見出し画像

マスコットが表情豊かに語りかけてくれると感じた貴女はマスコット沼に足を踏み入れている。その豊かな表情の秘密は顔の形状にあった。

Jリーグのマスコットが大好きという人が増えている。FUJI XEROX SUPER CUP 2019では「もふチケ」が発売された。このチケットでは全マスコットと場内特設広場内で触れ合える。さらに「超!もふチケ」では、全マスコットと「超!もふチケ」購入者との写真をJリーグオフィシャルフォトグラファーが撮影しオリジナル記念フォトフレームでプレゼントされる。「超!もふチケ」の価格は30,000円。

マスコットが表情豊かに語りかけてくれると感じた貴女はマスコット沼に足を踏み入れている。

笑ってくれたり怒っていたり、はたまた戸惑いの表情を見せてくれたり、マスコット沼に足を踏み入れた女子に言わせれば「Jリーグマスコットは表情が豊か」なのだそうだ。確かに言われてみれば、そのように見えなくもない。この動画のベガッ太さんは、羽生選手との間に会話が成立しているように見える。なぜだろう。

口や鼻を除くと奥行きが小さく、平らな面に目尻、瞼、口元で小さな凹凸をつける構造で出来ているJリーグマスコット。

ほとんどのJリーグマスコットは平らな面が広い。Jリーグキング、伊予柑太ら一部の例外を除くと目や口に表情がない。基本的には、ほとんどのJリーグマスコットは無表情だ。

欧米のスポーツチームの人気マスコットと比べると顔の形状に違いがあることがわかる。

なぜ、無表情な構造のはずのJリーグマスコットが表情豊かに見え、人気があるのか、日本の伝統文化の延長線上に秘密があった。

現代日本の人気キャラクターの面の作り方と、伝統芸能の面の作り方との共通点から、なぜ、無表情な構造のはずのJリーグマスコットが表情豊かに見え、人気があるのかについて考えてみた。

無表情キャラクターの代表格といえばハローキティ。

日本国内のみならず世界中のセレブが愛する日本生まれの人気キャラクターマスコットといえば、その代表格はハローキティ。単独での活躍だけではなく、多くの企業やキャラクターとのコラボレーションも行ってきている。ハワイ大学人類学部教授・クリスティン・ヤノ氏はハローキティの人気を以下のように説明してる。
「ハローキティのこれまでの成功は、無表情なキャラクターデザインにあります。この無表情さに人々は表現の可能を感じ、ギターを持たせたり、舞台に立たせたりとさまざまな描写を演出してきたのです。」

伝統芸能の無表情キャラクターの代表格といえば能面。

能は能面をつけて行う一種の仮面劇。歌舞伎のように途中で面を付け替えることがないので、一つの表情の能面だけで演じる。能面は、それ単独では無表情に感じる。現代の能は主に屋内の能楽堂で行われるが、もともとは屋外で行われいた。能は「光の芸術」とも言われ、能面に光が当たり影ができることで、様々な表情を演出してきた。

能面という単語は「無表情の代名詞」として使用される。しかし、光が当たることで様々な表情を作り出すのはなぜか。

名古屋大学大学院情報科学研究科の川合伸幸准教授と東京大学大学院総合文化研究科の岡ノ谷一夫教授らは、「能面」が多様な表情を見る側に想起させるのは、能面の各顔パーツが異なる情動を表現している「情動キメラ」であることが原因であり、こうした「情動キメラ」からの表情判断は、主に口の形状に基づいてなされることを研究の結果で示した。顔の角度が変わり口角が上がって見えると表情は喜びを浮かべる。

能面はさまざまな表情が組み合わされていることを解明

能では、喜びを表す動作を「照らす」、悲しみを表す動作を「曇らす」と呼び、面(おもて) をそれぞれ上向き、下向きに傾ける。能面は平らな面に顔のパーツで凹凸をつけ、光が当たることで影が生まれ(「照らす」「曇らす」)表情が現れるようになっているのだ。

顔の上下の動きで、どのように表情が変わるのか?意識して動画を見てみると、確かに!!ポイントは、やはり口元だ。

Jリーグマスコットの活躍の場は主に屋外。顔が上下に動き、光が当たると、どのように表情が変わるのだろうか。能面の「情動キメラ」からの表情判断を意識しながら下の動画を見てみよう。

Jリーグキャラクターの大半が、口や鼻を除くと能面のように奥行きが小さく、平らな面に目尻、瞼、口元で凹凸をつける構造で出来ている。

知らずのうちにDNAに刻み込まれてる、日本人ならではの面の作り方がJリーグキャラクターのデザインに影響しているようだ。

もしかすると、マスコット沼に足を踏み入れている貴女は、実は、伝統芸能の楽しみ方を先祖から強く受け継いでいるのかもしれない。

歌舞伎とマスコットについてはこちら。













ありがとうございます。あなたのご支援に感謝申し上げます。