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LSS(腰部脊柱管狭窄症)の鍼灸×リハビリ

この記事はLSS(腰部脊柱管狭窄症)に対する、鍼灸(低周波鍼通電)×リハビリ施術の方法を紹介した記事です。
病院では頻繁に行われていますが、一般的な治療院ではあまり馴染みがない、神経パルスを行います。

LSSに対する鍼灸×リハビリ施術については、本記事でも詳しく解説していますが、私はオンラインセミナーも開催しています。文字や画像をみるだけでは、理解しづらいという人は、是非参加されてください!
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1.はじめに

腰部脊柱狭窄症(LSS)は、脊柱管が狭くなり、神経根や馬尾が圧迫される疾患です。脊柱管は、背骨内部にある神経や脊髄の通り道であり、その狭小化により、神経根と馬尾の神経根が圧迫されます。

腰部脊柱狭窄症は、歩行などの脊柱管が狭小化する動作を行うと、腰痛や足のしびれ、それに伴う歩行困難といった、神経根圧迫の症状などを引き起こします。

LCS(腰部脊柱管狭窄症)の病態は日本整形外科学会と日本脊髄疫病学会が発行した腰部脊柱管狭窄症診療ガイドラインによると、
「腰椎部の脊柱管あるいは椎間孔(解剖学的には脊柱管に含まれていない)の狭小化により、神経組織の障害あるいは血流の障害が生じ、症状を呈すると考えられている。」と記載されている。

また、診断基準として
①    殿部から下枝の疼痛やしびれを有する
②    殿部から下肢の症状は、立位や歩行の持続によって出現あるいは増悪し、前屈や座位保持で軽減する
③    腰痛の有無は問わない
④    臨床所見を説明できるMRIなどの画像で変性狭窄症が存在する。

と提案されています。

そして、神経根型、馬尾型、混合型の3型に分類されます。
神経根型は間欠跛行での殿部と下肢の疼痛が主で、
馬尾型と混合型ではそれに加えて、会陰部の異常感覚が出現する場合があります。

鍼灸施術に関しては、馬尾型、混合型に比べ神経根型の方が治療成績が良い傾向であった。と報告があります。

また姿勢と関連性があり、ケンプテストで分かるように体幹の伸展、回旋、側屈の肢位で脊柱管が狭くなる。
そのうえ、高齢者では骨棘の形成、腰椎のすべり症、黄色靭帯の肥厚など、さらに脊柱管が狭くなる要因がある。

以上の事を念頭に置いて、実際の鍼灸×リハビリの臨床の流れを
解説していきます。

2.問診


LCSの特徴的な問診事項は
・歩行時の症状悪化の有無。
・歩行時に症状が悪化する場合は、どういう姿勢で症状が緩和するのか。
 体幹前屈位、座位で緩和→LCSの疑い 
・継続歩行可能距離、時間
・自転車を漕いだ際の症状悪化の有無。
 悪化する場合→閉塞性動脈硬化症、梨状筋症候群?
・膀胱直腸障害の有無。

3.身体診察


下肢症状がある場合は、腰下肢の神経学的検査、理学検査を
行わなくてはいけませんが、既往歴にLSSがある際は、
下記の事項を特に注意深く確認しましょう。

・脊柱アライメントの確認。特に腰椎前弯、側屈、回旋の有無。
・ケンプテストでの症状再現部位。
・膝窩動脈、後脛骨動脈、足背動脈の拍動の有無。

4.鍼灸施術


鍼灸施術の目的は神経内循環の促進、疼痛閾値の上昇による末梢神経症状の改善を目的に施術を行います。

刺鍼点は
・障害高位の神経根(付近)

・症状がある部位を支配している末梢神経
or
・症状がある局所

です。

障害高位がL5、症状がある部位を下腿前外側の症例を
例にしてイラストに表すと以下の様になります。

神経根刺鍼点と書いてありますが、実際には神経根に鍼は届かず、
近傍への刺鍼ということになります。
刺鍼点の目安は、高さは棘突起間(L5神経根の場合はL5/S1間)
横軸は棘突起間と最長筋の中間です。
難しければ、棘突起間の外方2cmと覚えましょう。
刺入深度は、5cm程度刺入すると骨に当たると思いますので、
そこで留めましょう。
ちなみに椎間関節を狙う場合も、同部位へ刺鍼しましょう。

