見出し画像

鍼灸施術の危険性[感染症、臓器損傷 編]

昨今、SNSなどで鍼灸の施術の写真やセミナーの広告を沢山、目にする
機会があります。
鍼灸がSNSを通じて多くの人に広がる事は良いと思います。
しかし、実際には明らかに危険性のある施術も散見されます。
ということで、鍼灸師、医師、コメディカル、患者が鍼灸施術のリスクを
本当に理解しているか疑問に感じましたので、この記事にて
鍼灸施術で起こりえる、感染症、臓器損傷を解説しようと思います。
是非、改めて再確認してみてください。
尚、参考文献中の国内有害事象をもとに執筆しています。


1.鍼施術のリスク

1.1.感染症

黄色ブドウ球菌とレンサ球菌によるものの報告が多く、その他には
大腸菌によるものなども報告されています。
報告されたものでは、化膿性脊椎炎硬膜外膿瘍などの保存療法だけで
治癒しなかった重篤な症状のものがいくつもあり、術者の手と術野を
清潔にする事の重要性を再認識しました。
また、消毒した術野を不潔な手で触った為に発症したという報告もありますので、鍼を刺す時点で手指と術野を清潔な状態にできる様な導線と、
施術環境を整えることが必要であると考えます。
驚くことに易感染性を疑うものの記載がない患者の報告もされていますので、不衛生な状況で施術を行えば、誰もが感染症になり得るといえるのではないでしょうか。
易感染性があるものでは、2型糖尿病アトピー性皮膚炎といった、
鍼灸臨床において罹患している患者を頻繁に遭遇するものが
報告されています。これらの報告されたものは、未加療もしくは治療を
自己中断しているものですので、問診時に通院状況や服薬状況は
必ず聞くべきでしょう。

私見としては、
・術者の手と術野を清潔にする。
・患者の易感染性の有無を聴取する。

ということを徹底していれば、防げる有害事象だと思いました。
施術の際は、なるべく指サックかグローブをはめる事を勧めます。
たまに、長い鍼を刺入する際に、素手で鍼体を掴んでいる方がいますが、
とても不衛生なので、鍼体を素手で触る可能性がある場合は必ず
はめましょう。

1.2.臓器損傷

一番多く報告されているものは気胸であり、肩甲間部、肩上部、胸部への
刺入によって発症しているものが報告されています。
気胸に関しては膀胱経の背部二行線・腎経胸部・胃経胸部では
刺入深度1.0mm以内で胸膜に達するので、肋骨に当てる様に刺入したり、
鍼通電を使い危険部位に直接刺入しない様にするといったことで気胸の
リスクを避けることができます。
気胸以外では、心タンポナーデ十二指腸壁の貫通卵巣嚢腫茎捻転などが報告されています。
心タンポナーデに関しては、気胸と同様に鍼が胸膜に達さないように
行えば、リスクを避けられるでしょう。

十二指腸壁の貫通卵巣嚢種茎捻転などに関しては伏鍼によるもの
ですので、鍼が折れないように運動鍼は行わない置鍼中の体動をさせないディスポーザブル鍼を使用する埋没鍼は行わないという事を
徹底すれば避けられます。

伏鍼=鍼が折れて体内に迷入した状態のこと
埋没鍼=鍼を刺入した状態でわざと切断し、    
    体内に鍼体を留置させる施術方法

2.まとめ

今回は鍼灸施術によって起こりえるリスクのうち、感染症臓器損傷
ついて記載しました。
感染症と臓器損傷が特に重篤な疾患に繋がりやすいですので、
特に気を付けるべきだと思います。鍼を刺す事に不安を覚える方も
いらっしゃるかもしれませんが、誤った方法で施術を行わなければ
起こりませんので、リスク管理を徹底して施術をしていただければと
思います。

さいごに、本記事で記載したリスク管理の方法を箇条書きで書いて
おきます。

〇感染症に対するリスク管理

・術者の手指と術野が清潔になっている状態で鍼を刺せるように導線を
 引く。
・施術環境を整理する。
・なるべく、グローブか指サックを装着する。鍼体を触る際は必ず
 グローブか指サックを装着する。
・患者の易感染性の有無を聴取する。

○臓器損傷に対するリスク管理

・臓器の位置と鍼が到達する深度を把握し、角度や刺入方法を工夫する。
 例えば、背部の膀胱経二行線では鍼尖を肋骨に当てるように刺すなど
・運動鍼を行わない。
・置鍼中は体動をさせない。
・ディスポーザブル鍼を使用する。(繰り返し滅菌した鍼を再利用しない。)
・埋没鍼を行わない。

3.参考文献

(1)古瀬 暢達,山下 仁,鍼灸安全性関連文献レビュー2016~2019年,
 全日本鍼灸学会雑誌,2021年第71巻4号,245-264.
(2)古瀬 暢達,上原 明仁,菅原 正秋など,鍼灸安全性関連文献レビュー2012~ 
 2015年,全日本鍼灸会雑誌, 2017 年 67 巻 1 号 p. 29-47.

4.おすすめ記事



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?