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肉レポ/野生のメモリー

とある日の肉汁滴る分厚い牛サーロイン。断面は美しい桃色に仕上げて、岩塩でいただく。おろしたての山葵なんかもあるといい。コンビニで安い赤ワインを買ってきて呑む。なんたる贅沢。うん、もちろん炭火焼きで。うん、贅沢だ。

でも、何かが足りない…。何なんだろう…この脳の奥底にあるムズムズした何かは…。

美味しいものを、食器を使って綺麗に戴く。これは、大人であれば当たり前にできるマナーであるし、社交場においても最低限のマナーである。僕も社会人1年目の時は箸の持ち方から再教育された。そのくらい当たり前なのだが…。

インドに住んでいる方々は手でお米を食べる。これはあまりにも有名な話だ。僕も実際にインドの方と一緒に食事をしたことがある。でも、知っているだけと実際に見るのとではまるで違う。一種の【恐怖心】なのか、しばらく手をつけられなかったという苦い思い出がある。その時は意を決して「お米を手で掴んで食べる」という非日常を体感したのだが、これがまた、慣れるとかなりいい。最後の方はもう、何も食べるものはないのに手をしゃぶっていた。

そこで、僕は考えた。実際に手で持って口に運んで食べるという行為は、感じる「うまみ」に直結するのではないか?僕の行きつけの寿司屋の親方も「最近は衛生面だなんだで箸で掴んで食うやつが多いけど、手で持ったほうが美味いに決まってるよ」っていつも言う。考えてみるといわゆる【ファーストフード】ってやつは、どれもこれも食器を使わず食える物ばかりだし、世の中の大多数は好んで食べる。

だったら肉だって…。手で持って喰える肉のほうが…美味く感じるんじゃないか?それなら…骨つき肉しかない。
手軽に食える骨付きでジューシーな肉…そうだ、スペアリブにしよう。早速スペアリブを買ってきて、炭を起こして調理開始。完成し、お皿に上げてテーブルに置く。すると、みんなフォークとナイフを使って【上品】にスペアリブを食べている…。というか食べようとしていた。手で持って食べるんだよ?と教えると、

手が汚れるからヤダぁ〜。笑

肉好きならわかると思うが、骨の周りの肉は美味い。でも目の前には乱雑に食い千切られたスペアリブの残骸。それを拾って食うわけにもいかないし…。なんともモヤモヤした気持ちになった。しまいには

食べづらいよね、スペアリブって。笑

結局、ほとんどを一人で食べる結果となったが、脳の奥にあったムズムズ感はすっきりと消え去っていた。きっと夢中になって齧り付く(もはやしゃぶりつくかも)という野生的な行為を本能的に欲していたのだろう。

本能のままに、あるがままに。自分の遺伝子の中に組み込まれているメモリーに身を任せて。こんな事が実現するのも"食"の素晴らしさなんだなぁと感じた出来事でした。

肉って、素晴らしい。

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