なんでも可愛いという女にはイラッとくる。

ベビーカーに乗る赤ちゃんを見て可愛い可愛い可愛いと連呼する女を、この世の終わりが近いのか？　と思って見てしまう。

家の近くの地蔵公園だろうが、軽井沢アウトレットだろうが、赤ちゃんや犬、インスタ映えのサンドイッチなるものが目に入り、本日もkawaiiは叫ばれている。

そう思っていたが、kawaiiは時と場合によるものだと知った。

ある日の夕食の買いだし中に、2人の女性が、洋服店で店員からワンピースを勧められている場面に遭遇した。

例によって彼女たちは、「可愛いね～！」「ほんとだ！　可愛い～！」と言いながら立ち去ったのだ。これは、kawaii～♪♪のピンク的な破壊力をもった”誰も傷つくことのない”素晴らしい去り方だ！！

そういえば、糸井重里と芦田愛菜が対談するテレビ番組を見たことがある。年の差56。56も離れていりゃあ、相手がいくら人気女優といえど、先輩風のひとつやふたつ吹かせてしまうものだが、糸井氏は、芦田氏に尊敬の念をあらわし、自分が学ばせてもらっているというような姿勢をもったかっこえぇ人だった。

その後も続く対談を見る私の目には、糸井氏への信頼という気持ちが加わり、目を見開いて番組を見続けた。

しかしである。

あることだけが私のなかで引っかかった。話の流れは覚えていないが、糸井氏が、「かわいいは世界を救うよね」と、言ったのである。

可愛いを連呼する女にイラッとくる私だ。糸井氏の発言にショックを受け、自分の鼻クソのような器をまざまざと感じつつ、喉に張りが刺さっているまんまで日常を過ごしていた。

まだその針は私の尻から排泄には至っていないが、少なくとも、あの時は、洋服店にいた2人の女性は、世界を救っていたのだと思う。