしの定番の一つについて (下)

          わたしの定番の一つについて (上)

          母は「なんでも鑑定団」が好きだ。 火曜よる9時、番組が始まる時刻になると 父とわたしは、ソファに座りながら(というより、ほとんど寝転びながら) 台所で洗い物をする母に呼びかけたものである。 「鑑定団はじまるよー」と。 呼びかけるくらいなら、洗い物を代わりなさいよと 今なら思うが、そんなことたったの一度もしたことがなかった。 仕方ない、子供だったのだ。精神的に。(年齢は決して子供ではなかった) そんな未熟さは置いておいて、だから実家に住んでいた頃のわたしは 家族の習慣の一

          わたしの定番の一つについて (上)