かいけつゾロリシリーズは偉大である

 たまにTwitterで「 #子どもの頃好きだった本 」みたいなハッシュタグがトレンド入りする。見てみると、江戸川乱歩や太宰治などの文豪の作品を上げている人が多く、児童書を挙げている人はほとんどいない。アカウントを見てみると読書好きだったり、小説を書いている人が多かった。

 私は思う。

「なんでかいけつゾロリを挙げている人が一人もいないんだ?」

 かいけつゾロリシリーズを知らない人はいないだろう。今の小学生は知らない? じゃあ読め。面白いから。

■ 絵本好きが図書室に通うようになるまで

 私は幼少期から本が好きだった。未就学児時代は「ぐりとぐら」「だるまちゃんとてんぐちゃん」「くれよんのくろくん」「チビねずくんのながーいよる」などの絵本が大好きだった。

 小学校に上がって、学校に図書室があることに感激した。図書室という空間が新鮮で、休み時間のたびに図書室を訪れた。

 小学生のこと特に好きだったのは「わかったさんシリーズ」「こまったさんシリーズ」。そしてなんと言っても、「かいけつゾロリシリーズ」である。

■ みんな大好きかいけつゾロリ

 かいけつゾロリは大人気で、いつも誰かに借りられていた。借りれるときはラッキーで、夢中になって読んだ。1頁に文章はそう多くなく、簡潔で分かりやすい。さらに絵も多く、漫画チックな表現もある。

 かいけつゾロリを悪とし、「かいけつゾロリで夏休みの読書感想文を書いてはならない」とした先生が担任になった時は、断固として抗議した。

 しかし所詮子どもの言うこと。一蹴されムカついた私は、授業中に教室外で同じく(理由はどうあれ)反担任派のクラスメイトたちとカードゲームをしたり、休み時間に学校を抜け出したりした。かいけつゾロリを愛していたクソガキだったのだ。

■ かいけつゾロリのここがすごい!

 かいけつゾロリのすごいところの1つは、「普段本を読まない子どもが気軽に読める本」だということだ。

 近年、活字離れが進んでいるらしい。私が子どもの頃も、本を読む子と本を読まない子がいた。でもかいけつゾロリだけは、本を読む子も読まない子も大好きだった。普段本を読まない人間が手を伸ばす本、というだけでエンターテインメントの王座に君臨する本だと言えるのではないだろうか。

 2つめは、「どんな読み方をしても面白い」ことだ。

 世の中には、いろんな人がいる。私は文章を読むことが好きで、映像はあまり得意ではない。しかし逆に、映像を見るのが好きで、文章を読むのが得意ではない人もいる。かいけつゾロリシリーズは、文章が苦手でも楽しめる本なのだ。

 かいけつゾロリシリーズは全作品にわたって文章も絵も原ゆたか先生が一人で書いている。絵はとにかく書き込みがすごい。作中で登場するオリジナルの機械は設定が細かく書き込まれていて、子ども心をくすぐられたものだ。他にも、よくよく観察すると「あれ、ここ伏線じゃない?」「こんなところに前作で出てた〇〇がいる!」といったような発見が多くある。

 文章だけ読んでも面白いし、絵だけ見ても面白い。文章と絵で両方楽しむとさらに作品の世界観に浸れる。文を読むのが苦手でも、本を楽しんでいい! と背中を押してくれるような作品だ。

■ かいけつゾロリが本の虫を育てた

 かいけつゾロリはアニメ化もされているが、正直アニメの思い出はあまりない。原作本が好きすぎるせいかもしれない。

 私はそのうち、かいけつゾロリを読みたくて図書室に通うようになった。かいけつゾロリが借りられていてない時は、気になった本を片っ端から読んでいた。わかったさんシリーズやこまったさんシリーズを読んだのもこの時期だ。

 かいけつゾロリのおかげで、私はたくさんの本に出合い、読書が好きになった。絵本の読み聞かせを卒業し、本を自分で読むようになった私は、その後中学二年生で薬漬けの生活になり文章が読めなくなるまで、読書を趣味として楽しんだ(復活して再び読書好きに戻るけどね)。かいけつゾロリが私の人生に与えた影響は大きい。「人生を変えた本」を挙げるなら、必ず入ってくる本だと思う。

 小学生の図書館あるある「『少年H』が卑猥な本だと思い込む」もきちんと経験した。当たり前だけど全然普通の本だと高校生くらいで知った。未だに読んでない。

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