財布無くしてスーパーで泣いた話

一瞬で血の気が引いた。

いつもあるはずの、あの重量感を感じないのだ。

黒くて二つ折り、新卒時代に買ったもう5年使っているブルガリの財布。僕は27年生きてきて、財布を無くしたことがなかった。

しかし、その時は突然やってきた。

ポケット、リュック、歩いてきた道。
まじで、どこにもないのだ。

それに気づいた瞬間の顔といったら、それはもう酷かっただろう。自分の顔なので見れていないが、まるで不死川さんのようなヤバい顔をしていたと思う。

このときの時刻0時40分。

そう、夜中なのだ。

なにをやっているんだおれは。

21時30分にスーパーで買い物をし、家に帰ってからは鬼滅の刃を観ながら家具を組み立て、ご満悦な3時間を過ごしていたのだ。

それはもうサビトがかっこよかった←

それはいいとして、ふとした瞬間にPASMOの期限が気になり財布を探し始めた。

その時だ。

あれ、、?ない、、うそでしょ、、

えええええー!!!!!!

それはもう焦った。すぐに家を飛び出て、スーパーから家までの道のりをスマホのライトで照らしながら探した。

ない。ないのだ。首がもげそうになるくらい下を向きながら探してもない。

まぁそう簡単に出てきていたら僕はこんなブログは書いていない。

僕は近くにある交番へ全力で腕を振って走った。

すると交番の前で番人のような構えで立っている小太りの警官がいた。

「すみません!ちょっといいですか!」

軽く息切れをしながら僕は声をかけた。

「どうしたの~?こんな時間になんかあった?」

そう言って返してくれた警官は、とんでもなく芋洗い坂係長に似ていた。

僕:実は!財布を無くしてしまいまして!大事なものなんです!ここに届いていませんか?!

係長:なんだって!!それは大変だ。寒いしすぐ手続きもするから中に入って。

もうお茶でも出してくれそうな優しさだった。

ただその時の僕は焦っている。このやさしさには触れられず、財布が届いてるのか、届いていないのか、その確認をしたい一心だった。

係長:財布にはいくら入ってたの?

僕:6万くらいです、、

係長:ええー!!頑張って貯めたバイト代がなくなったのか!それは心配だね。ショックだと思うけど一回落ち着いて。学校はどこなの?

僕:学校?!あっ、、えっとこの近くです(確実に学生だと思われている。。ただいまはもうなんでもいい)

係長:届いてるか調べるから、この書類に名前と住所と財布に入ってたものを書いていって~!

それからの僕は早かった。

とにかく尋常じゃないスピードで書いた。どうやらこれを書かないと届いているかどうかも教えてもらえないのだ。

なんなんだそのアナログは。

まぁいい。とにかく早く所在が知りたい僕はペンを走らせた。

早い。早すぎる。人ってこんなに早く文字が書けるんだって位のはやさだ。

しかし、焦り過ぎて「代々木駅」を「佐々木駅」と書いてしまったことはご愛嬌だ。

全てを書き終わり、どうだと言わんばかりの今年イチでどや顔で紙を提出した!

僕:できました!!お願いします!僕の、僕の財布はあるんでしょうか!!

係長:まってまって、そんなに慌てないで。

係長は、まるでスラムダンクの湘北戦で見せた仙道のような落ち着きだ。

見た目は安西先生なのに、メンタリティは陵南の仙道だ。

ちょっとやそっとじゃ慌てない。

さすが係長。

そんなことはどうでもいい。

とりあえず係長に探してもらう。この付近の交番全てのデータベースにとにかくアクセスだ。この令和の時代。警察もITの力を駆使するのだ。

そしてコロナもあってみんな力を合わせて生きるようになった日本人。

誰かが困ってたら誰かが助ける日本。

そんな世の中で財布が見つからないわけがないのだ。

だっていま、助け合う世の中でしょ?

僕はそんなことを頭で考えながら時を待った。

。。。。。。。

係長:ん~~届いてないね~。ないよ。まだない。

僕:ないんかい!!!!まじか!!!

