税金に無頓着な人たち

以前友人の誕生日会に出席した時、「プロ大学生」と呼ばれる人間と出会ったことがある。

既に大学7年生を迎えており、当時流行っていたビジネスコンテストに出まくって、優勝賞金を荒稼ぎしていた。

なんでそんな頻繁に優勝できるかというと手口は簡単で、他の大会で使ったビジネスモデルを使い回しているそうだ。ビジネスコンテスト同士は横の連携が取れているわけではないので、確かにそれをやられたら検知できない。

私は会話を交わしながら一つ質問をしてみた。

「税金は納めてる?」

何のことだか分からない、といった表情。脱税じゃん、という私の言葉も笑って聞き流していた。

申告不要なレベルの稼ぎで収まっていればいいのだが、一般の大学生が持つ税金の認識はこんなものだろう。

レンタル彼女の仕事で荒稼ぎしている人たちも、税金未納がバレて税務署から摘発を受けているというニュースを見た。

人間の嫉妬の一側面かもしれないが、周りの人間のタレコミによって脱税が発覚することもあり、現金決済だけしていて証拠がないからといって大丈夫とはならない。

人の口に戸は立てられないのである。

他にもよくある落とし穴は、「個人の財布と法人の財布の区別が曖昧になる」ことだ。

経営者が「経費で落ちるだろ」と我が物顔で使っていたら、税理士から「会社から社長への貸付金じゃないと処理できない」とみなされて認識ギャップが生じる。

お金における脇の甘さは税務署にとって格好のターゲットである。

生命保険はこういった税金の話と切っても切れない関係だ。

以前は保険料を全額経費で落とし、タイミングを見て解約して返戻金を手にするといったように、課税繰延効果を利用する保険が沢山あった。

今では国税庁からこのような方法は否定され、解約返戻金の貯まりがあるとその分は資産計上するようになっている。

課税の世界では"租税法律主義"の精神があり、「法律に定められている以上、租税回避策の匂いがあったとしても拡大解釈で課税をしてはならない」という原則が貫かれている。

課税は私有財産権を制限する行為のため、この原則は国家の暴走を抑えるために生み出された人類の知恵といってよい。国税庁は生命保険を用いたさまざまなテクニックを以前から忸怩たる思いで眺めていたのだろう。

ようやくルールを定めることができて念願叶ったりといった心持ちかもしれない。

金融機関で働いてよかったことの一つは、このような税金に関する国家と国民の緊張関係を実体験することができたことだ。

リーマンショックで父親の給料が大幅にカットされる様子を見て、「金融を理解しないと世の中の重要なことは分からない」と直感した私は、就職先に金融機関を選んだ。

その時の考えは概ね正しかったと思う。

給与所得とは別ルートでたくさん稼げてイケイケになっている人たちは特に肝に銘じてほしい。

世の中、儲かるところに税金ありである。

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