L5神経根 刺鍼点

深腓骨神経刺鍼点は、腓骨頭上端(腓骨頭尖)と腓骨頭下端を結んだ曲線の中点です。後方から腓骨頭に向けるように刺鍼しましょう。
ただし、練習が必要ですので難しい場合は疼痛局所に数本刺鍼でも
構いません。
鍼通電を行えない場合も、疼痛局所に数本刺鍼で構いません。
ただ、神経パルスの方が効果が高いですので、深腓骨神経に刺鍼できた方が良いでしょう。

深腓骨神経刺鍼点 側面図


深腓骨神経刺鍼点 背面図

私は、この症例の場合は、
L5神経根 - 深腓骨神経 で繋ぎ、1Hzで15分間通電を行います。
通電の時間は15分以上で疼痛閾値と血液循環量が最も大きくなりますが、
10分程度でも十分な効果が得られます。

LCSによる末梢神経障害はこれだけで直後効果が得られやすいです。
また、他の高位に椎間関節性腰痛がある場合は、以上の例の組み合わせに
加えて、椎間関節にも刺鍼すると良いでしょう。

5.リハビリ


脊柱管は腰椎の過前弯により狭窄しやすいという特性から、
LSSの患者はロードシス、カイホロドーシスの姿勢をしている患者が
多いです。
ですので、逆に胸椎前弯、腰椎後弯、骨盤後傾をさせる様な運動に加えて、
過緊張、弱化によって骨盤を前後傾させる股関節屈筋群、伸筋群への
アプローチ
も効果的です。
また、中殿筋の萎縮による骨盤の挙上、脊椎の回旋、側屈がみられる場合は中殿筋の筋力強化トレーニングを行う必要があります。
MMT、筋肉の柔軟性を確認して必要なものを施術中に行ったり、
患者さんにセルフトレーニングとして自宅で行ってもらいましょう。

おすすめの運動


・ドローイン

ドローイン

仰臥位の肢位で骨盤後傾、腰椎を後弯させる運動。
腹直筋の筋力トレーニングにもなります。
腰椎の下に術者の手を入れ、患者さんには腰椎で術者の手を押し潰す様に
指示をすると患者さんもイメージしやすいです。
初期は膝と股関節を屈曲位で行わせ、腹直筋の筋力がついてきたら
膝伸展位で行わせましょう。
10~15回×2セットが目安です。

・ヒップリフト


ヒップリフト

仰臥位の状態で膝、股関節屈曲位から股関節を伸展させ、
殿部を浮かせる運動

股関節伸筋群、主に大殿筋の筋力強化トレーニングになります。
10~15回×2セットを目安です。

・胸椎伸展+肩甲骨内転運動

胸椎伸展+肩甲骨内転運動

座位の肢位で、胸椎伸展、肩甲骨を内転させる運動
肩甲骨を内転させるのは運動連鎖の関係で胸椎を伸展しやすくする為です。5秒×5回程度行いましょう。

・股関節屈筋群のストレッチ
伏臥位もしくは側臥位で股関節を伸展させ、股関節屈筋群をストレッチさせます。
20秒程度で1回行いましょう。

・中殿筋筋力強化トレーニング
側臥位で股関節を外転させる運動です。
10~15回×2セットを目安で行わせましょう。
筋力が強くなってきたら、立位で行わせましょう

6.おわりに


これに、各関節のアライメントなどを確認して施術を追加することも
ありますが、私が行っている基本的な施術は以上です。
LCSでは上記に記した鍼施術のみでも大幅な疼痛緩和が図れますし、
痛みの悪循環を断ち切るという意義がありますが、脊柱管が狭くなっている以上、歩行時の末梢神経症状は出現する可能性がありますので、
上記の様なリハビリも加えて行うことを勧めます。

また、

・姿勢の確認
・継続歩行可能距離、時間
・痛みの程度(NRS、VAS、評価表など)

などを施術毎に確認し、経過観察を行いましょう。

以上です。

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