僕は絶望した。僕の待ち時間の思考はなんだったのか。

ただ係長はなにも悪くない。だからもちろん責めはしない。

しかしとてもショックを受けた。

現金、カード、、etc

もろもろすべて入っていたのだ。

それからというもの、自分を責めまくった。

だれが悪いわけではない、

盗られたにしろ、落としたにしろ、

その環境を作った僕の責任なのだ。

それから自宅への帰り道は、それはそれはトボトボ帰った。

さっき光の速さで書類を書いていた人間とは思えない、亀のようなスピードだった。

ただ僕は一つだけ心当たりがあった。

スーパーだ。

スーパーで食材や日用品を袋につめるとき、

お会計後にフルに両手を使って行った。

手が乾燥して、ビニル袋がぜんぜん開かんのだ。

子供のころはこんなことは絶対になかった。

そんなことはどうでもいい。

そのときに財布を机に置いてきたか、あるいは落としたか。

最後の希望はスーパーの机だった。

しかし、最寄のスーパーは24時間営業ではない。

僕は開店時間の朝10時まで眠れない時間を過ごした。(うそ、3時間くらいは寝た)

夜中にカード会社2社に電話をし、取り急ぎ利用を停止した。これまた厄介な手続きだったが、それは今はもういい。手続きしてくれてありがとう。

朝10時。僕は深呼吸をしてスーパーに向かった。

こんなに気合いを入れてスーパーに行った人生はない。

一歩一歩サービスカウンターに近づいていく。

そして目的地にたどり着き、飛沫感染防止のためのビニル越しに50代のおばちゃん店員に声をかけた!

僕:すみません!落し物をしてしまったので確認をしたいんですけど!

おばちゃん:え!なにどしたの?なに?

マスク+ビニル越しでなかなか声が届かない。

僕:落し物を探しに来ました!!

おばちゃん:落し物ね!なにを落としたの?

僕:財布です!黒の!二つ折りの!

おばちゃん:財布、、あ!あるかもしれないわ!待っててね!!!

おばちゃんは走った。

そこからのおばちゃんは早くはなかったが、とにかく走った。

ボリューミーな体を揺らし、腕を縦に振るというよりかは横に振るタイプの走り方だ。多分その腕の振り方は意味がない。

そんなことはどうでもいい。

このおばちゃんはこの世界のだれのためでもなく僕のために走ってくれているのだ。

えび心の声:お願い!おばちゃん!ここが最後の希望なの!!お願い!!!

こんなにおばちゃんに祈りを捧げを応援したのは

昔アプリでおばちゃんと炎をやってたとき以来だ。


おばちゃんが帰ってきた。

おばちゃん:もしかして、これ?!

。。。。。。。

それだああああああ!!!!!!!!!!

そこには見慣れた黒い二つ折りの財布があった。

ありがとう、ありがとうおばちゃん。

僕は気づいたら目から涙があふれていた。

きっと張りつめていた緊張が一気に解けたのだろう。

おばちゃん:よかったねぇ。よかったねぇ。心配で眠れなかったんじゃない?

おばちゃんの勘は鋭い。

この小さな島国日本をこれまでずっと支えてきた中高年の勘はホンモノだ。

僕:ほんとにそうです!眠れなかったんです。でも安心しました。本当にありがとうございます。こちらの財布はどの方が拾ってくださったんですか?

おばちゃん:レジの人よ!今日はいないけど、ありがとうって言っておくわ!

僕:(この人は僕の考えが読めるのか、、さすがおばちゃん、、サービスカウンターを任されるだけはある。ホスピタリティの化身なのだ。おばちゃんをなめてはいけない。)

僕:ありがとうございました。本当に、ありがとうございました。

おばちゃん:もう気をつけるんだよ~!!!

なんだか忍たま乱太郎の食堂のおばちゃんのようなあたたかさを感じた瞬間でした。


終わり。

人生最悪な気持ちと最高な気持ちの二つを一気に味わった忘れられない一日。

気持ちの高低差ありすぎて耳キーンなるとこでした。

財布無くすのはダメ、ゼッタイ。

みなさんも気を付けてくださいね。

長々と読んでいただいてありがとうございました。笑



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