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シティポップと櫻坂46

【私の音楽履歴書】   # 32 特別編  私のシティポップ


24日夜のNHK「うたコン」に私が推している櫻坂46が18日発売の7thシングル『承認欲求』を引っ提げて出演した。
また、その日は「シティポップ特集」と銘打って、当時の音楽市場の牽引者の一人である林哲司氏本人の出演をはじめ、彼の作品を唄ってきた上田正樹や菊池桃子らも出演した。
そして、石川ひとみはバックに櫻坂46の6人を従え、彼女たちがダンスでサポートし『まちぶせ』を披露した。
三期生も交えたパフォーマンスはとても感動的なものだったが、直前に休養を発表したメンバー小池美波と『まちぶせ』の関わりを知っている幾人かの私のFFさんたちの呟きはいささか辛いものでもあった。



過去を遡ると、荒井由実(松任谷由実)が当時渡辺プロダクション所属だった三木聖子に提供した作品『まちぶせ』を(76年)同じくナベプロ所属だった石川ひとみが後に再びカヴァーし(81年)一躍大ヒットとなり広く知られる作品となった。

荒井由実は、75年にナベプロ所属だったアグネス・チャンに『白いくつ下は似合わない』(75/ 作詞 作曲 荒井由実 編曲 あかのたちお) を提供しており、後に呉田軽穂として、松田聖子をはじめ多くの歌手に作品を提供してきた彼女と歌謡界との繋がりは、この頃から深まりつつあったといえる。

     『白いくつ下は似合わない』  アグネス・チャン



“シティポップ”には特にこれといった定義はない。
まさに受けとめ手それぞれの思いによる。十人十色の“シティポップ観”がある。
その中で敢えて言えば、先に挙げた松任谷由実や大滝詠一といった人たちより、山下達郎、竹内まりやや大貫妙子ら、角松敏生や杏里、そして出演者の林哲司が手掛けた『真夜中のドア〜stay with me』をはじめ、彼の作品提供者のオメガトライブ、菊池桃子らの歌謡界(アイドル界) の人たちがその代表として海外では認識されているのが実態なのだろう。

それでは私にとっての”シティポップなるもの“とは何か?を考え、振り返った時、浮かんでくる数曲をここで紹介していくこととしたい。

先ずは、番組出演者であるEPOの代表曲『DOWN TOWN』は、その作曲者、山下達郎や大貫妙子らが所属していた「シュガー・ベイブ」のシングル曲である。

そのB面に収められている大貫妙子の作品『いつも通り』(75/ 作詞 作曲 大貫妙子 編曲 山下達郎)を。

  『いつも通り』 シュガー・ベイブ

  

同じく出演者の菊池桃子の『Blind Curve』(84/ 作詞 秋元康  作編曲 林哲司) は「真夜中のドア」のカヴァーをYouTubeにUPし、一躍“シティポップ”を世界に注目させたインドネシアのレイニッチもカヴァーしている。その彼女の歌声と映像を…

     『Blind Curve』   Rainych 〜 菊池桃子カヴァー


林哲司はその楽曲のクオリティーの高さで多くの歌手に作品を提供してきた。
その中の一人、原田知世は、近年、大貫妙子や亡くなった高橋幸宏らと親交もあり、マイペースで音楽活動も続けている。
『天国にいちばん近い島』(84/ 作詞 康珍化 作曲 林哲司 編曲 彦坂恭人)は一時代を席巻した角川映画における同名作品の主題歌であり、シティポップの範疇にはないだろうが、その後の音楽活動の経過も含めての彼女の原点との位置づけで紹介したい。

         『天国にいちばん近い島』   原田知世

 

その長いキャリアに於いて、角松敏生の軌跡〜音楽的功績〜はもっと評価されてもいいと思う。
そんな彼が杏里に提供した『I CAN'T EVER CHANGE YOUR LOVE FOR ME』(84/ 作詞 作曲 編曲 角松敏生)をライブでデュエットして、共演している映像を。

 『I CAN'T EVER CHANGE YOUR LOVE FOR ME』
       角松敏生・杏里

   

角松敏生は中山美穂にも多くの作品を提供している。私は中でも角松自身もセルフカヴァーしている『You're My Only Shinin' Star』(88/ 作詞 作曲 編曲 角松敏生) が好きなのだが、ここでは、その中山美穂の資生堂の89年春のキャンペーンソングとしても有名なシングル『ROSECOLOR』(89/ 作詞 康珍化 作曲 CINDY 編曲 鳥山雄司) を作曲者CINDYのセルフカヴァーで紹介したい。

     『ROSECOLOR』  CINDY

               


同時代を経てきた者からすれば、シティポップとして再評価されてきた作品と、その時代の音楽の主流と言われた作品との乖離があるのも否めない。

〜(略)こうしたリスニング環境がわかれば、海外ファンにとっての”シティ・ポップ“がどのようなジャンル概念なのかもおのずと見えてくるだろう。ネットを介して出会い、オンライン・プラットフォームで音楽を聴き、仲間と交流する。シティ・ポップは、彼/彼女らにとって見果てぬダンス・ミュージックの大鉱脈なのだ。しかも、うるさく昔語りをしてくるオヤジもいない。リアルタイムのファンなど自国に存在しないのだから。かくして、海外ファンたちは(自分が訪れたことも、生まれてすらもいない)昭和の日本に対するノスタルジアを好き勝手に膨らませながら、おのおの自由にシティ・ポップを楽しんでいる。

「レコードコレクターズ」2022年9月号                         『ロング・バケーションは”シティ・ポップではない“のか?』文 加藤賢  より一部引用  



ここ数年で発掘された作品たち〜例えば「プラスティック・ラブ」や「真夜中のドア」などと、松任谷由実や大滝詠一らの音楽との決定的な違いは“ダンス・ミュージック”として受け入れられるかどうかだとの指摘は非常に興味深い。


12月14日(木) フィリピンにて開催される「2023 Asia Artist Awards」に櫻坂46が出演することが公式サイトより発表された。
海外Buddiesからは、海外における櫻坂46の認知の理解について、色々と考えさせられるポストも拝見した。
綺麗事に聞こえるかも知れないが、ここは国境を超えた交流を通して、櫻坂をより高みに送り出して行きたいものだと思っている。


EDMのトレンドを体験してきた世代がライターとして制作に参画し、櫻坂をはじめ坂道、ひいてはJ-POPを牽引している状況と、日本におけるその源流とも言うべき、ある種オルタナティブな作品群を“シティポップ”と見ていくならば、それが交差した時期から、あらたな音楽の潮流が形成されていく時期へと移行している段階なのかも知れない。 

シティポップと櫻坂はなじみ深い〜親和性が高いと言われてもいる。4th『五月雨よ』の一連の作品にはシティポップと通底している感触も少なからずあった。

内外の様々なポストなども見るにつけ、“音楽は国境を越える”と実感した一日に色々と考えてみた。

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